成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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鬼殺隊に入隊し、二年経つ頃に悲鳴嶼さんが鬼殺隊に入隊したという知らせを受けた。理解が追いつかず、都合を合わせて悲鳴嶼さんに会いに行く。俺の給金でだいぶ修繕された寺に着くと、身なりがマシになった寺の子ども達と隊服を着た大男がいた。悲鳴嶼さんは以前のような痩せた男とはかけ離れ圧倒的に頼れる力強い印象を持った人になっていた。受け取った手紙を何度も読み直し隊服に身を包む悲鳴嶼さんにも問い質し、寺の子ども全員に聞いては頭を軽く叩かれて現実だと理解した。口の悪い一人にナナオは時々すごく馬鹿になる、なんて言われて反射的に叩き返してしまった。
「だって、受け入れたく無かったんだ。悲鳴嶼さんは鬼殺隊に入隊しないで、一生この寺でお前らと幸せに暮らすと思ってたから」
「悲鳴嶼さんが家族を放っておける訳ないだろ!」
「俺たちだってナナオのことほっとけないっての!」
「鬼がどんだけ危ない奴なのか知ってたら、寺で一生のんびり暮らせないからな」
「金はもう十分だし、悲鳴嶼さんがいなくても前よりずっと上手く暮らせてるし」
「隠って隊士より危なくない仕事なら私たちにもできるはずだしさ」
「悲鳴嶼さんとナナオの側で恩返ししたいんだもん」
「色々さ、話し合ったんだぜ。お前に伝えてなかったのは悪かったけど」
「兄ちゃん!沙代達もがんばったの!」
がんば、は??隠?こいつらサラッと何をカミングアウトした?隠になる予定なんて聞いてねぇぞ??真偽を問いただそうと見上げると悲鳴嶼さんは案の定泣いていた。泣いてないでこいつら止めてくれ、俺の方が泣きたいのに畜生。そういえば悲鳴嶼さんは俺が鬼殺隊に入ることアッサリ認めてくれた人だもんな、こいつらの意思を止められる訳ねぇ。寺の奴らが鬼殺隊に纏めて入隊って、隠だけど…そりゃ、隊士より危なくないが…あぁ、先行きが不安で頭痛が痛くなりそうだ。信じたくない情報に頭が悪くなってしまったけど、悲鳴嶼さんに頭撫でられて心が温かくなる。なんかもう、良くなってきた。俺は一人じゃないんだと悲鳴嶼さんが以前言っていたことを思い出してこういう事かと納得した。みんな変わっていってるんだ。こいつらは鬼殺隊が命懸けだって理解して、今まで以上に覚悟もできてしまってる。だったら俺を繋ごうとする軟弱なこいつらを失わないように俺も頑張らないと。
「ナナオ。君にこれを返そう」
渡された箱に入っていたのは、悲鳴嶼さんに生活の足しにしてくれと、寺から出る時に置き去りにした黄色の勾玉だった。まだ持ってたのかと呆れ半分、懐かしさ半分だ。受け取りはしたが、今更身に付けるのが無性に気が引けた。
この日は中途半端だった記憶を最期まで思い出した。死に際に思っていたのは雷の呼吸と、弟弟子だった善逸。善逸に関しては今世では会う事は無いだろうと、後味の悪い死に様ごと目を逸らした。黄色の勾玉は首に着けることだけは止めよう。あの記憶では勾玉を耳飾りの隊士のように目印にされていたし。今は無くさないようにそのまま箱の中に仕舞っておこう。
▼
悲鳴嶼さんが入隊してから数ヶ月後、親方様に呼び出されて柱にならないかとの打診を受けた。柱になる条件を十分満たしているらしいが、ちょっと、いやだいぶ理解が出来ない。俺にとって柱とは基本の型が使えない自分一人では不可能なもので、もしなれるとしても善逸と共同で柱になるものだと前世からずっと思っていたからだ。今世は前世とはだいぶ違う事が起きているから、状況に変化があって当然だが頷けるわけがない…俺にはなる資格なんてない。決意を固めそんな感じのことを伝えて断わると、親方様は俺の決意をいとも容易く打ち砕く想定外の提案をした。
傷心中に行きつけの甘味屋にいると鱗滝…同期の真菰に再会した。彼女はいつも通りに俺の横に座る。
「久しぶり、ナナオ。だいぶ参ってるみたいだけど、どうしたの?」
「俺の決意、砕かれ易すぎて硬さが豆腐以下なのかなって」
「うーん、私は豆腐より果物とかだと思うよ。ほら、川から流れてくる桃とか柿とか」
「…突然のかわ?果物?」
「ナナオって砕かれてるより、割と周りに合わせて流されてる様に見えるよ」
「成る程な。でも、そんな合わせてるつもりも、流されてるつもりもないぞ」
「無自覚かぁ」
「いや、そんなに流されてることあったか?」
「カナエからナナオの話を聞いたり、君から寺の家族の話を聞いてると、そりゃもう流されてるなぁって」
「………、真菰。この団子美味しいな」
「うん、こっちの饅頭も美味しいよ。食べる?」
「…食う」
「遅くなったけど、柱就任おめでとう」
「あぁ、まだ正式には就任してないから祝うのは早過ぎるくらいだ。饅頭ありがとな」
おかげで少し、感情の整理できた。
親方様が言ってきた提案は
隊士活動を1ヶ月間停止させるのでその間に元柱の雷の呼吸の育手の元で修行をし、俺が柱に相応しいかどうかを育手に見極めてもらおう
というものだった。
俺が育手を介さずに鬼殺隊に入ったことも関係してるが、俺の十八番になりつつある 人に決断を丸投げする行為を親方様がしてしまって良いのか。親方様も暇じゃないし、俺もその提案を呑んだからもうダラダラ考えったって仕方ないけど。出そうになる溜め息を深呼吸に変えて感情を落ち着かせる。
今世で来る事はないと思っていた場所に着いてしまった。来たこともないのに、どこか懐かしさを感じる。雷のような騒がしい怒声と悲鳴が聞こえてくるのも、懐かし……えっ爺さん、善逸をもう弟子に迎えてるのか?もうそんな時期だったのか…早くは、ないのか…気のせいだよな。意を決して師弟のいる桃園に踏み込んだ。
▼
成り代わり主の補足1
互いに不思議なやつだなぁって思ってる成り代わり主と真菰。顔合わせると情報交換しに普通にご飯食べに行く仲。成り代わり主視点では人と馴れ合う暇はないと突き放してる風だったが、残念なことに他の人から見るとそこまで突き放せていないし人並みに人付き合いをしてる。胡蝶姉妹に育手を紹介できたのもそのおかげ。
成り代わり主は鬼の呪いが効かないように、親方様の声の影響を受けない。それでも親方様は成り代わり主の性格を理解して逃さないように外堀からしっかり埋めている。
▼
「善逸、今日からお前の弟弟子になるナナオじゃ」
「え"ーーッ待って待ってこの人現役隊士なんだよね?!何言ってんの?!!鬼殺隊最強の柱候補が、鬼殺隊の隊士候補の、弟弟子って?!!じいちゃん本気??俺が弟弟子ならわかるけども?!流石におかしくない?!」
「先にわしの元で鍛錬を積んでるお前が兄弟子になることの何がおかしいんじゃ。ほれ、しゃんとせい!親方様から確と話は聞いておる。付いてきなさいナナオ」
「え???なんでアンタは普通に付いてくの??俺だけ変なの?嘘でしょ???アンタの方が俺より先輩なんじゃないの?隊士未満の俺が兄弟子とか嫌じゃないの??」
「…兄弟子、一先ず落ち着いたらいかがですか」
「あ、はい」
今世で初めて会うのに善逸が記憶のまま過ぎて冷静に対応してしまったが、俺が感じていた疑問を善逸が代わりに叫んでくれたおかげでスッキリした。善逸が関わった出来事でここまで清々しく感謝ができたのは今回が初めてだろう。
善逸と共に修行を始めて数日経つと、俺に対してビクビクしていた様子の影も形もなくなっていた。こいつの適応力の高さと神経のずぶとさは尊敬する。
おんぶを要求された時は引いた。兄弟子以前に人としてあまりに情けない、会って数日の人間におんぶを要求するか?見習うところが一つもなさそうなコイツだが、俺が唯一出来ない壱の型をもう修得している。俺が来た時にはもう壱の型を極める方針で鍛錬をしていたらしく、爺さんは俺たち二人に壱の型の稽古をつけてくれた。それにしても親方様は育手の中でも、よりにもよって爺さんを選ぶなんて。俺が柱に相応しいと爺さんが認める筈がないから親方様の期待する結果にはならない。爺さんは俺の使う壱の型以外の型を評価しているが、壱の型ができる善逸を一番見ているんだ。爺さんなら理解してくれるだろう。
眠りに着くと、今のように爺さんの家で過ごし善逸の兄弟子をしていた前世の記憶を夢に見て思い出した。
二人を置いて自業自得の末路を辿った嫌な記憶だ。寺の事件は起きていない、俺の家族はみんな生きてる。だから俺はこうしてここにいるんだ。もう俺を責めるものはどこにも存在しないというのに、死に際の感情がぶり返す。頭を冷やしたくて外に出ると善逸が月明かりの下で寝ながら鍛錬をしていた。冗談みたいに思えるが、雷の呼吸といびきのような寝言のようなものが聞こえるから、間違いなく寝てるだろう。爺さんは夢遊病めいたことをしてる善逸を捜しに起きて来ないのだろうか、不思議だ。刀に手を掛け、静かな雨のような呼吸音から…流星のような美しい閃光が走った。
初めて、俺は善逸の落雷のような一撃を純粋に美しいと思えた。無駄の無い完璧な居合い。なんで俺はソレを得られないんだろう。そもそも俺は獪岳じゃないから、当然なのに胸がざわつく。
善逸の閃光を何度か眺めていると、死に際の感情が清々しいほど無くなっていた。本当に気にくわない奴だ。俺には決して届かない雷光を善逸が力尽きるまで目に焼き付けていた。
「だって、受け入れたく無かったんだ。悲鳴嶼さんは鬼殺隊に入隊しないで、一生この寺でお前らと幸せに暮らすと思ってたから」
「悲鳴嶼さんが家族を放っておける訳ないだろ!」
「俺たちだってナナオのことほっとけないっての!」
「鬼がどんだけ危ない奴なのか知ってたら、寺で一生のんびり暮らせないからな」
「金はもう十分だし、悲鳴嶼さんがいなくても前よりずっと上手く暮らせてるし」
「隠って隊士より危なくない仕事なら私たちにもできるはずだしさ」
「悲鳴嶼さんとナナオの側で恩返ししたいんだもん」
「色々さ、話し合ったんだぜ。お前に伝えてなかったのは悪かったけど」
「兄ちゃん!沙代達もがんばったの!」
がんば、は??隠?こいつらサラッと何をカミングアウトした?隠になる予定なんて聞いてねぇぞ??真偽を問いただそうと見上げると悲鳴嶼さんは案の定泣いていた。泣いてないでこいつら止めてくれ、俺の方が泣きたいのに畜生。そういえば悲鳴嶼さんは俺が鬼殺隊に入ることアッサリ認めてくれた人だもんな、こいつらの意思を止められる訳ねぇ。寺の奴らが鬼殺隊に纏めて入隊って、隠だけど…そりゃ、隊士より危なくないが…あぁ、先行きが不安で頭痛が痛くなりそうだ。信じたくない情報に頭が悪くなってしまったけど、悲鳴嶼さんに頭撫でられて心が温かくなる。なんかもう、良くなってきた。俺は一人じゃないんだと悲鳴嶼さんが以前言っていたことを思い出してこういう事かと納得した。みんな変わっていってるんだ。こいつらは鬼殺隊が命懸けだって理解して、今まで以上に覚悟もできてしまってる。だったら俺を繋ごうとする軟弱なこいつらを失わないように俺も頑張らないと。
「ナナオ。君にこれを返そう」
渡された箱に入っていたのは、悲鳴嶼さんに生活の足しにしてくれと、寺から出る時に置き去りにした黄色の勾玉だった。まだ持ってたのかと呆れ半分、懐かしさ半分だ。受け取りはしたが、今更身に付けるのが無性に気が引けた。
この日は中途半端だった記憶を最期まで思い出した。死に際に思っていたのは雷の呼吸と、弟弟子だった善逸。善逸に関しては今世では会う事は無いだろうと、後味の悪い死に様ごと目を逸らした。黄色の勾玉は首に着けることだけは止めよう。あの記憶では勾玉を耳飾りの隊士のように目印にされていたし。今は無くさないようにそのまま箱の中に仕舞っておこう。
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悲鳴嶼さんが入隊してから数ヶ月後、親方様に呼び出されて柱にならないかとの打診を受けた。柱になる条件を十分満たしているらしいが、ちょっと、いやだいぶ理解が出来ない。俺にとって柱とは基本の型が使えない自分一人では不可能なもので、もしなれるとしても善逸と共同で柱になるものだと前世からずっと思っていたからだ。今世は前世とはだいぶ違う事が起きているから、状況に変化があって当然だが頷けるわけがない…俺にはなる資格なんてない。決意を固めそんな感じのことを伝えて断わると、親方様は俺の決意をいとも容易く打ち砕く想定外の提案をした。
傷心中に行きつけの甘味屋にいると鱗滝…同期の真菰に再会した。彼女はいつも通りに俺の横に座る。
「久しぶり、ナナオ。だいぶ参ってるみたいだけど、どうしたの?」
「俺の決意、砕かれ易すぎて硬さが豆腐以下なのかなって」
「うーん、私は豆腐より果物とかだと思うよ。ほら、川から流れてくる桃とか柿とか」
「…突然のかわ?果物?」
「ナナオって砕かれてるより、割と周りに合わせて流されてる様に見えるよ」
「成る程な。でも、そんな合わせてるつもりも、流されてるつもりもないぞ」
「無自覚かぁ」
「いや、そんなに流されてることあったか?」
「カナエからナナオの話を聞いたり、君から寺の家族の話を聞いてると、そりゃもう流されてるなぁって」
「………、真菰。この団子美味しいな」
「うん、こっちの饅頭も美味しいよ。食べる?」
「…食う」
「遅くなったけど、柱就任おめでとう」
「あぁ、まだ正式には就任してないから祝うのは早過ぎるくらいだ。饅頭ありがとな」
おかげで少し、感情の整理できた。
親方様が言ってきた提案は
隊士活動を1ヶ月間停止させるのでその間に元柱の雷の呼吸の育手の元で修行をし、俺が柱に相応しいかどうかを育手に見極めてもらおう
というものだった。
俺が育手を介さずに鬼殺隊に入ったことも関係してるが、俺の十八番になりつつある 人に決断を丸投げする行為を親方様がしてしまって良いのか。親方様も暇じゃないし、俺もその提案を呑んだからもうダラダラ考えったって仕方ないけど。出そうになる溜め息を深呼吸に変えて感情を落ち着かせる。
今世で来る事はないと思っていた場所に着いてしまった。来たこともないのに、どこか懐かしさを感じる。雷のような騒がしい怒声と悲鳴が聞こえてくるのも、懐かし……えっ爺さん、善逸をもう弟子に迎えてるのか?もうそんな時期だったのか…早くは、ないのか…気のせいだよな。意を決して師弟のいる桃園に踏み込んだ。
▼
成り代わり主の補足1
互いに不思議なやつだなぁって思ってる成り代わり主と真菰。顔合わせると情報交換しに普通にご飯食べに行く仲。成り代わり主視点では人と馴れ合う暇はないと突き放してる風だったが、残念なことに他の人から見るとそこまで突き放せていないし人並みに人付き合いをしてる。胡蝶姉妹に育手を紹介できたのもそのおかげ。
成り代わり主は鬼の呪いが効かないように、親方様の声の影響を受けない。それでも親方様は成り代わり主の性格を理解して逃さないように外堀からしっかり埋めている。
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「善逸、今日からお前の弟弟子になるナナオじゃ」
「え"ーーッ待って待ってこの人現役隊士なんだよね?!何言ってんの?!!鬼殺隊最強の柱候補が、鬼殺隊の隊士候補の、弟弟子って?!!じいちゃん本気??俺が弟弟子ならわかるけども?!流石におかしくない?!」
「先にわしの元で鍛錬を積んでるお前が兄弟子になることの何がおかしいんじゃ。ほれ、しゃんとせい!親方様から確と話は聞いておる。付いてきなさいナナオ」
「え???なんでアンタは普通に付いてくの??俺だけ変なの?嘘でしょ???アンタの方が俺より先輩なんじゃないの?隊士未満の俺が兄弟子とか嫌じゃないの??」
「…兄弟子、一先ず落ち着いたらいかがですか」
「あ、はい」
今世で初めて会うのに善逸が記憶のまま過ぎて冷静に対応してしまったが、俺が感じていた疑問を善逸が代わりに叫んでくれたおかげでスッキリした。善逸が関わった出来事でここまで清々しく感謝ができたのは今回が初めてだろう。
善逸と共に修行を始めて数日経つと、俺に対してビクビクしていた様子の影も形もなくなっていた。こいつの適応力の高さと神経のずぶとさは尊敬する。
おんぶを要求された時は引いた。兄弟子以前に人としてあまりに情けない、会って数日の人間におんぶを要求するか?見習うところが一つもなさそうなコイツだが、俺が唯一出来ない壱の型をもう修得している。俺が来た時にはもう壱の型を極める方針で鍛錬をしていたらしく、爺さんは俺たち二人に壱の型の稽古をつけてくれた。それにしても親方様は育手の中でも、よりにもよって爺さんを選ぶなんて。俺が柱に相応しいと爺さんが認める筈がないから親方様の期待する結果にはならない。爺さんは俺の使う壱の型以外の型を評価しているが、壱の型ができる善逸を一番見ているんだ。爺さんなら理解してくれるだろう。
眠りに着くと、今のように爺さんの家で過ごし善逸の兄弟子をしていた前世の記憶を夢に見て思い出した。
二人を置いて自業自得の末路を辿った嫌な記憶だ。寺の事件は起きていない、俺の家族はみんな生きてる。だから俺はこうしてここにいるんだ。もう俺を責めるものはどこにも存在しないというのに、死に際の感情がぶり返す。頭を冷やしたくて外に出ると善逸が月明かりの下で寝ながら鍛錬をしていた。冗談みたいに思えるが、雷の呼吸といびきのような寝言のようなものが聞こえるから、間違いなく寝てるだろう。爺さんは夢遊病めいたことをしてる善逸を捜しに起きて来ないのだろうか、不思議だ。刀に手を掛け、静かな雨のような呼吸音から…流星のような美しい閃光が走った。
初めて、俺は善逸の落雷のような一撃を純粋に美しいと思えた。無駄の無い完璧な居合い。なんで俺はソレを得られないんだろう。そもそも俺は獪岳じゃないから、当然なのに胸がざわつく。
善逸の閃光を何度か眺めていると、死に際の感情が清々しいほど無くなっていた。本当に気にくわない奴だ。俺には決して届かない雷光を善逸が力尽きるまで目に焼き付けていた。