成り代わり主の死に方
成り代わり夢主の元の名前
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結果からいうと勝てた。手強かったが子どもの鬼だし全然恐くないのでガンガン攻撃スタイルで勝てた。こっちは前世で上弦の陸をやってたんだ、下弦の伍に負けるわけねぇんだよ。血を流し過ぎなのかクラクラする。後ろから遅くなったと水柱がヌッと現れて、到着の遅さについ舌打ちをしてしまった。
「遅い、もう終わった」
「…すまない」
「獪岳さん、ですよね。善逸のお兄さんの。また助けてくださってありがとうございます…」
「俺はあいつの兄じゃなくて兄弟子だ。善逸がお前の妹を気にしてたから来ただけだ。礼はあいつにしろ」
「それでも、ありがとうございます」
なんだか鬱陶しいな。まぁいい。これからどうするんだろうか。俺たちは普通に下山か?この山にいる鬼の大元は死んだから陰が来て後始末するだろうし。ふとこちらに向かってくる敵意に気づく。水柱は真っ先に反応し突然来た敵意から庇った。飛んできたのは、蟲柱だ。聞く耳持たなそうな苦手なタイプだ。面倒ごとの空気を察してこの場を離れようとするが水柱がこちらに向かって言い放つ。
「お前達、妹を連れ逃げろ」
…その言い方、俺も含めてないか?俺もなのか?もたついてる耳飾りの奴につい手を貸して一緒に行動してしまったが俺が箱を持った方がいいんじゃないのか。本人は長男だからとよくわからないことを主張して手放しそうにないから触れないでおこう。
俺は空気の読める男だ。何か飛び込んでくる空気も察することができる。耳飾りの奴を退けて相手を迎え討つ。降ってきたのは蝶飾りの女。確かこいつは同期だが、何故鬼殺隊がこちらを攻撃してくるん…あぁ、耳飾りの奴の妹に敵意がないから放置していたが鬼についての規律違反のことを忘れていた。もしかして俺も規律違反に引っかかってる?そんなことないよな。だってこの鬼は容認されてる筈だから。
打ち合いをしてると鴉が鳴いた。ほらやっぱりと思っていたが、俺の名前まで呼ばれ急にフラグが立った。あの善良な住職だった柱に処刑されるフラグが。
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拘束されて人の手によって運ばれた。目的地へ着いたらしく降ろされる。手を縛られたまま目隠しだけを外された。連れてこられたのは極楽のように美しい庭園のある屋敷。耳飾りの奴は転がされ、俺は水柱の側で待機する。柱の集まっている場所からは身体ごと背ける。耳飾りの奴だけでなく水柱も文句を言われている。俺に向けられた不愉快な言葉もあった。だんまりしていると耳飾りの奴とその妹の裁判らしいことが判明した。当然だ、俺は鬼殺隊に入隊してから何の罪も犯していない。俺の罪は精々鬼を黙認していたことくらいだ。奴らが容認しているはずの鬼の黙認だし、罰もそんなに重いものではないだろう。
いざこざはあったが、裁判は終了。柱という奴らはどいつもこいつも頭がおかしいということしかわからなかった。耳飾りの奴の件で万事解決、親方様も退場し即解散。とはいかないようだ。聞き覚えのある声が俺の名を呼ぶ。前世の最後の時間に聞いた科白で、俺の罪を暴く私的な裁判が始まった。善逸に流されて鬼殺隊に入隊したが、生き抜く為に一応想定していた。だから用意していた言葉を胸を張って吐く。
「それで?つまり?俺に悲しめと、悔い改めろと?記憶にないことを責められても、困ります。それが事実だとして、記憶のない俺をどう裁かれるのですか」
「待ってください、獪岳さん。貴方から何かを隠している臭いがする」
は?こいつ今なんて?臭いってなんだよ。無関係の奴が出しゃばるな。全てを白状することが正しいとでも思っているのか。まずい。どう誤魔化せば、どんな嘘をついたらこの場が終わる。こいつの臭いのことが本当なら善逸と似たような超能力者か。なら俺の考えはどれも知られてるんじゃないか。このまま黙っているのも白状するのも…俺は、
「俺は、本当に何も知らないって言ってんだよ…!俺は何一つ悪いことをしちゃいない。鬼殺隊に入隊してから、何も!」
「獪岳さん!俺は善逸から貴方のことを沢山聞いてます。尊敬できる自慢の兄だと。鬼殺隊に入隊することを拒否していたと。さっきの言い方だって不自然だ!貴方は鬼殺隊に入隊する前に起きた出来事に罪の意識を感じているんじゃないんですか」
「お前、なんなんだよ」
「俺は、俺たち兄妹は貴方に、善逸に救われました。善逸が居ない今、俺が貴方を救けます」
なんなんだ、一体。耐えられない。たったそれだけのことで何故そんなに信じられる。気持ち悪くて、堪らない。
「本当のことを話して欲しいと言っていたな。なら言わせてもらう。まず、お前ら兄妹を助けたと勘違いしているようだが、それは本当に偶々だ。俺の手の届くところにいた。鬼か人かなんてどうでもいい」
周りからの視線が厳しくなる。腹の底から話すつもりがなかった言葉が溢れてくる。吐き出したらもう引き返せない
「俺は何だろうと敵意を向ける奴に刃を向けるだけだ。そうしないと、俺は殺されてた。
寺の時だってそうに決まってる、俺はあの時逃げなきゃ殺されてたはずだ!俺は鬼に襲われたから、逃げただけなのに!たったそれだけのことで死んだ方良いって言うんだろアンタらは!だから裁判まで起こして自分達に正義はあると、俺を殺そうとしているんだ!
アンタらにとって人じゃ無いんだろ。寺から逃げ出したあの日から俺は人じゃないんだ。勝手に殺せよ。俺が悪いんだろう、どうでもいい。今回も無意味だった。何が救うだ、俺は救いなんていらない。俺はもうずっと前から何も欲しがってなんかない、…」
途中から自分が何を話したのか誰が何を話したのか、どうでも良くなった。あの時俺は取り返しのつかないことをしたと自覚したからだ。死んだ命は生き返らない。もうずっと前から手遅れだったんだ。償うべきだ、この命で。
人を殺す悪鬼の頸は鬼殺隊が責任を持って斬らないと。
△
兄貴に俺の声は届かなかった。それだけのことで、炭治郎は何にも悪くない。兄貴って意外と頑固だから、言っても聞かなかったんだってことすぐ想像できるし。俺もよくいらないって突き放されたっけな。でもたまに貰ってくれてさ、気まぐれなんだろうけど嬉しかったんだよね。
兄貴は俺の死にかけの時には、いつも兄貴ぶるんだよ。雷に打たれた時はもう別人ってくらい甲斐甲斐しかったよ。雷に打たれたの実は兄貴だったのって位。面白がってる音に隠れて優しい音が聞こえるんだ。兄貴の優しい音はいつだってごちゃごちゃした音に隠れてた。俺がもっと兄貴と話してたら、仲良くできてたら変わってたかな。兄貴があんな風にならずに済んだんじゃないのかな。
兄貴は俺の前じゃ最後までいい兄貴だったよ。炭治郎も禰豆子ちゃんも助けちゃうなんてすごすぎだよ。俺も行きたかった、炭治郎と行きたかったよ。兄貴に護るって言ったのに、一緒に戦おうって言ったのに。
俺は兄貴の言う通りの役立たずのカスだ。