成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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兄貴からは聞いたことない位ごちゃごちゃした複雑な音がする。時々澄んだ綺麗な音がする時があって、決まって無茶振りをして俺を試してくる。急に焼きそばとパンを買ってこいとか、今から色々投げるが桃だけはしっかり受け取れとか。絶対俺で遊んでる。気を許されてるみたいでつい喜んで応えるけどさ、俺じゃなかったら嫌な奴って思われるんじゃないかな。
たまに俺のことカスとか出来損ないとか我妻さんとか呼んでくるし。一番傷付いたのは我妻さん呼びだ。赤の他人みたいじゃないか!そんでもって敬語になる!本気の音がしてますます兄貴との距離を遠く感じて、はじめてそう呼ばれた日のご飯は自分の涙でしょっぱかった。
兄貴はすごい人だ。いくら鍛錬してもたった一つだけしか習得できなかった雷の型を、俺の五倍の五つも習得している。兄貴と爺ちゃんのしか知らないけど一つ一つの技の精度が高いと感じる。兄貴は俺の五倍すごくて強いこと間違いない。鍛錬はしんどくて無理すぎっていつも思ってるけど、兄貴はこんな鍛錬を五倍頑張ってるんだって思うと…やばすぎて吐きそうになる。頑張ろうとか思えねぇよちくしょう、全然励まされなかったわ。無慈悲に俺の逃げ場の木を塞いで稽古強いるし、兄貴もうほとんど人間辞めてるよ!
兄貴は全てを捨てようとしたんだ。爺ちゃんも家も技も全部。俺がこの家に来たから。その時の兄貴は迷いのない澄んだ音がしていた。本当に居なくなってしまうつもりだって俺は確信した。悪いのは全部俺だとか爺ちゃんも獪岳もいて欲しいとか色々言って必死で止めたけど、俺なんかの言葉は心に届くことさえなかった。でも爺ちゃんの声はしっかり心に響いてた。そりゃそうだよね、分かるよ。俺も爺ちゃん大好きだし。今は届かないけど、いつか兄貴の心に俺の声が届いたらいいな。
兄貴には隙がない。仕事も家事もして空いた時間に自主鍛錬。休む時間なくない?俺が夜中にこっそり鍛錬しててもたまに夜食持ってきてついでに稽古をつけてくれる。意味わかんないよ!夜食美味しいし!
俺が喋りすぎると嫌がる音が聞こえるってわかってからは大人しくしてるけどさ、本当はもっと兄貴と話がしたい。仲良くなりたいよ。俺たちは爺ちゃんの弟子で、本当の家族じゃないけど。それでも俺は獪岳も爺ちゃんも大事な家族だと思ってるんだよ。最終選別でお別れなんて嫌だな。兄貴のためを思えば引き止めるのは良くないのは分かってるけど。鬼殺隊は自分なんかには務まらないからって、ケジメで爺ちゃんとも俺とも二度と会わないって、そこまでする必要あるの?
爺ちゃんと同じ悲しそうな音してるのに、もっと他の方法があるんじゃないの?爺ちゃんも兄貴も俺も笑顔になれる方法が、きっと。