成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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「この程度でへばってたら最終選別で死ぬぞ」
「ハァアア?!今でさえ死にそうなのにこれ以上鍛えたら行く前に死ぬから!!」
「じゃあ休憩行くか?爺さんに何も言わずに街に甘味を食いに行くんだ。うん、いい修行になるんじゃないか?鬼に見つからないように慎重に行動するのも時には大事だしな」
「それサボりって言うよね!?俺これ以上サボったらじいちゃんに死ぬほど説教されるんですけど?!兄貴は俺が死んでもいいわけ!?」
「良くないなぁ。雷の呼吸は俺とお前の二人が後継に選ばれるだろうし。仕方ない。今は休憩をやめて、このまま俺と頑張ろうな善逸!」
「だからこれ以上は死ぬって言ってんでしょ!!俺が苦しんでるのがそんなに嬉しいか!最低だよ!兄貴ってホント性格歪んでるぜ!!」
「ハハッ言うようになったじゃねぇか。けど、こんなとこでお前は絶対死なねーから大丈夫だよ。今は苦しいだろうけどお前は絶対に強くなれる。認めたくないがお前は俺よりも強くなれるってことを知ってるからさ。爺さんの言う通り才能があるんだから、諦めるなよ」
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入隊して一年未満の俺が隊員歴八年近い兄貴に追いつかなきゃいけないとか無理すぎるでしょ。共同の後継になるって兄貴に言われ続けてるけど俺全然弱いからね、鬼を倒せたこと一度もないし。大体、兄貴の言う我妻善逸さんと俺は別人なの!そんな馬鹿みたいに強い奴になれるわけないから!ほんとに無理だしすぐ死ぬに決まってるのに、兄貴にはみっともないとこしか見せてないのに。俺なんかのこと、本気で信じてるって音がする。爺ちゃんと似た音がするんだ。
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兄貴には俺の声が全然届かない。
下弦の壱を倒した後は上弦の参が相手だと聞いてたのに、それより数字が上の上弦の弐が現れた。上弦の参とは別のおぞましい寒気と威圧感に身体が震えた。炭治郎と伊之助と一緒にめちゃくちゃ強い氷人形と戦いながらも俺の耳は聞き取った。そいつは兄貴に自分の命と俺たちの命を天秤にかけるようなことを言っていた。そんな奴の言うことなんか聞く必要ないだろと叫びたくなったが、俺は小さい氷人形相手にボコボコにされている。兄貴の元に向かえない自分の弱さが情けなくて、悔しくてたまらなかった。でも兄貴は予想外の返答をした。兄貴は鬼側につくかどうかを不便さだけをみて、上弦の弐相手に刃を向けた。その言い方じゃ便利だったらそっちに行くみたいで、ふざけんなってキレたくなった。
「善逸!お兄さんのところへいけ!」
「俺らだけでこんなチビ共よゆーだわ!」
炭治郎と伊之助の後押しで兄貴のところへ向かっている途中で気付く。柱の戦闘にどう俺が介入しろと!?見てわかる程、隙なんて全然ない高レベルの戦いだ。ていうか一人増えてるし!あの人も柱じゃん!?俺に出来ることが何かないかと音に集中すると、兄貴にだけ鬼の悪意が向けられていることに気付き血の気が引いた。でも、弱い俺にはなにもできるわけない。爺ちゃんに拾われて兄貴だけを追ってここまで来たのに、俺はずっと弱いまま。壱の型はできるけど、鬼が恐くて立ち向かえたことなんて一度も無いんだから。
柱達はだいぶ消耗してるのに鬼は余裕そうだ。この空気が凍えるように寒いのは、この鬼の血鬼術だと兄貴が叫ぶ。瞬間、鬼が出す悪意の音が兄貴に対して鋭くなった。まずいと知覚した瞬間、散々震えていたのに鬼に対する恐怖は治まっていた。姿勢を低くし、呼吸を研ぎ澄まし、ドンと、よく跳べた。兄貴の疑問で埋め尽くされた音を聞いて冷えた身体と真逆の焦がすほどの感情が爆発した。
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きっかけは些細な感情からだった。兄貴はいつも俺の声無視するけど、カナエさんと粂野さんの声は響いててさ。二人がすごく優しい音がするから当たり前なんだろうけど、俺の方が兄貴と長くいるのにって思っちゃって。これっぽっちも兄貴と仲良くできずにいる自分が情けなくて。深刻な音がする兄貴のこと心配だと話していたのに言い合いになっていた。だからいってしまったんだ。
「兄貴が俺のこと嫌ってるのはわかってたし、俺だってアンタが嫌いだよ」
そのあと、それでも仲良くなりたいって伝えるつもりだったのに。俺の言葉がこの時ばかり、兄貴に刺さったようで。
「だからなんだよ!?どうでもいいんだよ!俺はずっと前からお前のことなんて!」
怒鳴って逃げられてしまった。
ずっと前って、それ絶対俺じゃない我妻善逸さんのことも含まれてるよね?というか兄貴、俺からの否定意見しか響かないの、おかしいだろ!俺の普段の言葉なんてちっとも届かないのに。兄貴の心の中にある幸せを入れる箱がねじ曲がって壊れかけてるから、そうなっちゃうのかな。でもそれだけじゃない、俺がもっとちゃんと話せていれば傷付けずに済んだはずだ。兄貴の背中を追いかけないと。勘違いされたままなんて絶対嫌だ。
「待ってよ兄貴!俺の話逃げないで最後までちゃんと聞けよ!」
前世のこと包み隠さず話してくれた兄貴だから俺の幸せの箱のこと理解してくれると思ったのに。兄貴はだから何ってまた開き直って!アンタが俺や自分のことを大事にできないのはよくわかったよ!兄貴はそう思っててもいいけど、俺は兄貴のことどうでもよくないの!兄貴だけだろ、兄貴のことどうでもいいなんて否定する奴は。周りをちゃんと見ろよ。俺はまだアンタの後ろにいるけど、早く横に立てるように頑張るし、アンタの前には爺ちゃんだけじゃない。今のアンタ自身を見て、評価して期待してくれる人がいるだろ。その人達のことを裏切りたい訳じゃないんだよね?なら、諦めないでよ。修行中に兄貴が俺によく言ってたじゃん。諦めるなって。共同の後継になるんなら、俺が側で見張ってられるからさ。お互い諦めずに頑張るのとか、名案だと思うんだけど。
「なんだよ、それ。俺が善逸を見張るの前提なのが気にくわねぇ」
「はぁ?兄貴はすぐ諦めるじゃん。俺ばっかり見張るのは割りに合わないって」
「諦め癖についてお前に言われるのは本当癪だな。でも、まぁ…良い案だな」
はじめて、俺の声が兄貴に響いた音がした。やったよ爺ちゃん!ついに兄貴にちょっとだけど認められたよ!俺、嬉しくて変な顔してたんだろうな。調子乗るなって小突かれた。これから先は修行時代の比じゃない地獄の日々かもしれないけど、兄貴と一緒なら諦めないで戦ってみせるから。
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無惨の次に強い鬼。上弦の壱の登場で恐怖で動けずにいると兄貴と目があった。希望を失ってない力強い目に射抜かれて余計な力が抜ける。そうだ俺は一人じゃないんだ。死ぬほど恐いけどアンタと一緒に戦えるなら誰が相手だって、頑張るから。突然兄貴が俺に向かって飛び込んできた。当然俺はなすすべも無くぶっ飛んだ。
足場がぐしゃりと嫌な音を立てて崩れ、俺の身体を支えるものが一切無くなった。
まって、なにが起きてるの?
なんで、兄貴はそんな顔で笑ってんの。なんで今安心した音聞こえんの?待ってよ嘘だろ?おい、早く助けに来いよ、俺打ち所悪くて死ぬかもしれないだろ?共同の後継になるんでしょ?兄貴ずっと言ってたじゃん!
いや、いやだ、待てよ!兄貴!俺を置いていこうとすんじゃねぇ!!