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好きな人





「じ~ん!遊びに来たぞ♪」



「斗真?おまえまた来たのかよ(笑)。」


「悪いか!?いいじゃん暇だったんだから!」


「財閥の息子が一人で出歩いて大丈夫かぁ?今の世の中本当に不景気で治安最悪だかんな。
ほら、先週もあったじゃん。金持ちの家の子どもが誘拐されたって話。」


「あ~・・アレまだ犯人も子どもも行方不明なんだってな。」


「みたいだな。かつては安全な国だって称されてたのによぉ、日本もとうとう堕ちるに堕ちたもんだぜ全く。」


「そう、だよな・・。正直、怖いよ、近頃は。
・・・でも俺は大丈夫っ!そのために執事兼ボディガードを雇ったんだから♪」



「・・・じゃあ・・ぴぃもまた一緒に来てんの?」






ボディガードも兼ねてるってことは、・・やっぱ強いんだよな?
喧嘩での戦闘力というか。


いざって時に異常者みたいな奴が襲ってきたらその場で即座に応戦できなきゃ意味ないもんな。



しっかし・・ほんと人は見かけによんねぇよなぁ・・。


一見、何事にも全然爽やかな微笑みで対応しそうな優男にしか見受けられないのだが。




「うん。今、仁の父ちゃんや母ちゃんにあっちで挨拶してるよ。」

「かぁ~(笑)!本当おまえらは片時も離れることがねぇよなぁ。」

「・・・まぁね、へへへ♪」


頬を紅く染めて、恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに・・・。

俯きながら・・幸せの声を漏らす斗真を、俺は戸惑いもなく、極自然に受け入れる。


コイツがこんな恥じらいを示す理由を、ちゃんと知っているから。




「・・・あ~・・。俺も便利な執事欲しいなぁ~。」

「おまえなぁ、執事をンナ都合のいいような言い方すんなよ!カワイソウじゃん!」

「ヘイヘイ~・・。」

「でも、確かに仁って色々といつもトラブルに巻き込まれるから、・・ボディガードみたいなのは必要かもな(笑)。」

「悪かったなぁ!トラブルメーカーでよぉ!」

「いや、そういう意味じゃ(笑)。」

「顔が笑ってんだよ!てめぇはぁ!」

「仁様、どうもこんにちは。」
「「わぁぁっ!!」」



斗真と俺が相変わらずの掛け合いをしている最中、いつの間にか我が部屋まで到着していたらしい・・ぴぃ。

そのぴぃの不意を突かれた介入によって、俺達は同時に驚きの声を上げた。


「・・どうかなされましたか?お二人とも、そんな大きな声を出されて・・。」

「っ、・・おまえ!もっと気配出せねぇの!?マジびびった・・。」

「っく、ハハッハ!仁の今の顔っ(笑)!」

「うっせ斗真!おめぇだって叫んだくせに!」

「さようでございましたか。驚かせてしまったのですね。・・本当に、申し訳ありません。」

ぴぃは整った眉を潮らしく垂らすと、大袈裟なほどのご丁寧な動きで、深々と椅子に座っている俺の目線まで自身の頭を下げた。



「・・・・いや、そ、そんなご丁寧に謝って貰わなくてもいいんだけどさ(苦笑)。」

「そうだよぴぃ!仁なんかに深く頭下げることないって!」

「・・・・おめぇな・・。」



もう見慣れたぴぃの綺麗な微笑み。


執事という職業からか、それとも元々の性格から来るものなのか、ぴぃはこうしていつも眩しい笑みを浮かべている。



どんな時も。




けれど。

そんな人間なんて果たしているんだろうか。



俺はコイツの毎度の有様に、底知れぬ疑問が浮かび上がっては胸中を埋め尽くされる。




そう、まるで・・・・














――――――偽りだらけの、・・仮面を被っているんじゃないか・・・。


と。




しかし、よく考えてみれば、ソレを追究する等馬鹿げている。


本来俺はそこまで他者に対して疑いを向けることはしない。


人間という生き物は、いくつかの顔を持ち合わせていないと生きてはいけないのだ。


ソレは世の中を上手に生き抜くために用意された、まさに必然性だ。


俺みたいに、何事も良くも悪くも素直で正直な奴は・・まずは必ず人間関係での壁にぶつかる。



厄介にも。

日本社会では人付き合いの仕方によって、様々な場面で大きく結果を左右されたり・・と、何だか面倒くさい部分があったりする。

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