成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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普通に過ごしていたはずなのに、鬼の方から関わってくる。近所の子どもの正一とてる子が助けを求めてきた。兄の清が化け物に連れていかれたらしい。十中八九鬼だ。その場で喰わず連れていかれたなら、まだ間に合うはずだ。
護身用に呼吸の鍛錬を続けていたから多少は対処できる。正一とてる子を屋敷外の茂みに待機させ、適当な棒を片手に屋敷に入る。すると外見と室内の間取りが全くの別物だった。屋敷ごと血鬼術が掛かってるのか?大抵の物音は鬼だ。日輪刀を持ち合わせてない今出くわしたら逃げる以外に選択肢はない。さっさと見つけてこんな気味の悪い屋敷から出よう。
突如、激しい自己主張をする何かが俺の通り過ぎた。理解する前に消え失せたが、今世では出会ってすらない善逸の同期の猪だ。前世で多少見たことがあるが、任務でここにいるなら心強い。このまま目立ちまくって鬼を引き寄せて倒しておいてくれ。
なるべく慎重に進み続け、漸く清と合流できた。経緯を聞くと、少し前に清を巡り鬼同士が争っていてその隙に鬼の持ち物だった鼓を拾って生き延びたらしい。持ち主の鬼から逆探知などされたら危険だと言いくるめて鼓を俺が預かる。足を怪我しているようなので清を背負って屋敷の外に向かう。
運良く鬼に出会うことなく出られたものの、茂みで待っていたはずの正一とてる子がいなくなっていて代わりに箱が一つ残されていた。この箱何度か見たことがある。確か前世で面倒ごとばかりの耳飾りの奴が肌身離さずといった風に持ち歩いていた、鬼の妹が入っている箱だ。置き去りにしていいものではないのに、何があったんだ?箱から引っ掻き音がして清が不安そうにこちらを見る。
「かい兄、それってなんだろう?」
「箱だな」
「箱だけど、動物が入ってるのかな?」
「音もするし、爪のある生き物で間違いないな」
「正一とてる子はここで待ってたんだよね?」
「あぁ、この箱がある茂み辺りだ」
「まさか、血の一滴も残さず箱のお化けに食べられて…っ」
「え?いやいやそれはない!鬼は存在するが、そんな突飛な生き物は流石にいないぞ」
「そ、そうだよね。考え過ぎだった…」
カリカリと、返事をするように俺たちの話に反応する箱。清でもこんなおかしな考え方するなら、俺と清の帰りを待ち続けていた二人がこの箱の側にいたんだったら…嫌な予感がする。ふと屋敷の方を見ると、二階の窓からポンと人が二人飛び出てきた。五月蝿い髪色をした奴…今世で初めて見る善逸が子どもを庇いそのまま地面にぶつかった。慌てて駆け寄る清の後を追い二人の状態を確認する。善逸は頭を多少ぶつけていたようだが、問題ない。
庇っていた子どもは正一だった。怪我もないので心の中でよくやったと褒める。一先ず正一から事情を聞く。俺が屋敷に入った後しばらくすると善逸と耳飾りの奴がやってきて、二人の護身用に箱を追いて屋敷に入った。だが、箱が恐くなり二人を追いかけて屋敷に入ることにした。すぐ追いつけたものの、途中で逸れてしまい てる子は耳飾りの奴と行動しているようだ。鬼の住む屋敷にてる子が残されているなら助けにいかないと。気絶した善逸がいるなら二人を命懸けで守ってくれるだろう。俺は護身用に持っていた木の棒と善逸の刀を交換し鬼対策を万全にして屋敷に再度入ることにした。
進んでいった先が割とギリギリのシーンで、その中に飛び込むことになるとは思いもしなかった。耳飾りの奴とてる子、どちらも目立つ怪我もなく無事のようだ。ここで俺がてる子を連れて逃げれば、耳飾りの奴は本領を発揮できるだろう。敵は十二鬼月ではない鬼。血鬼術は特殊だが、決して勝てない相手じゃない。うっかり敵の攻撃に当たらないように気を付けて離脱しよう。そう思いながら不安定な足場でも平気でいられるよう呼吸を使い鬼へ刃を向けた。
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部屋から離脱が困難だった為、てる子を抱えながら耳飾りの奴に手を貸した。耳飾りの奴はどこか怪我をしてるようで動きが少し変だし、てる子を守ってくれていた恩がある。善逸から刀を拝借してて良かった。回転し続ける不安定な足場は呼吸を使えば問題なかった。
鬼との戦いを終え、鬼に向けて膝をつく耳飾りに清と正一の無事を知らせる。消えかけの鬼に何かしてる奴を放置し、てる子を抱えて先に外に向かうと外でいざこざが起きていた。猪と善逸はなんで戯れているんだ。子ども達が引いてるじゃないか。善逸には刀を勝手に拝借したという借りがあるのでさっさといざこざの仲裁に向かう。
「あぁ?!んだテメェ!やんのか?!」
「やる気はない。子ども達の前で一方的に暴力を振るのはやめろ。教育に悪いし不快だ、消えろ」
「箱の中に鬼がいるんだぞ!テメェら雑魚を俺が守ってやろうってのに、この弱味噌が反撃しねぇで邪魔しやがる!どけっつってんのにどかねぇコイツが悪ぃんだよ!」
猪はいつ刀を使ってもおかしくないほど気が立っている。耳飾りの奴の奴に声をかけて原因の箱の回収を頼もうと振り返ると、奴は叫びながら猪に突進しそのまま喧嘩をし始めた。
コイツら…力が拮抗してるし喧嘩なら俺の許容範囲内だ、放置しよう。
「善逸、勝手に借りてたがお陰で助かった。礼を言う」
「へ?ちょ、俺の刀!!てかお前誰?!なんで俺のこと知ってんの?」
「俺は獪岳だ。お前のことは正一からきいてる。一応鬼から正一を護ったんだろ、ありがとう」
「え?!あれは正一くんが俺を護ってくれたわけであってお礼を言うのは俺の方でして」
「そんなわけあるか。お前は一体何の為に刀を持ち歩いているんだ。誰かに助けてもらう為じゃ無いだろ」
「かい兄ちゃんも刀使えるの?」
「この人達には及ばない。護身用にしか使わないから、全然凄くないぞ」
「一般人が護身用に刀使えるとか剣道家かなんかなの?俺なんかより遥かに凄いだろ」
めんどくさそうな雰囲気を出してきた善逸をスルーして事の成り行きを見守っていると頭突きで決着がついたようだ。倒された猪を寝かせると、耳飾りは屋敷に放置されている死体を弔おうと言ってきた。俺以外の全員がその行動に同調していた為それに合わせておく。
日が傾き始めた頃に全てが終わり、全員で下山する。一般人の俺達と鬼殺隊の善逸達で別れようとした時、善逸が正一に泣き縋ってきた。咄嗟に恥を晒すんじゃねぇと、兄弟弟子でも無いのに善逸を殴ってしまった。混乱してるうちに正一を保護して鬼殺隊の三人と別れることができた。
兄弟を家まで送り、日が暮れる前に帰宅した。そういえば、清が鬼に拐われたのは俺が渡した藤の香り袋の効果が切れたからだろう。俺は沙代にも近所の子ども達にも渡していたが、渡してからそれなりに時間が経っている。明日、鬼避けに藤の香り袋をまた渡そう。