番外編
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●ご報告があります。
「ご報告があります。」
私は今、十三番隊の雨乾堂にて、ほろほろと涙を流す春兄と四郎兄の前に正座をしている。もちろん隣には真子もいる。
なぜこうなったのか。
それは数日前に遡る。
真子にプロポーズされた私は、迷うことなく真子の妻になることを決めた。先程もらったばかりの金の指環が左手の薬指で輝く。
「ほなこれ一緒に書こうや。」
そう言って真子が机に置いたのは一枚の紙。大きめのその紙には、"婚姻届"と書かれている。この薄っぺらい紙切れ一枚を提出するだけで、私と真子の関係が恋人から夫婦という強固な関係に変わるのだ。
早速書こうと筆と墨を準備する。筆に墨をつけようとしたとき、"証人"という欄があることに気付いた。
「この証人っていうのはなぁに?」
「この婚姻を証明する人が二人必要なんや。その人にここ書いてもらうんや。普通はお世話になった人とか友人やなぁ。」
なるほど。親や一番お世話になった人、親しい友人に頼むのが定石らしい。そう言われて思い浮かんだのはあの二人だった。でも証人欄は二つ。私と真子で一人ずつとなると、私の証人欄は一つ。どうしよう。
「ええよ。」
「....え?」
「京楽さんと浮竹さんに頼みたいんやろ?ええよ。俺もお世話になっとるし、あの二人がおらんかったら俺ら出会ってなかったかもしれん。」
「....いいの?真子は拳西に頼むものだと思ってたけど」
「誰もいないんやったら頼も思とったけど、美桜が二人に頼みたいんやろ?ならええで。」
「....ありがとう、大好き。」
私のことを優先して考えてくれる。そんなところにも愛を感じる。私って愛されてるなぁ。
「報告ついでに証人頼みに行こか。」
「うんっ!!」
私は嬉しくなって隣に座っていた真子にギュッと抱きついた。真子もちゃんと私を抱き締めてくれる。
早速春兄と四郎兄の都合をきき、報告があると言うと「十三番隊の雨乾堂へおいでよ」とのことだったので、真子と二人で向かった。
隊士に案内されて雨乾堂へ向かう。真子は十三番隊の雰囲気が珍しいのか、終始キョロキョロと辺りを見回していた。
「へぇ〜隊によってこない雰囲気変わるんか?」
「真子はずっと五番隊だもんね。隊によって雰囲気違うけど、ここはその中でも異色かな。隊長が四郎兄で、身体が弱いからか隊士が四郎兄の心を癒そうと色んなものを植えてるの。」
二人で美しく整えられた庭に足をとめた。端の方では隊士と思われる死覇装を着た人が盆栽の枝を切っている。
「隊士って言うより庭師やんけ。」
「ふふっ、その方が近いかも。」
「こちらになります。」
案内してくれた隊士にお礼を言ってから、閉じられた襖の向こうにいる人影に声をかけた。
「春兄、四郎兄、開けていい?」
「どうぞ〜」
音なく襖を開けると、座布団に胡座をかく春兄と、布団から起き上がり肩に着物を掛けた四郎兄がいた。
「おや、平子くんもいるのかい?」
私の後に入ってきた真子に春兄が驚いたように声を上げる。気付いてたくせに。そう思いながら二つ用意されていた座布団に並んで正座する。
「四郎兄、体調は大丈夫なの?」
「あぁ、今日は調子が良いから大丈夫だ。」
挨拶も終わり、本題に入る。心臓がドキドキしているのがわかる。なんて言おうか悩みながら膝の死覇装をギュッと握っていると、その手に温かいものが重ねられた。ハッとして隣を見ると、真子が私を見て微笑んでいる。手を握っとくから安心せぇ。そんな声が聞こえた気がした。
「....結婚します!!!」
散々考えてくせに、私の口から出たのはそんな言葉で。二人とも目を大きく見開いて固まっている。私が口をあわあわさせていると、春兄の目から何かが落ちた気がした。
「(....え?)」
四郎兄の目からも何か落ちた。私と真子が固まっていると、二人は自分の目から落ちたものに驚いたような顔をした。
「いやぁ、年取ると涙もろくなって困るねぇ。」
「全くだな。」
そう言って目元を抑える春兄と四郎兄に、私の視界もどんどん滲んでいく。
「美桜のことを幸せにする。やから美桜もらっていくわ。」
「平子君になら任せられるよ。僕らが大事に育ててきた美桜ちゃんのこと、頼んだよ。」
「幸せになるんだぞ、美桜。」
四郎兄のその言葉に、私はずっと握っててくれた真子の手を取って微笑んだ。
「もう充分、幸せです。」
「あほ。もっとや。」
二人はそんな私たちを眩しそうに見ていた。
「せや。美桜頼むんやろ?」
「あ!そうだった!」
私はいつものように異空間に手を入れて、大事にしまっておいた紙を取り出して机に置いた。
「証人にね、なってもらいたいの。」
私がそう言うと、二人は嬉しそうに笑った。
出来上がった婚姻届を空に透かせる。証人が護廷十三隊の隊長二人ってすごい。
この婚姻届を役所に提出して受理されれば、私と真子は夫婦になる。
これからもよろしくね、私の旦那さん。