破面篇
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真子たちが瓦礫の中で夕焼けを見ながら心を落ち着けていると、慌てた様子の雀部がすっ飛んできた。
「皆さん!涅隊長が転界結柱を起動させようとしています!ここは危険です!すぐに避難してください!!」
「....マユリかいな。相変わらずやなぁ。」
真子は百年前のマユリの様子思い浮かべた。あの時も十分奇抜な容姿だったが、彼のことだ。きっとグレードアップしているに違いない。
いずれにせよ、戦いは終わった。いつまでもここにいる訳にはいかない。そう思い、真子は美桜を抱いたまま立ち上がった。
そのまま歩き出そうとした時に、真子の頭にある疑問が浮かんだ。
「なぁ卯ノ花さん。俺ら尸魂界行ってもええんか?」
「貴方達はもう我々の仲間ではありませんか。何を躊躇うことがあるのですか?」
さも当然のように返された言葉に、真子は面を食らった。
卯ノ花は冗談を言うような人間ではない。ということは、これが彼女の本心なのだろう。
真子はフッと笑うと、穿界門を通って百年ぶりの尸魂界へ向かった。
「隊長....!」
真子は尸魂界に着いた途端、どこかで聞き覚えのある声に足を止めた。
"隊長"と呼ばれたのは自分ではないことくらいわかっている。以前美桜が体調を崩したときに伝令神機越しで話した声だ。となれば、美桜の副隊長だろう。
「お、あんたが雫チャンか?」
「....そうです。」
「美桜からよぉ聞いとるで。頼りになる副隊長やって。」
「私も隊長からふざけてばっかの旦那さんと伺っています。」
「....なんやねん、それ。もっとあるやろ、こう、かっこいいとか。」
「ただ、"誰よりも私を大切にしてくれて愛してくれる最高の旦那さん"とも聞いています。」
「....あほ。」
「(あ、照れた....)」
雫は目の前の男性に興味津々だった。九十年程付き従える上司の旦那。しかも元隊長で、死神でありながら虚の力を手にした仮面の軍勢のリーダー的存在。
美桜からよく話を聞いていたが、こうやって面と向かって話をするのは初めてだった。先日、伝令神機越しに話しただけだ。
「隊長は....。」
雫は真子の腕に抱かれてぐったりとする美桜を見て、眉を下げた。見たところ怪我はないようだ。
そもそも、雫は自身の隊長が負傷したところを一度たりとも見たことがない。前線に出ない七番隊だからといって、全く怪我をしないわけではない。雫だって何度も負傷した。しかし、美桜は本当に一度もないのだ。それだけで尊敬できる隊長なのだ。
「安心せぇ、疲れて寝とるだけや。随分無茶しおったからなぁ。こりゃ三日は起きひんで。」
「そう、ですか。....隊長のこと、お願いします。」
真子は目を見開いた。彼女に言われずとも美桜の世話はするが、こうやって頼まれると、会ったばかりの彼女に"美桜の旦那"と認められた気がしたのだ。
「あほ。任せとき。」
真子はニヤリと笑うと、雫に背を向けて歩き出した。
+ + +
身体が、重たい。喉、乾いたな....。
「おはよーさん、美桜。」
あ、真子の声だ。呼んでる。そろそろ起きなきゃ。
私はゆっくり瞼を開けた。薄暗かったから眩しさで目を痛めることはなかった。今は夜のようだ。
でも視界に映った眩しい金色に目を細めた。気のせいだと思うけど、最後に見た時よりも輝きが増している気がする。真子の雰囲気がそうさせているのかな。憑き物が取れたようなスッキリとした顔をしている。
真子も思うことはあれど、百余年の精算が出来たのだ。もう足を止めて過去を何度も振り返ることなく、前を向いて歩けるようになったのだ。
「....おはよ、真子。」
体内時計は藍染との戦いから三日目の夜を指している。随分と長く寝ていたようだ。
まぁあれだけの重傷者を何人も治療したのは初めてだったから、仕方ないのかもしれない。
真子が私の背中に手を入れて起こしてくれた。そして口元に水の入ったコップを近付けてくれたので、ゴクゴクと飲み干す。あぁ、生き返る。
「お代わりいるか?」と目で問われたから首を振った。とりあえず今は大丈夫。
「後で説明したるから今は寝り。特別に背中ぽんぽんしといたる。」
「....ばか。子どもじゃないんだから。」
口ではそう言うけど内心嬉しかった。真子に背中ぽんぽんされると安心して、あっという間に眠りに落ちるのだ。まさに魔法の手。
藍染がどうなったのかも気になるし、みんなの怪我の具合も気になる。無事治っただろうか。元通りになっていれば良い。
私たちの、長い、長い、百余年が終わった。
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