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西流魂街にある、誰が見ても誰が住んでいるのか一発でわかるド派手な建物。
両手のオブジェは親指と人差し指で"志波空鶴"と描かれた横断幕を持ち、残りの三本の指は重ならないように広げられている。まるでオネエが小さなものを持った時のような両手のオブジェの後ろには大きな大砲。ーーー流魂街の花火師、志波空鶴邸である。
リサはYDM書籍販売という現世の書籍を死神に販売する商売をしている。その拠点がここ、志波空鶴邸である。
檜佐木は噂には聞いていたがここまでだと思わなかったド派手な外観に、呆気に取られて見上げることしか出来なかった。一体何がどうなってこうなったのであろうか。
「なんや、拳西んとこのやないの。」
そんな檜佐木に、タイミングよくリサが空鶴邸から出てきた。その手にはこれから届けるのであろう、包装紙に包まれた書籍。それが何の本なのかはリサしか知らない。
「空鶴に用事か?」
「いえ、矢胴丸さんに....」
「なんや。」
檜佐木はここで取材を始めるのはどうかと思いながら、今日ここに来た用件を伝える。
「自分は瀞霊廷通信の編集長をやらせていただいていまして、次号に平子隊長と涼森隊長のことを掲載したいと思っています。久南副隊長より、矢胴丸さんが涼森隊長と仲が良いとのことでしたので取材をさせていただきたく思い、伺いました。」
「....」
リサは何も言わない。眼鏡越しの切れ長な目が檜佐木を値踏みするように上から下まで撫でた。
「ええよ、別に。やけど、本人に聞けばええやないか。」
「平子隊長は大丈夫だったのですが、涼森隊長に断られてしまいまして....」
「美桜は押せばいけるで。呼んだるわ。」
「え?えぇ!?」
そう言って伝令神機を取り出し、どこかに電話をかけ始めたリサに、檜佐木は止めようと手を伸ばしたが、その手がリサに届く前に相手が電話に出てしまった。
「ウチや。今日四人で飲まへんか?....真子も呼びぃ。拳西にはウチから声かけとくわ。....ほなな。」
リサは通話が終了して黒くなった伝令神機から顔をあげると、用件だけ短く言った。
「今日十八時から虎船屋や。」
「え、僕も参加して大丈夫でしょうか?」
「ええよ。たっぷりネタぶん取り。あたしもこの前真子盗撮して無断で写真集にしたわ。」
「ッ!?あれ盗撮だったんですか!?」
写真集というのは、先日発売された真子、拳西、ローズの三人の写真集である。発売後すぐ噂になったため、その存在は檜佐木も知っていた。しかし、それがまさか盗撮だとは思っていなかったようだ。
「真子だけやない。拳西もローズも盗撮や。」
隊長三人の姿(仕事してるものならまだしも、露出しているものまであった)を盗撮し、それを無断で写真集にして出版する。そんなことできるのは百余年という長い月日を共に過ごした仲間であるが故だろう。
檜佐木は、なぜか大船に乗ったような気分だった。
+ + +
「で、なんで修兵もいるんだ?」
ところ変わって十八時過ぎの虎船屋。真央霊術院同期の四人に加えて、なぜかいる檜佐木。拳西が檜佐木を連れて来た犯人に理由を聞く。
「あたしが呼んだ。真子と美桜の取材したい言うて来たんや。協力してやり。本当は拳西がやる仕事やろ。」
「昼間桃が言っとったなぁ。俺は別にええんやけど。」
「えぇ〜だって瀞霊廷通信ってみんなに配られるじゃない。恥ずかしいもの。」
「普段手ェ繋いで瀞霊廷闊歩しとるくせして何言うとんや。説得力ないで。」
「うぅぅ....」
図星で何も言えずテーブルに沈没した美桜に、檜佐木は慌てたように言った。
「いや、あの!嫌なら取材も特集もしないので!」
「修兵、大丈夫だ。酒飲ませれば喋り出す。」
「酒飲まんくても一緒に居ればわかるで。」
「え、あ、はい....」
檜佐木が、酒に酔って判断力が鈍くなった状態で取材をすることの正当性を考えている間に、注文していた料理と酒が届いた。
一度取材のことは頭の隅に追いやって、とりあえず腹を満たすとしよう。そう思ったのは檜佐木だけではなかったらしい。
「「「「「かんぱーい!」」」」」
軽快な音を立ててグラスがぶつかり合う。一口だけにとどめて喉を潤す者もいれば、ゴクゴクと喉を鳴らして半分ほど飲む者もいる。
美桜は早速並べられた料理に箸を伸ばした。
「あ、真子の好きなやつ」
そう言って自分の皿でも口でもなく、真子の皿にだし巻き卵を二切れ置いた。
「おおきにな。美桜、唐揚げあるで」
今度は真子が美桜の好きな唐揚げを二つ、美桜の皿に置いた。
「わーい、ありがと!」
この時点で檜佐木の頭に疑問符が浮かぶ。リサと拳西の方を伺えば、さも当然のように受け入れていた。それと同時に、リサの言っていたことをなんとなく察してしまった。
つまり、この二人は別にイチャイチャしようとか、そんなことは思っていないのだ。ありのままの状態でこれなのだ。そのことに気付いたとき、檜佐木はこの時間を乗り切れるか心配になった。独り身には中々くるものがある。
「....そろそろええか。」
しばらく経ってから、リサが隣に座る美桜を見て呟いた。その呟きに真子と拳西も美桜を見る。
ザルな三人とは違い、美桜はそこまで酒に強いわけではない。その証拠に美桜の顔は赤く、目も潤み、先程から手元もあやしい。まさに酔っ払いのそれだ。
「修兵、いいぞ。今なら何でも答える。」
「え、えぇ!?」
拳西に促された檜佐木は、戸惑いながらも脳内にメモしていた質問事項を思い出した。
「えっと....お二人はいつ頃出会ったんですか?」
「霊術院時代だからー、二百年前くらい?」
「二百三十年前やない?」
「二百三十六や。」
「ふふ、それくらい!」
美桜は当時を思い起こすように上を見ながら口を開いた。
「最初はねー、真子の後ろ姿見て女の子だと思ったの。」
「その話すんのか?」
「あれは最高やった」
「でも同じクラスになって男の子だってわかって〜」
「....おい、一人で喋り続けてるぞ。リサ、お前が飲ませたんだから面倒見ろよ。」
「真子、任せるで。」
「一緒に修行とかしてるうちに、気になり始めて。細いのに筋肉の付いてる腕とか、意外と大きな手とか、私をジッと見つめてくる眼差しとか。私のこといつも護ってくれるところとか。」
「....」
「あ、真子照れとる」
酔っている美桜はいつもより遠慮がない。美桜は机に肘をつくと、組んだ両手に顎を乗せた。その瞳は目の前に座る真子だけを向けられており、真子のことが好きで仕方がないと顔に書いてある。
そんな眼差しを真正面から向けられれば当然照れるわけで。真子は勝手に緩む頬を隠すために左手で頬から下を覆った。
「本当に、好き。」
「俺もや、美桜。好きやで。」
二人の間だけ花が飛んでいると錯覚するほど、甘い空気が包んでいる。
それこそ二百年以上の付き合いのあるリサと拳西には慣れたものだが、初心者の檜佐木はどうしていいかわからなかった。
「....えっと、これはどう収集をつければ....?」
「喋らせとけ。それが一番いい。」
檜佐木は塩気のあるフライドポテトが恋しくなった。
+ + +
今月の瀞霊廷通信は〜....皆さまのご要望にお応えして!!五番隊隊長平子真子と七番隊隊長涼森 美桜の関係について、迫っていきたいと思いますっ!!!
いやぁ、本当に特集を組んでほしいという声が多くてですね!やはり皆さん他人の恋愛は気になって仕方ないですよねぇ〜!
以前も特集を組ませていただきましたが、改めておさらいいたしましょう!
五番隊隊長平子真子!約百年前まで同隊隊長を務めていた平子隊長は、藍染によって尸魂界から追われる存在に。百年にわたり仮面の軍勢のリーダーとして、藍染に立ち向かうために力を蓄え、昨年五番隊隊長に復帰!
独特の方言と持ち前の明るさで百年のブランクを感じさせることなく、あっという間に馴染んでいきましたね!!
っとまぁ、こんな感じですね!現在は髪を顎の辺りで切り揃えていますが、百年前は腰ほどまであったという情報が入っております!本当でしょうか?
ーーーほんまや。
ちなみになぜバッサリといかれたのでしょうか?
ーーー現世の洋服には短い方が似合うんや。
なるほど!....実はKさんからですね、その髪は涼森隊長に切っていただいたという情報が入っているのですが、本当でしょうか?
ーーーあいつなに言っとんねん。まぁ、本当やで。思ったより短く切られたけどなぁ、気に入っとる。
ーーー別に失敗したわけじゃないですからね?狙ったんです!!
なぜか涼森隊長が必死ですが、平子隊長が気に入っていらっしゃるなら大丈夫でしょう!
Lさんに平子隊長の性格を伺いました。"飄々とした態度で決して自分の中には入らせないが、一度中に入れた人に対してはものすごく仲間想いで世話焼き。周りをよく見ており、その人に合った対応をしてくる。まさに尸魂界の精神科医。"
ーーーぶっ!なんやねん、そのダッサイ肩書き!もっとええのあったやろ!!....やけど世話焼きなんかなぁ。周りから見てそうならそうなんちゃうか?
ーーー世話焼きだよ〜。喜助さんが隊長になった時とかすごい気にしてたもんね。
ーーーあれはまぁ、ひよ里居ったし?あいつむっちゃ荒れとったし?
喜助さんというのは、浦原喜助のことでしょうか?
ーーーせやで。あいつ今でこそしゃんとしとるけど、最初はひょろひょろのゆっるゆるやったからなぁ。
そうなんですか??我々の中ではとんでもなくすごい人というイメージなので、ひょろひょろのゆるゆるな浦原喜助殿というのは気になりますね!!
浦原喜助殿については今後特集を組んでみても面白いかもしれませんね!
お、こちらは涼森隊長からですね。"気持ちをちゃんと言葉にしてくれるところが大好き。ありがとうとか好きとか、思っていても口にするのって難しいと思います。でもそれをちゃんと言葉にしてくれて、大切にしてくれます。"....いやぁ、ラブラブですね!連れ添って何年ほどですか?
ーーー百八十年や。
長い!!!!すごいですね!?そんな長い時間一緒にいて、あんなラブラブなんですか!?お恥ずかしい話、私の生きている時間より長い時間一緒にいるんですね。是非ともその秘訣を教えていただきたいですね!長い時間一緒にいれば喧嘩することもあると思うのですが、どうでしょうか?
ーーーそりゃあ喧嘩するわ。やけど、どっちも折れるの早いねん。この前口で喧嘩せんで文字で喧嘩したで。
文字で喧嘩!?それは一体どういう....。
ーーー口で言ったら言い合いになる思てな。文字書いたら心も落ち着いたし、おすすめや。
なるほど。口だと感情が乗りすぎてしまいますからね。先程涼森隊長から"気持ちを言葉にしてくれる"とありましたが、この言葉というのは口から出す言葉でもあり、文字にする言葉でもあるということですね。....いやぁ、深いですね!愛が!!!!
続いて涼森隊長ですね!
七番隊隊長涼森 美桜!約九十年前に七番隊隊長に就任。それまでの七番隊の在り方を大きく変え、前線に出ない四番隊の代わりに負傷者を治療しながら四番隊へ搬送するという重要な役割を果たしています!僕も何度もお世話になりました!
分け隔てない態度でありながらも時折覗くお茶目な一面に胸を打たれた人も多いはず!!
なぜ七番隊を今のような形にしたのでしょうか?
ーーーずっと思っていたんです。四番隊は前線に出ることが出来ないから救護詰所に運ばれてくるまで治療することが出来ない。そこまでに失われる命がたくさんあるはず。だから、たとえ少数になってもある程度戦えて回道を使える人材がいれば、もっと生存率が上がるんじゃないかって。
なるほどですね。
ーーー綺麗事を言っていますが、きっかけは "真子のことが心配で仕方なかったから" なんですけどね!大切な人が無事に帰ってきて欲しいって思うのは当たり前なことだと思うんです。だから私はそのお手伝いになれば良いなって。
ここでも感じる愛!!!おっと、平子隊長の顔が赤い気がしますが....!?
ーーーこっち見んなボケェ。
平子隊長は照れております。....改めて思えば惚気以外のなにものでもないですね!!大切な人のために七番隊を変える。とんでもない愛です!!
では最後になりますが、お互いの好きなところをお願いします!!
ーーーこれ瀞霊廷中に配られるんやろ?なんで美桜の好きなところを他のやつに教えなあかんねん。全部や、全部!!
ーーーこの前リサに勝手に写真集出版されてファンが増えている気がしますので、私も言いません!!私だけが知ってればいいので!
ーーーさっき言うとったやん....
ーーーもう一回言って欲しいの?....真子、大好きだよ。何百年、何千年経ってもずっと一緒に居ようね。
ーーー当たり前や。嫌言うても絶対離さん。
まだ続きそうなのでここで切らせていただきますねー!ありがとうございましたー!!