短編連載
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善逸視点
通りすがりのお爺ちゃんに借金を肩代わりしてもらって導かれた場所に、不思議な音がする晴天の目をした天女がいた。彼女から手を繋いでくれて、手のひらをくすぐってくれて俺に微笑んでくれた。その瞬間落雷が身体に落ちた気がした、もう運命としか言いようがないでしょ?
「俺と結婚してください!」
舞い上がって彼女しか見えなくなっていた俺は、ついさっき紹介された兄弟子に腕の骨を折られそうになった。
「テメェ。二度とこいつに話しかけんな」
なんでアンタに言われなきゃダメなのさ?!アンタはアカネちゃんのなんなんだ!反論する前に修行へ引きずりこまれボロボロにされ、体力と精神力をごっそり失ってしまった。ご飯の時や寝る前に話を聞こうとしても兄弟子の目力凄まじいしアカネちゃんは俺の声全く聞こえてないみたいだし…なんでなのさ…
「アカネは聾者(ろうしゃ)だとはじめに説明していたんだが、見惚れて聞いていなかったのか」
俺の疑問は翌日の稽古でじいちゃんが話してくれて、再び雷のような衝撃を受けた。俺は音が聞こえすぎて大変だったけど、全く音が聞こえないって…俺以上に大変じゃない?俺たち今日まで生きてるの奇跡じゃない??やっぱりアカネちゃんとの出会いは運命だったんだ。
「爺ちゃん、俺がんばるよ!」
「師範と呼べ!」
がんばって強くなりたいと思ったのはその瞬間だけで、じいちゃんと兄弟子と自分の駄目さに全力で打ちのめされた。無理、無理過ぎる。死ぬ、吐く、辛過ぎる。精神的に癒されたくてアカネちゃんの元に行ったはずなのに、いつの間にか爺ちゃんの元へ連行されてるし。物理的に癒されたくて台所に行くと、いつからどこから監視してたのか分かんない兄弟子が鬼顔負けの顔でやって来るし。全部のことに申し訳なくなって、とにかく逃げ出そうとしたらじいちゃんが殺す気かってくらいの力で連れ戻してくるし。
こんな俺のこと信じてくれてるのはありがたいけど、さ。助けてくれた恩だって返したいけどさ。兄弟子は毎日不満そうな音だしてるし。付きっ切りで教えてくれるの、もうこれ以上申し訳ないよ。一応、夜中だってずっとがんばってるよ、でもこうなの。全然結果出ないの。あの子を守りたいって思ってたよ。でも、いつも俺を一方的に(打ち合い稽古で)ボコボコにしてくる兄弟子と音が聞こえないアカネちゃんの拮抗した打ち合いみせられたら嫌でも分かっちゃうよ。逆に俺が守られる方だって。ごめん、じいちゃん。じいちゃんは俺のこと信じてくれてるけど、もう俺は俺が信じられないよ。
モヤモヤとしたままじいちゃんと修行してると音が聞こえた。優しさと切なさが混じったその音は、ほとんど言葉になってはいないのに気持ちがそのまま伝わってくる。
「少し休憩にするかの。アカネの歌声を聞いていると、懐かしくてどうしても手が緩んでしまうんだ」
「あ、え?ほんとだ。うまく力入んない。爺ちゃんもなの?」
「ああ。今のような時に心地良過ぎるアカネの声は、毒なのかもしれんな」
「こんな優しい声に毒って。そりゃ、ずっと聞いてたくなって何もできなくなっちゃうけどさ」
毒じゃなくって、もっと良いものだと思うんだけどな。うまく言葉にできないまま、歌が聞こえなくなった。再開のために立ち上がったところでアカネちゃんの音がこちらに向かってきて、俺たちのところまでやってきた。
「ふむ、どうしたんだ?善逸か?そうかそうか」
「え!?なんで何にも話してないのに、じいちゃんわかるの?」
「顔を見ればわかるだろう?」
「顔、かお…ふぁッ待って!?めちゃくちゃかわいくて、かわいいしか分かんないよ!?」
混乱してるとそっと片方の手首を引かれ、手のひらを指でなぞられた。擽ったくて、放心してると聞きなれた不満の音がどこからともなくやってきて怒鳴り声をあげた。
「ぼうっとしてんじゃねぇ!アカネは字を書いてるだけなんだよ、とっとと読め!」
「獪岳、お前もここにくるなんてどうしたんだ?」
「アカネが先生の行くの見かけたんで、稽古の邪魔になるんじゃないかと思って確認しに来たんです」
「そうか、休憩をしていたから心配ないぞ。獪岳も休むか?」
「いえ。アカネが善逸の手を離したら戻ります」
兄弟子からは今にも雷が落ちてきそうな恐ろしい音がする。つんつんと、手のひらの感触に意識が引き戻される。
「え、えっと。俺の名前が知りたい…?」
「…獪岳、お前に任せていたはずだが」
「こいつ、元々人の名前に無頓着な奴で。弟弟子ということだけで十分だと思い、伝え忘れてました」
俺が来てから結構経つのに、アカネちゃんってずっと俺の名前知らなかったの!?それでもあんなに優しくしてくれたの…?天女か…??天女が握手を求めてくれてる……
「だからぼうっとしてんじゃねぇ!テメェもこいつの手に書くんだよ!」
「アッ握手じゃなくてさっきのアカネちゃんみたいに、手のひらに指で文字を書くってこと…?」
「ッチ。書かねぇなら俺が」
「俺が書きますとも!?」
だってアカネちゃんは俺に聞いてくれたんだよ!?絶対他の誰かに譲らないからな!熱くなっていく頭で俺の名前を彼女の手のひらに刻んでいく。真っ直ぐに俺のことを受け入れてくれる。やっぱりアカネちゃんは俺の運命の人だ。早くアカネちゃんを守れるくらい強くなりたいな。なってみせるんだって決意を込めてアカネちゃんの手を握ると、やたら彼女の保護者顔した兄弟子にまた腕を折られそうになった。
「ほんと、アンタは一体なんなのさ!」
▷探検コソコソ話
善逸は転生主といるとほとんど自分の心臓の音しか聞こえなくなっていて、転生主の行動に一喜一憂しています。獪岳のことは嫌いだけど大好きなじいちゃんが一目置いているし、身内として受け入れていて尊敬もしています。
獪岳視点
あいつを一番に見つけたのは俺で、名前だって俺が一番に知った。声だって歌だって俺が一番に聞いた。出会ってからずっとではないが一番長い間一緒にいるしあいつのことは俺が一番理解してる。
寺で過ごした先生との約束で盗みを一切せず生きて、生きて。鬼殺隊の育手である先生選ばれ、俺はあの夜の償いの機会を得られた。あの時のあいつの行動はおかしかったが俺の償いとは無縁だったから育ての好意を利用して、ここで手を離そうとした。しかしこいつは俺と離れて平穏に過ごしたり何にも縛られずに生きていくより、俺が選んだ死ぬほど厳しい鬼殺隊を選んだ。曇りない空色と目が合い、こいつにはやはり俺が必要なんだと心のどこかで安堵していた。
修行が始まりほとんどの型を扱えるようになった頃、先生は1人の孤児を連れてきた。孤児…我妻善逸は、人に騙され借金取りから追われてるところを先生に救われたらしい。みるからに貧相な奴で大したことない奴だという認識は、アカネの手を強引に握った瞬間に覆った。
奴の存在全てが俺の気に触る。先生をじいちゃんなんて馴れ馴れしく呼び、しょっちゅうグズグズ泣き喚くし、モノを盗むし稽古はサボるし夜逃げをしようとするし。なにより
「やっぱり俺たち運命だったんだよ!結婚しよう!」
さっき出会ったばかりの奴に正気じゃねぇ。我妻善逸の行動には幻滅しかできない。聞こえてねぇからって何も知らずにヘラヘラ愛想笑いしてるこいつもこいつだ。一応何かを察して我妻善逸から距離置いてるが。厳しい先生の目を盗んでどっからともなくアカネの側に湧いてくる。その執着が原因か知らんが先生は、才能があると言って我妻善逸をよく励ましていた。奴は全力で否定していたし、俺もそれだけは奴と意見が合った。
打ち合いでは立ち上がれないように完膚なきまでに我妻善逸を叩きのめしているが、そのノリをアカネとの打ち合いにも出してしまった。アカネはちゃんと見えてるくせに俺に何も伝えてこない。紙とペンを、なんのために渡したと思ってんだ。お前までサボんな。人と距離置くのは別にいいが、俺との距離まで置こうとしてんじゃねぇ。歌って感情流すな、俺に全部聞かせろ。我妻善逸なんかに構うな、目の前で行われてる茶番に頭が痛くなる!先生がいなかったら今度こそ調子に乗ってる我妻善逸の腕を折れたってのに。
「ほんと、アンタは一体なんなのさ!」
「っ…テメェに教える義理は無ぇ!」
そもそもテメェこそなんなんだ!アカネに気持ち悪い感情押し付けんな!
俺はアカネのことを一番知っているだけの他人だが、寺の先生は俺やアカネを家族と呼んでくれていた。鬼殺隊の先生にアカネを紹介した時のように、家族と言えばいいだけなのに。我妻善逸が関わるだけで、家族と呼ぶことに抵抗を感じた。
我妻善逸が雷に打たれたと聞いた時、ついに死んだかと心が軽くなった。しかし、様子を見てみると頭が黄色に変わっただけで相変わらずドン引きするくらい生き生きしていた。同じように様子を見にきたアカネは興味深そうに頭に近づき髪をとかしたり引いたりしていた。こいつが近づくだけで喜ぶ我妻善逸に、無性に苛ついたので引き剥がして修行に連れて行く。俺は壱の型以外を扱えるが、こいつは相変わらず雷の呼吸の型をまともに扱えていない。先生は呼吸があってないのかもしれないと言っていた。そんなことがあるのか。俺が基本である壱の型を使えないのも、はじめから…。いや、先生が俺を選んでくれたんだから、俺の努力が足りないんだ。現に選ばれてないアカネは一つも出来ていない、雷の呼吸は習得は簡単なものではない。
そんな時に我妻善逸が壱の型を扱えるようになった。あんなに修行から逃げていた奴が出来たなんて…先生の言葉でも信じられなかった。でも、眠りにつく前にアカネから紙を渡され、事実であると認めさせられた。
「時々夜中に我妻善逸の修行を見ていた、本当に壱の型が出来ていた。だから焦ることはない、心配ない」
読み終わると奥底から怒りに似た熱がぐつぐつと湧いて来た。なんでまだ何も出来ないお前が、あんな奴に時間を割く!!お前は足りないものばかりなのに!俺と共にいくんじゃないのか!?我妻善逸に口説かれて、もう俺のことなんてどうでもよくなったのか?紙を持つ指先が冷えてくる。
「お、い!」
ペシリと顔面に白紙とペンを当てられた。動かない俺の手を軽やかに取る。何も知らないからできる、俺の感情を無視した行動にプツリと我慢の糸が切れた。
「嫌いだ、ずっととぼけたまんまのお前もアレに構ってばかりの先生もアレの存在全てが大嫌いだ」
目の前で安っぽい音を立てて紙を破り捨てる。耳の聞こえぬこいつにも理解させたくて、大袈裟に子供っぽいことをする。拒絶の意思を示したのに、俺を見つめる真っさらな空色は曇ることはなかった。どうしてそんなに綺麗なままなんだ。応えるようにアカネは俺の手を掴み、どこかへ引いて行こうとする。手を離したらそのままいなくなりそうな勢いだったから振り払えなかった。
夜を駆けて、月明かりがほんの少しだけ俺たちを照らしていた。アカネは振り返り真剣な表情して、歌うときと同じ呼吸をする。
「ごめんね、あのいえにいるのつかれちゃったんだよね。ワタシもカイガクといるからさ、いえにいきたくなるまでまえみたいにいっしょにいよう」
なんだよ、お前結構喋れんじゃねぇか。
しかも俺と2人でいられるなら、お前は他のものを全部捨ててしまえるのか。とんでもない奴だな。
ごちゃごちゃ考えていたことが吹き飛ばされ、そんな考えがストンと俺の中に落ちてきた。言われっぱなしが無性に悔しくて、俺の感情の残骸をアカネの手を取って伝える。寺を出て行った時ちゃんと伝えてなかったことも、改めてアカネに伝えよう。特別な空色の目をしたこいつは、俺の全てを認めてくれるだろうから。
▷探検コソコソ話
特別な人から唯一無二の承認を貰う事ができれば、幸せの箱が埋まるんじゃないかと思い
箱の強度を寺時代から悲鳴嶼さん効果で強化して、転生主のような子も特別だと認められる
原作離れ激しい獪岳が出来上がりました。
しかしいくら原作離れしても、女子に関わる時の善逸だけは生理的に無理な存在なんじゃないかと思いました。
通りすがりのお爺ちゃんに借金を肩代わりしてもらって導かれた場所に、不思議な音がする晴天の目をした天女がいた。彼女から手を繋いでくれて、手のひらをくすぐってくれて俺に微笑んでくれた。その瞬間落雷が身体に落ちた気がした、もう運命としか言いようがないでしょ?
「俺と結婚してください!」
舞い上がって彼女しか見えなくなっていた俺は、ついさっき紹介された兄弟子に腕の骨を折られそうになった。
「テメェ。二度とこいつに話しかけんな」
なんでアンタに言われなきゃダメなのさ?!アンタはアカネちゃんのなんなんだ!反論する前に修行へ引きずりこまれボロボロにされ、体力と精神力をごっそり失ってしまった。ご飯の時や寝る前に話を聞こうとしても兄弟子の目力凄まじいしアカネちゃんは俺の声全く聞こえてないみたいだし…なんでなのさ…
「アカネは聾者(ろうしゃ)だとはじめに説明していたんだが、見惚れて聞いていなかったのか」
俺の疑問は翌日の稽古でじいちゃんが話してくれて、再び雷のような衝撃を受けた。俺は音が聞こえすぎて大変だったけど、全く音が聞こえないって…俺以上に大変じゃない?俺たち今日まで生きてるの奇跡じゃない??やっぱりアカネちゃんとの出会いは運命だったんだ。
「爺ちゃん、俺がんばるよ!」
「師範と呼べ!」
がんばって強くなりたいと思ったのはその瞬間だけで、じいちゃんと兄弟子と自分の駄目さに全力で打ちのめされた。無理、無理過ぎる。死ぬ、吐く、辛過ぎる。精神的に癒されたくてアカネちゃんの元に行ったはずなのに、いつの間にか爺ちゃんの元へ連行されてるし。物理的に癒されたくて台所に行くと、いつからどこから監視してたのか分かんない兄弟子が鬼顔負けの顔でやって来るし。全部のことに申し訳なくなって、とにかく逃げ出そうとしたらじいちゃんが殺す気かってくらいの力で連れ戻してくるし。
こんな俺のこと信じてくれてるのはありがたいけど、さ。助けてくれた恩だって返したいけどさ。兄弟子は毎日不満そうな音だしてるし。付きっ切りで教えてくれるの、もうこれ以上申し訳ないよ。一応、夜中だってずっとがんばってるよ、でもこうなの。全然結果出ないの。あの子を守りたいって思ってたよ。でも、いつも俺を一方的に(打ち合い稽古で)ボコボコにしてくる兄弟子と音が聞こえないアカネちゃんの拮抗した打ち合いみせられたら嫌でも分かっちゃうよ。逆に俺が守られる方だって。ごめん、じいちゃん。じいちゃんは俺のこと信じてくれてるけど、もう俺は俺が信じられないよ。
モヤモヤとしたままじいちゃんと修行してると音が聞こえた。優しさと切なさが混じったその音は、ほとんど言葉になってはいないのに気持ちがそのまま伝わってくる。
「少し休憩にするかの。アカネの歌声を聞いていると、懐かしくてどうしても手が緩んでしまうんだ」
「あ、え?ほんとだ。うまく力入んない。爺ちゃんもなの?」
「ああ。今のような時に心地良過ぎるアカネの声は、毒なのかもしれんな」
「こんな優しい声に毒って。そりゃ、ずっと聞いてたくなって何もできなくなっちゃうけどさ」
毒じゃなくって、もっと良いものだと思うんだけどな。うまく言葉にできないまま、歌が聞こえなくなった。再開のために立ち上がったところでアカネちゃんの音がこちらに向かってきて、俺たちのところまでやってきた。
「ふむ、どうしたんだ?善逸か?そうかそうか」
「え!?なんで何にも話してないのに、じいちゃんわかるの?」
「顔を見ればわかるだろう?」
「顔、かお…ふぁッ待って!?めちゃくちゃかわいくて、かわいいしか分かんないよ!?」
混乱してるとそっと片方の手首を引かれ、手のひらを指でなぞられた。擽ったくて、放心してると聞きなれた不満の音がどこからともなくやってきて怒鳴り声をあげた。
「ぼうっとしてんじゃねぇ!アカネは字を書いてるだけなんだよ、とっとと読め!」
「獪岳、お前もここにくるなんてどうしたんだ?」
「アカネが先生の行くの見かけたんで、稽古の邪魔になるんじゃないかと思って確認しに来たんです」
「そうか、休憩をしていたから心配ないぞ。獪岳も休むか?」
「いえ。アカネが善逸の手を離したら戻ります」
兄弟子からは今にも雷が落ちてきそうな恐ろしい音がする。つんつんと、手のひらの感触に意識が引き戻される。
「え、えっと。俺の名前が知りたい…?」
「…獪岳、お前に任せていたはずだが」
「こいつ、元々人の名前に無頓着な奴で。弟弟子ということだけで十分だと思い、伝え忘れてました」
俺が来てから結構経つのに、アカネちゃんってずっと俺の名前知らなかったの!?それでもあんなに優しくしてくれたの…?天女か…??天女が握手を求めてくれてる……
「だからぼうっとしてんじゃねぇ!テメェもこいつの手に書くんだよ!」
「アッ握手じゃなくてさっきのアカネちゃんみたいに、手のひらに指で文字を書くってこと…?」
「ッチ。書かねぇなら俺が」
「俺が書きますとも!?」
だってアカネちゃんは俺に聞いてくれたんだよ!?絶対他の誰かに譲らないからな!熱くなっていく頭で俺の名前を彼女の手のひらに刻んでいく。真っ直ぐに俺のことを受け入れてくれる。やっぱりアカネちゃんは俺の運命の人だ。早くアカネちゃんを守れるくらい強くなりたいな。なってみせるんだって決意を込めてアカネちゃんの手を握ると、やたら彼女の保護者顔した兄弟子にまた腕を折られそうになった。
「ほんと、アンタは一体なんなのさ!」
▷探検コソコソ話
善逸は転生主といるとほとんど自分の心臓の音しか聞こえなくなっていて、転生主の行動に一喜一憂しています。獪岳のことは嫌いだけど大好きなじいちゃんが一目置いているし、身内として受け入れていて尊敬もしています。
獪岳視点
あいつを一番に見つけたのは俺で、名前だって俺が一番に知った。声だって歌だって俺が一番に聞いた。出会ってからずっとではないが一番長い間一緒にいるしあいつのことは俺が一番理解してる。
寺で過ごした先生との約束で盗みを一切せず生きて、生きて。鬼殺隊の育手である先生選ばれ、俺はあの夜の償いの機会を得られた。あの時のあいつの行動はおかしかったが俺の償いとは無縁だったから育ての好意を利用して、ここで手を離そうとした。しかしこいつは俺と離れて平穏に過ごしたり何にも縛られずに生きていくより、俺が選んだ死ぬほど厳しい鬼殺隊を選んだ。曇りない空色と目が合い、こいつにはやはり俺が必要なんだと心のどこかで安堵していた。
修行が始まりほとんどの型を扱えるようになった頃、先生は1人の孤児を連れてきた。孤児…我妻善逸は、人に騙され借金取りから追われてるところを先生に救われたらしい。みるからに貧相な奴で大したことない奴だという認識は、アカネの手を強引に握った瞬間に覆った。
奴の存在全てが俺の気に触る。先生をじいちゃんなんて馴れ馴れしく呼び、しょっちゅうグズグズ泣き喚くし、モノを盗むし稽古はサボるし夜逃げをしようとするし。なにより
「やっぱり俺たち運命だったんだよ!結婚しよう!」
さっき出会ったばかりの奴に正気じゃねぇ。我妻善逸の行動には幻滅しかできない。聞こえてねぇからって何も知らずにヘラヘラ愛想笑いしてるこいつもこいつだ。一応何かを察して我妻善逸から距離置いてるが。厳しい先生の目を盗んでどっからともなくアカネの側に湧いてくる。その執着が原因か知らんが先生は、才能があると言って我妻善逸をよく励ましていた。奴は全力で否定していたし、俺もそれだけは奴と意見が合った。
打ち合いでは立ち上がれないように完膚なきまでに我妻善逸を叩きのめしているが、そのノリをアカネとの打ち合いにも出してしまった。アカネはちゃんと見えてるくせに俺に何も伝えてこない。紙とペンを、なんのために渡したと思ってんだ。お前までサボんな。人と距離置くのは別にいいが、俺との距離まで置こうとしてんじゃねぇ。歌って感情流すな、俺に全部聞かせろ。我妻善逸なんかに構うな、目の前で行われてる茶番に頭が痛くなる!先生がいなかったら今度こそ調子に乗ってる我妻善逸の腕を折れたってのに。
「ほんと、アンタは一体なんなのさ!」
「っ…テメェに教える義理は無ぇ!」
そもそもテメェこそなんなんだ!アカネに気持ち悪い感情押し付けんな!
俺はアカネのことを一番知っているだけの他人だが、寺の先生は俺やアカネを家族と呼んでくれていた。鬼殺隊の先生にアカネを紹介した時のように、家族と言えばいいだけなのに。我妻善逸が関わるだけで、家族と呼ぶことに抵抗を感じた。
我妻善逸が雷に打たれたと聞いた時、ついに死んだかと心が軽くなった。しかし、様子を見てみると頭が黄色に変わっただけで相変わらずドン引きするくらい生き生きしていた。同じように様子を見にきたアカネは興味深そうに頭に近づき髪をとかしたり引いたりしていた。こいつが近づくだけで喜ぶ我妻善逸に、無性に苛ついたので引き剥がして修行に連れて行く。俺は壱の型以外を扱えるが、こいつは相変わらず雷の呼吸の型をまともに扱えていない。先生は呼吸があってないのかもしれないと言っていた。そんなことがあるのか。俺が基本である壱の型を使えないのも、はじめから…。いや、先生が俺を選んでくれたんだから、俺の努力が足りないんだ。現に選ばれてないアカネは一つも出来ていない、雷の呼吸は習得は簡単なものではない。
そんな時に我妻善逸が壱の型を扱えるようになった。あんなに修行から逃げていた奴が出来たなんて…先生の言葉でも信じられなかった。でも、眠りにつく前にアカネから紙を渡され、事実であると認めさせられた。
「時々夜中に我妻善逸の修行を見ていた、本当に壱の型が出来ていた。だから焦ることはない、心配ない」
読み終わると奥底から怒りに似た熱がぐつぐつと湧いて来た。なんでまだ何も出来ないお前が、あんな奴に時間を割く!!お前は足りないものばかりなのに!俺と共にいくんじゃないのか!?我妻善逸に口説かれて、もう俺のことなんてどうでもよくなったのか?紙を持つ指先が冷えてくる。
「お、い!」
ペシリと顔面に白紙とペンを当てられた。動かない俺の手を軽やかに取る。何も知らないからできる、俺の感情を無視した行動にプツリと我慢の糸が切れた。
「嫌いだ、ずっととぼけたまんまのお前もアレに構ってばかりの先生もアレの存在全てが大嫌いだ」
目の前で安っぽい音を立てて紙を破り捨てる。耳の聞こえぬこいつにも理解させたくて、大袈裟に子供っぽいことをする。拒絶の意思を示したのに、俺を見つめる真っさらな空色は曇ることはなかった。どうしてそんなに綺麗なままなんだ。応えるようにアカネは俺の手を掴み、どこかへ引いて行こうとする。手を離したらそのままいなくなりそうな勢いだったから振り払えなかった。
夜を駆けて、月明かりがほんの少しだけ俺たちを照らしていた。アカネは振り返り真剣な表情して、歌うときと同じ呼吸をする。
「ごめんね、あのいえにいるのつかれちゃったんだよね。ワタシもカイガクといるからさ、いえにいきたくなるまでまえみたいにいっしょにいよう」
なんだよ、お前結構喋れんじゃねぇか。
しかも俺と2人でいられるなら、お前は他のものを全部捨ててしまえるのか。とんでもない奴だな。
ごちゃごちゃ考えていたことが吹き飛ばされ、そんな考えがストンと俺の中に落ちてきた。言われっぱなしが無性に悔しくて、俺の感情の残骸をアカネの手を取って伝える。寺を出て行った時ちゃんと伝えてなかったことも、改めてアカネに伝えよう。特別な空色の目をしたこいつは、俺の全てを認めてくれるだろうから。
▷探検コソコソ話
特別な人から唯一無二の承認を貰う事ができれば、幸せの箱が埋まるんじゃないかと思い
箱の強度を寺時代から悲鳴嶼さん効果で強化して、転生主のような子も特別だと認められる
原作離れ激しい獪岳が出来上がりました。
しかしいくら原作離れしても、女子に関わる時の善逸だけは生理的に無理な存在なんじゃないかと思いました。
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