成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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沢山実っている美味い桃を盗んでいると、この桃園の主に見つかった。ぶん殴られ、勢いよく頭が木にぶつかると割れるような激しい衝撃を受けた。この木に雷が落ちたのかと思った。仰向けになって見上げた空は晴天。雷の正体である爺さんは相変わらず厳つい顔していた。
俺はこの日、前世の記憶を思い出した。
盗んだ罰として一先ず爺さんにこき使われた。何をするにも上の空の俺に痺れを切らした爺さんは、ここに来るまでの経緯を問いただす。
濃ゆい前世の記憶のおかげでこの日までの自分のことなんてほとんど忘れてしまった。面倒なので、この世界を題材にした作品の読者だった前世から、先程殴られて思い出したということまでを洗いざらい伝えることにした。
ふざけた内容なのに、爺さんは真剣な表情で全部聞いてくれた。爺さんはまず俺を拳骨で叩いた。自分自身のしてきたことを他人事扱いしたことにだ。振り返ると俺は殆どの出来事を自分以外のもののせいにして、自分勝手に絶望して自棄になり、思考を辞めて周りに任せて流されていただけだった。今だからあっさり判断できてるが、さっきまで死んでたはずの感情を爆発させていた。俺が一方的に知ってるだけなのに!とか、初対面の餓鬼相手に何すんだこのクソ爺!とか、俺の気持ちの何がわかる!とか。自分のことを棚に上げて俺は喚いていたはずだ。その度にばしばし斬られ叩かれ叱られた。
「獪岳よ。相手からも自分からも逃げるな。精一杯に、真剣に、向き合うんじゃ」
「それができたら俺はここにいない!」
「これからじゃ!」
「だから、今更遅いんだよ!!」
「遅いわけあるか、大馬鹿者!今のお前は人間で、まだ子どもなんじゃぞ!諦めるな!」
「うるせぇクソ爺ィ!俺は潔く諦めて死んだ方が良いんだよォオ!」
なんて風に、言われたことに対して俺は感情のまま反抗をし続けて…完全燃焼した。自分の中に蓄積された前世の記憶という意味不明な話を誰かに聞いて欲しかっただけだったんじゃないかって程にすっきりしている。爺さんは俺にこれからどうするかを聞いてくるが、俺は上手く答えられなかった。
改善されない俺の態度にまた拳骨が飛んで、ならば鍛錬しろと脳筋なことを言って刀をくれた。鬼殺隊になれとは言わず、この軟弱な精神を鍛錬でどうにかすることを目的としていた。人の性根はそう簡単には変わらないと思うが…これからどうするか、決まるまでは爺さんに付き合うことにした。
稽古はとても厳しいが、前世の記憶からの知識は無駄ではないようで、メキメキと身体に馴染んだ。今まで通りいくら鍛錬しても壱の型ができないままだが、爺さんは鬼殺隊に入隊してその柱に誠心誠意の謝罪をしてみないかと提案した。命乞いには慣れていたが、誠心誠意な謝罪は一切したことがなかった。
寺で起きた事件…前世の記憶も重なり記憶が曖昧になっていて、自暴自棄だったことは想定できる。自分が死ぬほど悪いとは思っていても、心のどこかで認めきれないからできないでいた。だから記憶にないと きっぱり伝えるのが正しいことかと思っていたが…爺さんに開き直りだと叩かれた。どちらも前世からの癖だからうっかりしてたと言い訳するとまた叩かれた。俺は刀じゃねぇんだから叩かないで欲しい。爺さんが叩かなくても、十分わかってるつもりだ。誰かの死に繋がるようなことは、悪いことだと思えるから。反省してる…はず…。
爺さんの意思に沿ったが、前世とは違って自分の意思で決意した。俺があの人に何を言ったって無駄だという現実はきっと変わらない。けど、今の自分が生き残れる最善の道だと思えた。それに伴い、弟弟子と出会うよりずっと前に最終選別に行くことになった。
前世までと違い、強力な異形の鬼に真っ先に出くわした。苦戦はしたが、それ以外の鬼に会うことは無かった。なにやらこの山にいる鬼を根絶やしにしようとしてる参加者がいるらしく、趣旨が違うことを突っ込みたくなった。問題らしいことは参加者全員が生存するくらいで、それ以外はスムーズに終わったので、爺さんの待つ家に帰る。
▼
選別から帰ってきただけなのに喜ばれた。
前世まではそこまで喜ばれず、自分の弟子ならできて当然って堂々とした態度だったのに…まっすぐ向けられる感情に少し不安になる。俺の心情などお構いなしに爺さんは琥珀色の勾玉を俺に押し付けてきた。祝いの品らしいが、俺も前世で似たものを適当な店で買ってたな。…鬼狩りの技術と知識以外で、爺さんが初めて俺に与えてくれたものだし…これくらいなら身につけても邪魔にはならないだろう。隊服と刀が来て、善逸がこの家に連れて来られる前に任務に就く。今回、年数の空いた善逸と共同で後継になるのかどうかだけが気になった。
任務に就くと選別にいた鬼並に手強い奴ばかりと遭遇する。自分の実力不足を感じて情け無い。何よりも恐ろしい鬼を知っているからどんな鬼に対しても平気だが、鬼殺隊は遠回しに俺を殺そうとしてるんじゃないかと疑心暗鬼になる。
こつこつ任務をこなし比較的平穏に数年が経過した頃、漸く善逸の情報が爺さんから送られて来た為 顔合わせに向かう。俺の記憶が正しければあいつとは二歳差程だったはず、出会いが遅くなったことに疑問を持つ。些細なことだと歩みを進める途中で、不自然な寒気と音に気付き 静かに辺りを確認する。
遠く、月明かりに照らされた二つの人影…上弦の弐と一人の女の隊士が戦っている所を見つけてしまった。それ程急ぎでもないのに夜中に移動していた俺が間抜けだった…どちらにも俺の存在は気づかれていないようだが、相手は上弦の弐。不意打ち成功しても死ぬかもしれないが、 行かなければ前世より罪が増えて死にそうだ………倒せなくても、朝日が昇るまで生き残れたら勝ちなんだ。
俺は生き残るために微かに安全だった場所から飛び出した。
俺はこの日、前世の記憶を思い出した。
盗んだ罰として一先ず爺さんにこき使われた。何をするにも上の空の俺に痺れを切らした爺さんは、ここに来るまでの経緯を問いただす。
濃ゆい前世の記憶のおかげでこの日までの自分のことなんてほとんど忘れてしまった。面倒なので、この世界を題材にした作品の読者だった前世から、先程殴られて思い出したということまでを洗いざらい伝えることにした。
ふざけた内容なのに、爺さんは真剣な表情で全部聞いてくれた。爺さんはまず俺を拳骨で叩いた。自分自身のしてきたことを他人事扱いしたことにだ。振り返ると俺は殆どの出来事を自分以外のもののせいにして、自分勝手に絶望して自棄になり、思考を辞めて周りに任せて流されていただけだった。今だからあっさり判断できてるが、さっきまで死んでたはずの感情を爆発させていた。俺が一方的に知ってるだけなのに!とか、初対面の餓鬼相手に何すんだこのクソ爺!とか、俺の気持ちの何がわかる!とか。自分のことを棚に上げて俺は喚いていたはずだ。その度にばしばし斬られ叩かれ叱られた。
「獪岳よ。相手からも自分からも逃げるな。精一杯に、真剣に、向き合うんじゃ」
「それができたら俺はここにいない!」
「これからじゃ!」
「だから、今更遅いんだよ!!」
「遅いわけあるか、大馬鹿者!今のお前は人間で、まだ子どもなんじゃぞ!諦めるな!」
「うるせぇクソ爺ィ!俺は潔く諦めて死んだ方が良いんだよォオ!」
なんて風に、言われたことに対して俺は感情のまま反抗をし続けて…完全燃焼した。自分の中に蓄積された前世の記憶という意味不明な話を誰かに聞いて欲しかっただけだったんじゃないかって程にすっきりしている。爺さんは俺にこれからどうするかを聞いてくるが、俺は上手く答えられなかった。
改善されない俺の態度にまた拳骨が飛んで、ならば鍛錬しろと脳筋なことを言って刀をくれた。鬼殺隊になれとは言わず、この軟弱な精神を鍛錬でどうにかすることを目的としていた。人の性根はそう簡単には変わらないと思うが…これからどうするか、決まるまでは爺さんに付き合うことにした。
稽古はとても厳しいが、前世の記憶からの知識は無駄ではないようで、メキメキと身体に馴染んだ。今まで通りいくら鍛錬しても壱の型ができないままだが、爺さんは鬼殺隊に入隊してその柱に誠心誠意の謝罪をしてみないかと提案した。命乞いには慣れていたが、誠心誠意な謝罪は一切したことがなかった。
寺で起きた事件…前世の記憶も重なり記憶が曖昧になっていて、自暴自棄だったことは想定できる。自分が死ぬほど悪いとは思っていても、心のどこかで認めきれないからできないでいた。だから記憶にないと きっぱり伝えるのが正しいことかと思っていたが…爺さんに開き直りだと叩かれた。どちらも前世からの癖だからうっかりしてたと言い訳するとまた叩かれた。俺は刀じゃねぇんだから叩かないで欲しい。爺さんが叩かなくても、十分わかってるつもりだ。誰かの死に繋がるようなことは、悪いことだと思えるから。反省してる…はず…。
爺さんの意思に沿ったが、前世とは違って自分の意思で決意した。俺があの人に何を言ったって無駄だという現実はきっと変わらない。けど、今の自分が生き残れる最善の道だと思えた。それに伴い、弟弟子と出会うよりずっと前に最終選別に行くことになった。
前世までと違い、強力な異形の鬼に真っ先に出くわした。苦戦はしたが、それ以外の鬼に会うことは無かった。なにやらこの山にいる鬼を根絶やしにしようとしてる参加者がいるらしく、趣旨が違うことを突っ込みたくなった。問題らしいことは参加者全員が生存するくらいで、それ以外はスムーズに終わったので、爺さんの待つ家に帰る。
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選別から帰ってきただけなのに喜ばれた。
前世まではそこまで喜ばれず、自分の弟子ならできて当然って堂々とした態度だったのに…まっすぐ向けられる感情に少し不安になる。俺の心情などお構いなしに爺さんは琥珀色の勾玉を俺に押し付けてきた。祝いの品らしいが、俺も前世で似たものを適当な店で買ってたな。…鬼狩りの技術と知識以外で、爺さんが初めて俺に与えてくれたものだし…これくらいなら身につけても邪魔にはならないだろう。隊服と刀が来て、善逸がこの家に連れて来られる前に任務に就く。今回、年数の空いた善逸と共同で後継になるのかどうかだけが気になった。
任務に就くと選別にいた鬼並に手強い奴ばかりと遭遇する。自分の実力不足を感じて情け無い。何よりも恐ろしい鬼を知っているからどんな鬼に対しても平気だが、鬼殺隊は遠回しに俺を殺そうとしてるんじゃないかと疑心暗鬼になる。
こつこつ任務をこなし比較的平穏に数年が経過した頃、漸く善逸の情報が爺さんから送られて来た為 顔合わせに向かう。俺の記憶が正しければあいつとは二歳差程だったはず、出会いが遅くなったことに疑問を持つ。些細なことだと歩みを進める途中で、不自然な寒気と音に気付き 静かに辺りを確認する。
遠く、月明かりに照らされた二つの人影…上弦の弐と一人の女の隊士が戦っている所を見つけてしまった。それ程急ぎでもないのに夜中に移動していた俺が間抜けだった…どちらにも俺の存在は気づかれていないようだが、相手は上弦の弐。不意打ち成功しても死ぬかもしれないが、 行かなければ前世より罪が増えて死にそうだ………倒せなくても、朝日が昇るまで生き残れたら勝ちなんだ。
俺は生き残るために微かに安全だった場所から飛び出した。