番外編
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●ジャキンッ
(虚化して数年後)
「はぁ〜どないしよ〜。」
衣装部屋の全身鏡の前で真子がうんうんと何かに悩んでいる。私は鏡を見る真子の横から顔を出した。鏡越しで真子と目が合う。
「どうしたの、そんな唸って。」
「最近俺ずっと悩んでんねん。」
そう言って真子は手に持っている洋服を自分の身体にあてる。両手に一着ずつ持っているから、どっちが似合うかで迷っているのだろうか。
「こっちの方が好き。」
私は真子の左手にある洋服を指す。シンプルなブラウスに柄の入った細身のネクタイ。こっちの方が真子の体格に合っていると思うのだ。
それに、私はネクタイをほどく姿が大好きだ。好きな人がネクタイほどいてる姿ってなんであんなにドキドキするんだろう。筋の通った手がネクタイを持って左右に引っ張る、ただそれだけのはずなのに。
「俺もこっちの方が好きや。ってちゃうわ!悩んでんのこれちゃうねん。」
どっちの洋服がいいかじゃないなら何に悩んでいるというのだ。
「洋服にこの髪合わへんのや。」
この髪、というと、真子の腰まであるストレートヘアだろうか。
確かに洋服よりも和服に合う気がするけども。
「せやから切ろ思とる。」
「....えっ!!切りたい!!!」
「はぁ!?美桜人の髪切ったことあるんか?」
「ない!でもやってみたい!!」
珍しく興奮した様子の私に、真子は悩むようにグヌヌと唸っている。
私は返事を待たずに洗面台から散髪ハサミと櫛、ケープを持ってきて、いらない布をお風呂場に敷いた。真子を呼んできて、そこに座るよう促す。
「今っ!?」
そう言いながら大人しく座る真子の肩にケープを掛ける。そして持ってきた櫛で梳かす必要のない髪を梳かす。気分は美容師だ。
「どれくらいの長さにするの?」
「せやなぁ。肩より短くしよか。」
「だいぶバッサリいくね。じゃあ切るよ?」
私は櫛を置いて代わりにハサミを持ち、左手で髪を持ち上げた。
「(肩より短く。ここら辺かな?ま、いいや、いっちゃえ!!)」
ジャキンッ
支えを失った金の糸が舞う。それに見惚れていると、切った位置が思ったより上にあったことに気付く。
「(あ....。)」
「美桜チャン、すごい音したけど大丈夫やろかー?」
「だ、大丈夫っ!!どんな真子もかっこいいからっ!」
ほんまに大丈夫なんか、という呟きが聞こえた気がするけど、もう切ってしまったものは戻らない。この長さで切るしか道は残されていないのだ。
私は最初に切った髪と長さが同じになるように、残った髪を切っていく。一度櫛で梳かして、切り損ねがないか確認したら完成だ。
真子の前に回って、真子を正面から見る。が、すぐに見ていられなくなって両手で顔を覆った。
「そない酷いんかっ!?」
ううん、違うの。免疫ができてないだけなの。
「....まって、すごいかっこいいどうしよう」
私の呟きがちゃんと聞こえたようで、頭を撫でられた。
「美桜にかっこええって言ってもらえるならそれでええわ。ありがとさん。」
真子からケープを外して、一緒に洗面台へ向かう。
「お〜、ええんやない?」
鏡を見た真子は、思ったより短くなった髪に驚いたものの、悪くないと思っているみたいだ。
内心ドキドキしていたから、真子が気に入ってくれてよかった。
ただ、髪を切ったことでちょっと残念なことが一つ。
私、真子に見下ろされることで真子の髪がカーテンのように垂れて、私たちを二人だけの世界にしてくれるのが好きだったのだ。それが出来なくなってすごい残念。
でも、私が見下ろせばその問題は解決するし、いっか。