プロローグ一覧
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
◆自己嫌悪する悲鳴嶼姉の独白
※設定
▷鬼滅の刃の世界を基に作られた仮想世界
▷自分を既存のキャラクターに入れてそのキャラクターの視点で遊んだり、自作のキャラクターを仮想世界に入れてその視点で遊ぶことができる。
▷既存、自作共に知識、出自、能力、性格、終了条件を自由に決められる。それでチートしたり救済したり結婚したり地獄を作ったりする。
(例)知識は衝撃でランダムに解放。出自は獪岳本人。能力は獪岳、条件付きの強くてニューゲーム。性格は元のまま。終了条件は獪岳を理解する。
以上の設定があります。
◆悲鳴嶼行冥の姉は、自分を地獄行きだと疑わない者だった。
私は生まれつきあらゆるものを嫌悪していた。
私は盲目で生まれた弟を心から嫌悪した。生きてることがこんなにも惨めで憐れなのかと心が悲鳴をあげたからだ。そんな感情を抱く自分の傲慢さを嫌った。
身内の自分がこうなんだ。他人はもっと嫌悪を抱くだろう。弟だって盲目の自身を嫌うだろう。そう思っていたのに弟は神のように穏やかで人が良すぎた。優しさを惜しみなく周りに振りまき、なにより弟は盲目を障害と感じていなかった。神や仏がどうとかご高説を受け入れ信仰し馬鹿馬鹿しい程に優しくあり続けた。優しすぎる者も嫌われ者もこの世じゃ長く生きられないのに。一人寺に送られる小さな弟の背に、嫌悪でいっぱいだった心が悲鳴をあげた。その日の夜に香炉を手に家を捨てた。弟を寺に厄介払いした残りの身内なんてもうどうでも良い、身内を大切に出来ないものなんて、大嫌いだ。
身内に同情する自分を嫌い、普通の姉として振る舞えない自分を嫌い。際限なく嘘をつく自分を嫌い、こんな性格に生まれてしまった自分を嫌った。弟は神や仏を信じているようだが、そんなもの信じて救われるなら、お前は盲目になど生まれてなかっただろうに。私はもっとまともな姉に生まれることができただろうに。神も仏もこの世も弟もみんな嫌いだ、なにより自分が嫌いだ。
あらゆるものを嫌悪し苦汁を飲んでも私は生き続けて嘘を吐き続けた。これは因果応報だと自己責任だと。表に出したり伝わらなければ、それは無いものと同じだ。私の中の嫌悪は決して口外しなかった。どれだけ嫌悪が蓄積されても耐え続けるんだ。例えハリボテでもいいから。私は自分が嫌悪でいっぱいの醜い生き物だとわかっている。でも私は盲目の弟より選択肢に恵まれている。弟には見えない世界が見えているんだ。唯一の姉がこんな醜い生き物だなんて、そんなものに憐れまれるなんて、弟が可哀想だ。何も見えていないはずなのに、簡単に信じてしまう弟が大嫌いだ。見えているのに嫌悪することしかできない私はもっと。
いつだって自分の行動原理は尽きることのない自己嫌悪だ。
◆
寺で過ごして数年したある日、弟が子供を拾ってきた。弟よりみすぼらしくて貧相で憐れな汚い子供だ。綺麗にして食事を与えると多少マシになったがギラギラした目を止めることはなかった。留まるならこの家での規則に従ってもらう。
まず一人で生きていくために必要なことを時間が許す限り叩き込んでいく。すると指示通り弟の相手も寺のこともできる、素直で手のかからない賢い子供だった。自分にできることを貪欲に求め、成長していく姿に身の丈に合わない努力を感じゾッとした。早く一人で生きられるようになってくれと、存在しない神に祈るようになった。だからきっとこれは都合のいい時だけ神を頼った罰だ。ある日弟がこの子を家族だと言い放った。こんなに生きることに真剣なこの子に嘘なんて吐きたくなかった。嫌悪で口を塞いでこの子を騙せるように笑顔を作って見せた。涙を流す姿を見て、もう二度と神に祈らないと誓った。
この子の努力を無駄にはさせたくない。もっと広い視野を持ってと、この子に言うようになったのは弟が二人目の子供を連れてきてからだ。二人目が来てから三人四人と増えるのはあっという間で。優しい弟だけなら、この寺は腹を空かせた子供で溢れてしまっただろう。最初の子供がいなければ私も子供の面倒を見きれない。本当に情けなくて不甲斐ない。自分の立ち回りの悪さにうんざりする。弟は盲目なのに子供たちをよく理解していた。家族に捨てられ愛情に飢えた子供は私の本性なんてとっくに見破っているんだろう。盲目の弟を憐れみ無邪気に群がる様子に嫌悪した。最初の素直な子供だけは嗜めるようにして子供を散らしていく。
子供達のすることに干渉しすぎては駄目だと、私は今更誰目線で物を考えてるんだ。もっと善い方法を選べるはずなのに何も出来ずにいる自分が本当に嫌になる。
子供の数が九人になり数ヶ月。仕事を終えて寺に着くと、いつも私の元へ駆けつけてくる最初の子供の姿が見当たらない。あの子は先に寝たのだと弟が言った。その弟の証言は信頼された子供達からだろう。弟に纏わりつく彼らは私には直接言いたくないらしい。もう日が暮れるから先に香を焚きに行けと弟に指示をして、逃げ遅れた子供を捕まえる。言い訳があるなら話してくれるかと問えば、あの子が盗っ人だったんだと綺麗な目で訴えてきた。悪いことをしたから追い出したと胸を張って答えた。
人が最も残酷になる時は正義を振りかざす時だ。
何故かそんな言葉をふと思い出した。
少しの間違いでも正さなければこの寺は維持できないと、その程度の環境だと思われていたのか。今の私は、子供達からも憐れまれる存在になっていたのか。情けない不甲斐ない。私が弟のように信頼される大人だったらこんなことにはならなかった。
気がつけば私は寺から外に引き返していた。私を真っ直ぐに見つめるあの子の目は嫌いでたまらなかったのに、捜しに行くのかと他人事のように受け止めていた。あらゆるものが嫌いでも生きていたのは、一人残されることになる盲目の弟が憐れで仕方なかったからだ。でも、弟には子供達がいる。大切な方を選び要らないものを切り捨てる行動力のある、子供達だ。
辺りの暗さに捜す速度を上げていた。夜に出歩くのは、寺に送られる弟の元へ行く時以来だ。家から追い出された弟に、寺から追い出されたあの子を私は重ねているんだろうか。藤の花の香炉を持ち歩かない分、あの時よりも心臓が嫌な音を立てる。風の音も暗闇も嫌で嫌でたまらない。私はあの夜、鬼が伝承ではないことを知っている。知っているけど、誰にも伝えていない。どんな時も私は自分を否定し続けていたいんだ。
◆
黒い頭と黒い服は暗闇では分かりにくいが、首に着いた勾玉が月明かりに反射してよく見えるんだ。安堵と恐怖が同時に現れた。ギラギラとした牙と爪が彼の背後から反射して見えたからだ。
あ、無理だ。死ぬ。
私と対面してもこの子が生きているのは、この子と鬼に何かあったからだろう。会話が出来ることも重なり、ずっと否定していた鬼の存在を素直に受け入れられた。明日が全く見えない酷い巡り合わせだというのに、私の死に場所はここだったのかと不思議な安堵に満たされた。
その瞬間、自分でも不思議なくらい身体が思うように動いた。この子と鬼の間に入り、跳びつく。埃を払うように簡単に突き飛ばされるが関係ない。
うまく声が出せているだろうか。腹から叫べばこの子はこの場から離れてくれるだろうか。
視界も四肢も違和感が激しいのに、頭がガンガンして気持ち悪いことしか感じ取れない。最悪だ、私は一体何がしたかったんだ。生まれた時から嫌悪ばかりで、本当にばかだ。ばかばかしい人生だった。血も出るが声が出ることを確認して、小さい頃から積もっていたこの世への嫌悪を初めて叫んだ。一人で喚き続けることが、無意味でも。みんな鬼に殺されるかもしれないけれど。私はここで一人で死ぬんだから、もういいだろ。この嫌悪ばかりのばかを放っておいてくれ。
◆誰おまオマケ
「寺に行け!!!日の出まで、藤の、香炉の元に!!生きろ」
獪岳と、名前を呼ばれた気がした。意味がわからない、転げながら走った。姉ちゃん、なんで。俺じゃなくて鬼の方を選ぶんだ。アンタが俺に手を伸ばしてくれたら、俺たちだけは生きられたのに。鬼の言う事を聞くなんて、間違ってるからか?違う、俺は間違ってない。せっかく上手くやれたのに。姉ちゃんと一緒に生きられるかもしれないって思ってたんだよ。鬼からも寺からも逃げて。
だってあの金は姉ちゃんのじゃないか。殆ど、姉ちゃんじゃないか。なんで頑張ってる姉ちゃんばっかり見を削らなきゃいけないんだ。死んだって良かったのに。あいつらと俺は違うのに。ずっと姉ちゃんに尽くしてたのに。なんで、俺を選んでくんなかったんだよ。姉ちゃんも他の奴らと同じように、俺を見捨てんのかよ。ごちゃごちゃした気持ちのまま、寺にとびこむ。いつも通りのみんなの様子をみて、抑えていた感情が爆発した。
「にいちゃんっ!!行冥兄ちゃん!!!姉ちゃん、姉ちゃんが死んじゃう!!助けて!助けてください、お願いします、兄ちゃん」
「獪岳?どうして、何があったんだ!」
認められない。嫌だ、嫌だ姉ちゃんが死んじゃうのは耐えられない。誰か、なんでもいいから助けて。姉ちゃんを助けてよ。そんな気持ちが抑えられない。
行冥兄ちゃんが真っ先に俺に気付いて、集まってきた奴らに金を盗んだ事を責められた。姉ちゃんが、生きられるならこの際なんでもいい。助けてくれよ。俺と奴らと違って行冥兄ちゃんは本当の家族で、俺が一番欲しかった特別なんだから。行冥兄ちゃん、行冥兄ちゃんおねがいします。俺を撫でるその温かくて大きな手で
どうか、姉ちゃんの命をお救いください。
どうして俺はグズグズとみっともなく泣き縋ってんだ。誰にも見つからず静かに香炉を持ち去れば、俺だけは鬼から逃げられたのに。今更姉ちゃんのこと気にして。ここにいる時点でもう遅いのに。だって、どうして鬼が追いついてこないんだ?分かるだろ。ほら、寺の外からおぞましい声がする。
◆やりたかったこと
寺に送られる子、寺に送られる子を追いかける子、勝手な憐れみと嫉妬、藤の花の香炉と鬼の伝承、自滅、獪岳に生きろと叫ぶ、寺事件キャンセル
(例)知識は死に際に解放。出自は悲鳴嶼行冥の姉。能力は平均値、器用貧乏。性格は全方面への嫌悪。終了条件は自分の死。
主人公は極楽にも地獄にも行かず、現実に帰るのでした。めでたしめでたし。主人公が死んでから、あの世界に先は無く、そのまま世界は終了します。祈りも絶望もない。オマケはもし世界が終わってなかったらというもしもです。
※設定
▷鬼滅の刃の世界を基に作られた仮想世界
▷自分を既存のキャラクターに入れてそのキャラクターの視点で遊んだり、自作のキャラクターを仮想世界に入れてその視点で遊ぶことができる。
▷既存、自作共に知識、出自、能力、性格、終了条件を自由に決められる。それでチートしたり救済したり結婚したり地獄を作ったりする。
(例)知識は衝撃でランダムに解放。出自は獪岳本人。能力は獪岳、条件付きの強くてニューゲーム。性格は元のまま。終了条件は獪岳を理解する。
以上の設定があります。
◆悲鳴嶼行冥の姉は、自分を地獄行きだと疑わない者だった。
私は生まれつきあらゆるものを嫌悪していた。
私は盲目で生まれた弟を心から嫌悪した。生きてることがこんなにも惨めで憐れなのかと心が悲鳴をあげたからだ。そんな感情を抱く自分の傲慢さを嫌った。
身内の自分がこうなんだ。他人はもっと嫌悪を抱くだろう。弟だって盲目の自身を嫌うだろう。そう思っていたのに弟は神のように穏やかで人が良すぎた。優しさを惜しみなく周りに振りまき、なにより弟は盲目を障害と感じていなかった。神や仏がどうとかご高説を受け入れ信仰し馬鹿馬鹿しい程に優しくあり続けた。優しすぎる者も嫌われ者もこの世じゃ長く生きられないのに。一人寺に送られる小さな弟の背に、嫌悪でいっぱいだった心が悲鳴をあげた。その日の夜に香炉を手に家を捨てた。弟を寺に厄介払いした残りの身内なんてもうどうでも良い、身内を大切に出来ないものなんて、大嫌いだ。
身内に同情する自分を嫌い、普通の姉として振る舞えない自分を嫌い。際限なく嘘をつく自分を嫌い、こんな性格に生まれてしまった自分を嫌った。弟は神や仏を信じているようだが、そんなもの信じて救われるなら、お前は盲目になど生まれてなかっただろうに。私はもっとまともな姉に生まれることができただろうに。神も仏もこの世も弟もみんな嫌いだ、なにより自分が嫌いだ。
あらゆるものを嫌悪し苦汁を飲んでも私は生き続けて嘘を吐き続けた。これは因果応報だと自己責任だと。表に出したり伝わらなければ、それは無いものと同じだ。私の中の嫌悪は決して口外しなかった。どれだけ嫌悪が蓄積されても耐え続けるんだ。例えハリボテでもいいから。私は自分が嫌悪でいっぱいの醜い生き物だとわかっている。でも私は盲目の弟より選択肢に恵まれている。弟には見えない世界が見えているんだ。唯一の姉がこんな醜い生き物だなんて、そんなものに憐れまれるなんて、弟が可哀想だ。何も見えていないはずなのに、簡単に信じてしまう弟が大嫌いだ。見えているのに嫌悪することしかできない私はもっと。
いつだって自分の行動原理は尽きることのない自己嫌悪だ。
◆
寺で過ごして数年したある日、弟が子供を拾ってきた。弟よりみすぼらしくて貧相で憐れな汚い子供だ。綺麗にして食事を与えると多少マシになったがギラギラした目を止めることはなかった。留まるならこの家での規則に従ってもらう。
まず一人で生きていくために必要なことを時間が許す限り叩き込んでいく。すると指示通り弟の相手も寺のこともできる、素直で手のかからない賢い子供だった。自分にできることを貪欲に求め、成長していく姿に身の丈に合わない努力を感じゾッとした。早く一人で生きられるようになってくれと、存在しない神に祈るようになった。だからきっとこれは都合のいい時だけ神を頼った罰だ。ある日弟がこの子を家族だと言い放った。こんなに生きることに真剣なこの子に嘘なんて吐きたくなかった。嫌悪で口を塞いでこの子を騙せるように笑顔を作って見せた。涙を流す姿を見て、もう二度と神に祈らないと誓った。
この子の努力を無駄にはさせたくない。もっと広い視野を持ってと、この子に言うようになったのは弟が二人目の子供を連れてきてからだ。二人目が来てから三人四人と増えるのはあっという間で。優しい弟だけなら、この寺は腹を空かせた子供で溢れてしまっただろう。最初の子供がいなければ私も子供の面倒を見きれない。本当に情けなくて不甲斐ない。自分の立ち回りの悪さにうんざりする。弟は盲目なのに子供たちをよく理解していた。家族に捨てられ愛情に飢えた子供は私の本性なんてとっくに見破っているんだろう。盲目の弟を憐れみ無邪気に群がる様子に嫌悪した。最初の素直な子供だけは嗜めるようにして子供を散らしていく。
子供達のすることに干渉しすぎては駄目だと、私は今更誰目線で物を考えてるんだ。もっと善い方法を選べるはずなのに何も出来ずにいる自分が本当に嫌になる。
子供の数が九人になり数ヶ月。仕事を終えて寺に着くと、いつも私の元へ駆けつけてくる最初の子供の姿が見当たらない。あの子は先に寝たのだと弟が言った。その弟の証言は信頼された子供達からだろう。弟に纏わりつく彼らは私には直接言いたくないらしい。もう日が暮れるから先に香を焚きに行けと弟に指示をして、逃げ遅れた子供を捕まえる。言い訳があるなら話してくれるかと問えば、あの子が盗っ人だったんだと綺麗な目で訴えてきた。悪いことをしたから追い出したと胸を張って答えた。
人が最も残酷になる時は正義を振りかざす時だ。
何故かそんな言葉をふと思い出した。
少しの間違いでも正さなければこの寺は維持できないと、その程度の環境だと思われていたのか。今の私は、子供達からも憐れまれる存在になっていたのか。情けない不甲斐ない。私が弟のように信頼される大人だったらこんなことにはならなかった。
気がつけば私は寺から外に引き返していた。私を真っ直ぐに見つめるあの子の目は嫌いでたまらなかったのに、捜しに行くのかと他人事のように受け止めていた。あらゆるものが嫌いでも生きていたのは、一人残されることになる盲目の弟が憐れで仕方なかったからだ。でも、弟には子供達がいる。大切な方を選び要らないものを切り捨てる行動力のある、子供達だ。
辺りの暗さに捜す速度を上げていた。夜に出歩くのは、寺に送られる弟の元へ行く時以来だ。家から追い出された弟に、寺から追い出されたあの子を私は重ねているんだろうか。藤の花の香炉を持ち歩かない分、あの時よりも心臓が嫌な音を立てる。風の音も暗闇も嫌で嫌でたまらない。私はあの夜、鬼が伝承ではないことを知っている。知っているけど、誰にも伝えていない。どんな時も私は自分を否定し続けていたいんだ。
◆
黒い頭と黒い服は暗闇では分かりにくいが、首に着いた勾玉が月明かりに反射してよく見えるんだ。安堵と恐怖が同時に現れた。ギラギラとした牙と爪が彼の背後から反射して見えたからだ。
あ、無理だ。死ぬ。
私と対面してもこの子が生きているのは、この子と鬼に何かあったからだろう。会話が出来ることも重なり、ずっと否定していた鬼の存在を素直に受け入れられた。明日が全く見えない酷い巡り合わせだというのに、私の死に場所はここだったのかと不思議な安堵に満たされた。
その瞬間、自分でも不思議なくらい身体が思うように動いた。この子と鬼の間に入り、跳びつく。埃を払うように簡単に突き飛ばされるが関係ない。
うまく声が出せているだろうか。腹から叫べばこの子はこの場から離れてくれるだろうか。
視界も四肢も違和感が激しいのに、頭がガンガンして気持ち悪いことしか感じ取れない。最悪だ、私は一体何がしたかったんだ。生まれた時から嫌悪ばかりで、本当にばかだ。ばかばかしい人生だった。血も出るが声が出ることを確認して、小さい頃から積もっていたこの世への嫌悪を初めて叫んだ。一人で喚き続けることが、無意味でも。みんな鬼に殺されるかもしれないけれど。私はここで一人で死ぬんだから、もういいだろ。この嫌悪ばかりのばかを放っておいてくれ。
◆誰おまオマケ
「寺に行け!!!日の出まで、藤の、香炉の元に!!生きろ」
獪岳と、名前を呼ばれた気がした。意味がわからない、転げながら走った。姉ちゃん、なんで。俺じゃなくて鬼の方を選ぶんだ。アンタが俺に手を伸ばしてくれたら、俺たちだけは生きられたのに。鬼の言う事を聞くなんて、間違ってるからか?違う、俺は間違ってない。せっかく上手くやれたのに。姉ちゃんと一緒に生きられるかもしれないって思ってたんだよ。鬼からも寺からも逃げて。
だってあの金は姉ちゃんのじゃないか。殆ど、姉ちゃんじゃないか。なんで頑張ってる姉ちゃんばっかり見を削らなきゃいけないんだ。死んだって良かったのに。あいつらと俺は違うのに。ずっと姉ちゃんに尽くしてたのに。なんで、俺を選んでくんなかったんだよ。姉ちゃんも他の奴らと同じように、俺を見捨てんのかよ。ごちゃごちゃした気持ちのまま、寺にとびこむ。いつも通りのみんなの様子をみて、抑えていた感情が爆発した。
「にいちゃんっ!!行冥兄ちゃん!!!姉ちゃん、姉ちゃんが死んじゃう!!助けて!助けてください、お願いします、兄ちゃん」
「獪岳?どうして、何があったんだ!」
認められない。嫌だ、嫌だ姉ちゃんが死んじゃうのは耐えられない。誰か、なんでもいいから助けて。姉ちゃんを助けてよ。そんな気持ちが抑えられない。
行冥兄ちゃんが真っ先に俺に気付いて、集まってきた奴らに金を盗んだ事を責められた。姉ちゃんが、生きられるならこの際なんでもいい。助けてくれよ。俺と奴らと違って行冥兄ちゃんは本当の家族で、俺が一番欲しかった特別なんだから。行冥兄ちゃん、行冥兄ちゃんおねがいします。俺を撫でるその温かくて大きな手で
どうか、姉ちゃんの命をお救いください。
どうして俺はグズグズとみっともなく泣き縋ってんだ。誰にも見つからず静かに香炉を持ち去れば、俺だけは鬼から逃げられたのに。今更姉ちゃんのこと気にして。ここにいる時点でもう遅いのに。だって、どうして鬼が追いついてこないんだ?分かるだろ。ほら、寺の外からおぞましい声がする。
◆やりたかったこと
寺に送られる子、寺に送られる子を追いかける子、勝手な憐れみと嫉妬、藤の花の香炉と鬼の伝承、自滅、獪岳に生きろと叫ぶ、寺事件キャンセル
(例)知識は死に際に解放。出自は悲鳴嶼行冥の姉。能力は平均値、器用貧乏。性格は全方面への嫌悪。終了条件は自分の死。
主人公は極楽にも地獄にも行かず、現実に帰るのでした。めでたしめでたし。主人公が死んでから、あの世界に先は無く、そのまま世界は終了します。祈りも絶望もない。オマケはもし世界が終わってなかったらというもしもです。
7/7ページ