霞みの森の剣士
3人が歩みを進めて行けば、徐々に人里が目立ち出す。
日も夕暮れに差し掛かり、夜の気配が空に漂い出した。
「おい、あんたら、この先の集落に行くのか?」
彼らの右手から中年の男が、声をかけてきた。
彼は、畑仕事を切り上げ帰ろうとしている所だったようだ。
「はい。そうですけど」
炭治郎が応える。
「知り合いでもいるのか?だが行くのは、やめといた方がいい」
男の顔は暗い。
「何か起きてるんですか?」
「ここ最近になってから、あの先の集落は森に入った奴等が帰って来なくなってる」
はっと炭治郎の顔色が変わる。
善逸はあからさまに青ざめた。
伊之助は…猪の被り物のせいで表情がよくわからないが。
「あの集落に行って生きて帰ってきた者の話だと、森から葉っぱだの蔦やらで全身木みたいな化け物が出て来て、人を襲うんだ」
最初は誰も信じなかった、と男は言った。
「俺だって信じやしなかった」
「でも、信じざるを得なくなったんですね?」
炭治郎に男は頷く。
「兄貴がな、あの集落の知人に会いに行ったきり帰って来くなった」
肩を落とし男は続けた。
「俺んとこだけじゃない…他所もそうさ…」
それで何人かで消息を調べる為に、集落に向かった。
「そしたらさ」
男の顔は青ざめていた。
「辺りは霧で真っ白でさ。誰もいない」
あちこち探し回っても誰もいないという。
あきらめて帰ろうとした時、それは現れた。
人間の形をした、蔦や葉に覆われた化け物。
集落に向かった人の安否などよりも恐怖の方が勝り、集落から逃げ出した。
「情けないだろ?身内よりてめえの命を優先しちまった」
他の者達もどうなったかわからない、と力なく男は言う。
「あの辺りをここらの者は、霧の森って呼んでる。とにかく、普通じゃない」
「た、た、炭治郎…」
青ざめた顔で歯をガチガチ鳴らし、善逸は炭治郎の羽織りの袖を握りしめていた。
「話からしてもう、事態がまずいことになってなくない?」
男は嘘を言ってないのが、嫌というくらい善逸に伝わってくる。
「うん、そうだね」
でしょ、でしょと善逸は炭治郎の反応に食い付く。
「現地の調査依然の問題だよ!これってもう!俺達だけじゃなくて、柱の誰かに来てもらおうよぉ!」
柱は、鬼殺隊の中でも頂点に立つ最上位の剣士の称号だ。
「まだ調査の結果も出てないのに、柱に来てもらうわけにいかないよ」
炭治郎は呆れ顔で、善逸に言う。
「本当に柱が出なきゃならない事案か、ちゃんと調べてからだよ」
「そんなぁ」
羽織りの袖を離さないまま、善逸はうなだれた。
「絶対逃げられなくなって、戦うしかなくなったらどうするんだよ…」
ふるふると善逸の腕が震える。
「なら凡逸は、どっか引っ込んでろ。俺と綿パチ朗で親玉ぶっ飛ばしてきてやらぁ!」
伊之助の中では、任務が鬼狩りになってしまっている。
「あんたら、本当にこの先に行くのか?」
会話の内容が理解できない男は、困惑の表情になっている。
「はい。どうしても行かなきゃならないんです」
「そうか、忠告はしたからな」
「お話、ありがとうございました」
炭治郎は深く男にお辞儀すると、まだびくびくしている善逸に羽織りの袖を握らせたまま歩き出す。
「やっと話が終わったか、あー長かった」
伊之助も続く。
3人は日の沈む方へと、進んで行った。
「行っちまった」
小さくなる3人を男は見送っていた。
「まだ若いってのに、何の調査か知らんが帰ってこれんぞ」
ふぅ、と息を吐き道具を担ぐ。
「似てないが兄弟か?1人は猪の被り物した変な奴だったが…特に、黄色の変わった髪した坊やはすぐやられそうだな。あれが一番下みたいだしなぁ」
善逸は、すでに決めてかかられていた。
日も夕暮れに差し掛かり、夜の気配が空に漂い出した。
「おい、あんたら、この先の集落に行くのか?」
彼らの右手から中年の男が、声をかけてきた。
彼は、畑仕事を切り上げ帰ろうとしている所だったようだ。
「はい。そうですけど」
炭治郎が応える。
「知り合いでもいるのか?だが行くのは、やめといた方がいい」
男の顔は暗い。
「何か起きてるんですか?」
「ここ最近になってから、あの先の集落は森に入った奴等が帰って来なくなってる」
はっと炭治郎の顔色が変わる。
善逸はあからさまに青ざめた。
伊之助は…猪の被り物のせいで表情がよくわからないが。
「あの集落に行って生きて帰ってきた者の話だと、森から葉っぱだの蔦やらで全身木みたいな化け物が出て来て、人を襲うんだ」
最初は誰も信じなかった、と男は言った。
「俺だって信じやしなかった」
「でも、信じざるを得なくなったんですね?」
炭治郎に男は頷く。
「兄貴がな、あの集落の知人に会いに行ったきり帰って来くなった」
肩を落とし男は続けた。
「俺んとこだけじゃない…他所もそうさ…」
それで何人かで消息を調べる為に、集落に向かった。
「そしたらさ」
男の顔は青ざめていた。
「辺りは霧で真っ白でさ。誰もいない」
あちこち探し回っても誰もいないという。
あきらめて帰ろうとした時、それは現れた。
人間の形をした、蔦や葉に覆われた化け物。
集落に向かった人の安否などよりも恐怖の方が勝り、集落から逃げ出した。
「情けないだろ?身内よりてめえの命を優先しちまった」
他の者達もどうなったかわからない、と力なく男は言う。
「あの辺りをここらの者は、霧の森って呼んでる。とにかく、普通じゃない」
「た、た、炭治郎…」
青ざめた顔で歯をガチガチ鳴らし、善逸は炭治郎の羽織りの袖を握りしめていた。
「話からしてもう、事態がまずいことになってなくない?」
男は嘘を言ってないのが、嫌というくらい善逸に伝わってくる。
「うん、そうだね」
でしょ、でしょと善逸は炭治郎の反応に食い付く。
「現地の調査依然の問題だよ!これってもう!俺達だけじゃなくて、柱の誰かに来てもらおうよぉ!」
柱は、鬼殺隊の中でも頂点に立つ最上位の剣士の称号だ。
「まだ調査の結果も出てないのに、柱に来てもらうわけにいかないよ」
炭治郎は呆れ顔で、善逸に言う。
「本当に柱が出なきゃならない事案か、ちゃんと調べてからだよ」
「そんなぁ」
羽織りの袖を離さないまま、善逸はうなだれた。
「絶対逃げられなくなって、戦うしかなくなったらどうするんだよ…」
ふるふると善逸の腕が震える。
「なら凡逸は、どっか引っ込んでろ。俺と綿パチ朗で親玉ぶっ飛ばしてきてやらぁ!」
伊之助の中では、任務が鬼狩りになってしまっている。
「あんたら、本当にこの先に行くのか?」
会話の内容が理解できない男は、困惑の表情になっている。
「はい。どうしても行かなきゃならないんです」
「そうか、忠告はしたからな」
「お話、ありがとうございました」
炭治郎は深く男にお辞儀すると、まだびくびくしている善逸に羽織りの袖を握らせたまま歩き出す。
「やっと話が終わったか、あー長かった」
伊之助も続く。
3人は日の沈む方へと、進んで行った。
「行っちまった」
小さくなる3人を男は見送っていた。
「まだ若いってのに、何の調査か知らんが帰ってこれんぞ」
ふぅ、と息を吐き道具を担ぐ。
「似てないが兄弟か?1人は猪の被り物した変な奴だったが…特に、黄色の変わった髪した坊やはすぐやられそうだな。あれが一番下みたいだしなぁ」
善逸は、すでに決めてかかられていた。