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現世の浦原商店。その一室でちゃぶ台を囲む人影が四つ。
「で、お二人揃って仕事を放り出してアタシの所にやってきた、と....」
「せや。」
「平子サンはともかく、涼森サンまでとは恐れ入りましたァ!」
喜助は扇子をバッと開いて真子と美桜を茶化す。
真子はそんな喜助を無視して、胡座をかいた足に肘をついた。その眼は真剣そのものだ。
「で、何か知っとるか。」
喜助は隣に座る夜一とチラリと目を合わせると、少し息を吐いてから真子の質問に答えた。
「....まぁ、何も知らないといえば嘘になるッス。今のお話で確信に変わったってとこッスね。」
そう言うと喜助はどこからか機械を取り出し、操作し始めた。
「これを見てください。」
そう言われて見せられた画面には何かの折れ線グラフ。専門的な知識のない真子と美桜にはさっぱりだったが、それでも不安定ながらも横ばいだった線が、ある地点から急に跳ね上がっているのがわかった。
「これは何の数値を表したものですか?」
「霊子じゃ。」
「霊子?」
胡座をかいて腕を組み、目を瞑ったままの夜一が答えた。
「そうじゃ。一ヶ月前から急に霊子の動きが活発になったんじゃ。」
「一ヶ月前....一護か?」
「その時期と被るな。これを無関係だと考える者はここにはおらぬじゃろ?」
一護に死神の力が戻ったのと同時に活発になる霊子の動き。どう考えても無関係ではなさそうだ。
霊子。それは現世以外の、尸魂界と虚圏の全てを構成する物質。その扱いに最も長けているのは、尸魂界にいる死神でも、虚圏にいる破面でもない。
「ってことで。恐らく、次の敵さんは滅却師ッス。」
「「「....」」」
断定する喜助の声に、場を沈黙が支配した。
「滅却師って絶滅したんとちゃうんか?まぁ、一護の仲間にいる時点で絶滅しとらんか。」
「滅却師っていっても彼らは人間だ。人間の中に紛れ込んで生き延びることなどいくらでも出来るでしょう。」
「二百年前の復讐、か....」
二百年前、死神による滅却師討伐作戦が行われた。当時美桜たちは死神になってすぐのことだったが、その時のことはよく覚えている。
隊長格をはじめとした上位席官が出陣し、滅却師を一方的に蹂躙したのだ。それにより元々溝があった死神と滅却師の間にもう埋めることも、橋を架けることもできない深い谷が出来てしまった。
死神の半分近くに纏わりつく"死"。一方的に蹂躙される未来。一般隊士が大量に殉職するということは、空座町での決戦のように隊長格が闘いに出るのではない。相手が尸魂界にやってくるのだ。
「でも、どうやって....?」
「? 何がや。」
「少なくても今回の闘いは、一般隊士の犠牲者が多そうだから、藍染のときみたいに隊長格だけが前に出るわけじゃなさそう。ということは、滅却師が尸魂界に乗り込んでくるってことでしょう?」
「....確かになぁ。あっちにもマユリみたいのがおるんやないか?」
あちらにもそれなりの科学者がいるのだろう。顔中を黒と白に塗りつぶしている尸魂界のマッドサイエンティストほど狂っているかは知らないが、滅却師は何らかの手段をもって尸魂界での活動を可能にするのだろう。それこそ、浦原喜助と涅マユリが隊長格を虚圏に送ったように。
滅却師にとって、全てのものが霊子から出来ている尸魂界は、とんでもなく有利にはたらく。霊子を従属させ、建物を分解すればいつでも回復することが出来るのだ。敵陣のど真ん中で孤立したとしても、不利にはならないだろう。
情報を整理すればするほど、敵が一筋縄ではいかないことがはっきりわかった。
「現段階では滅却師の侵攻を阻止することは難しいでしょう。となれば、迎え撃つための対策を立てましょうか。」
滅却師は気の遠くなるほど長い時間をかけて、死神を蹂躙するための準備を進めてきた。それをたった数日間で阻止することは不可能だ。よって、阻止ではなく対策へとシフトすることにする。
「ふむ....一・四・十二じゃな。」
夜一の言葉に、その場にいた全員が頷いた。
護廷十三隊の中で、特に重要な役割を持つ隊はどこか。そう問われた時、大抵の者は四番隊と十二番隊を挙げるだろう。
四番隊は言わずもがな、救護専門のため闘いにおいて重要な役割を果たす。それに準ずる七番隊もそうだろう。
十二番隊は技術開発局を兼ねている。創設から百十数年で歴史は浅いが、その恩恵は計り知れない。技術開発局が占領させれば、死神たちは伝令神機で連絡を取る事すら出来ない。瓦解待ったなしだ。
そしてもう一つ。一番隊だ。一番隊舎の下には無間と呼ばれる、いわゆる牢屋がある。ただの牢屋ではない。ここには尸魂界の長い歴史の中でも、特に極悪な犯罪を犯した者が収容されている。ーーー藍染惣右介も、ここにいる。
滅却師との闘いの最中に無間が解き放たれた場合、混乱を極めることは想像に難くない。
「とりあえず、四番隊の救護詰所を守り抜くことが重要でしょう。戦いにおいて回復役はなんとしてでも守り抜かなければなりませんから。」
「一番隊と四番隊隊舎には結界を張るつもりです。」
「マユリんとこは結界張ったら怒られそうやなぁ。」
「そうなの。だから十二番隊は申し訳ないけど自分たちでなんとかしてもらう。」
「七はええんか?」
「....良いとは言い切れないけど、いざとなれば私の空間に隊舎ごと入れるわ。」
「おや、そんなことできるんスか?」
「頑張れば出来ます。」
喜助は帽子を深く被り目元に影を落とすと、美桜を見て静かに言った。
「正直アタシは四番隊の誰よりも、貴女を護り抜くことが重要だと思ってます。」
「....はい」
美桜の時間回帰は回道よりも早く完全に怪我を治すことが可能だ。治療できる数に限りはあれど、その優位性は語るまでもない。
「美桜は戦いには参加せず、七番隊としての役目を果たすのが良いじゃろう。」
七番隊としての役目。それは美桜が今の七番隊を作り上げた理由。負傷者を連れて戦線離脱し、息のある状態で四番隊に搬送すること。
「基本戦闘したらあかんで、美桜。」
「うん、わかった。」
自分が生き残ることが、多くの者を生き残らせることに繋がる。そう理解した美桜は膝に置いた手を握り締めた。
滅却師の最初の侵攻まで、あと
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