成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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悲鳴嶼さんに沙代の幸せを守るという役割を与えられ生かされた今の自分には価値があったんだ。役割を果たす為の行動が他人から評価され、少しずつ期待されて自分のことを信じられるようになったんだ。
そうして積み重なった今日までの出来事が都合のいい夢だったんじゃないかと思える。現実では弱者には何の選択肢も存在しない、ただ強者に踏み潰されて終わりだ。そんな当たり前のことを間抜けな俺はアレと会うまで忘れていた。
なんでもないある日の早朝、雷雲が空を覆う薄暗い不穏な天気に嵐の前だと察して畑の確認をしに外へ出た。すると殺風景な田舎道にポツンと男が立っていた。何度も見ていたんだ、見間違える訳がない。
アレは上弦の壱だ。
前世から縁が深いと思っていたが、何故ここにいる。畑以外何もねぇのに、意味がわからない。上弦の壱はこちらを認識していたらしく、いつのまにか距離を詰められていた。威圧感がで立っていられなくなり、膝をつく。俺は鬼と初めてあった日から夜は決して出歩かず、昼も夜も藤のお守りを常備していた。この日も忘れずに所持していたが、そんなものが効くのは雑魚鬼だけだ。通用するわけがない。今更逃げられない。命乞いするほど、今の俺は自分の命に執着が持てなかった。剣士でもない俺の話を聞く訳ないと思った。
「お前は…放棄したか……」
悲鳴嶼さんから与えられた役割のことか?もうすぐ嵐がくるだろうし、俺の護りたい人は天が味方しているから安全だ。まさか自分の命のことか?仕方ないじゃないか、アンタが処刑人のように俺の目の前にいるんだ。全て諦めるしかないだろう。
俺の死期が確定しているなら、死ぬまでにできれば誰かの為になることをしたい。だって誰かの為にこの命を使えたら、きっと救いのある終わりを迎えることができるだろう?でも、きっとこの世界は俺の存在を見逃さない、罪人は罰を受けるべきだと。自分に言い聞かせて、全てを受け入れるように目を閉じた。