フラヌイ・デ・シャキーン・ホニャララ短編集
フラヌイ「貴様の名を名乗れ」
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ふと目を開けると、愛しい腕の中。
規則正しく上下する寛いだ胸元に顔を寄せ、深く息を吸う。
この行為は真似事で、意味などないのだと
同じ生き物でないと語った彼は言っていた。
触れ合った肌も
絡められる指も
深くまで交わる体も
何もかも、形だけだと
こうして寝ていると違う生き物だなんて分からない。でも私は知っている。彼がこの世界の「人間」ではないこと、本当の姿。
あちらの姿も別に可愛らしくて好きだけど、それを言うと彼は不機嫌になるので言わないことにしている。
それに、こちらの姿でなければ立ち位置は逆転してしまうから。
同じ心臓の音がする
深く息を吸うと仄かに彼の香りがした。香水、とは違うけれど例えるならお香のような。私はこれを表す言葉を知らなかったけれどこれが彼の匂いだと分かればそれで十分だ。
少し視線を上げると整った顔が見える。閉じられた瞳は先程の熱など何も感じさせない程に美しく、彫像のようにすら見えた。滲み出るそれは品格なのだろうか。眠っているだけなのに普通の人ではないのだと分かってしまう彼の空気。いやまあ、人では実際ない訳だけれども。
腕の中から抜け出し彼の顔を見下ろす。
言葉では分かっていても、同じ存在でないという意識は薄かった。私といる時の彼は基本的にこちらの姿だったし、魔法も目立つからという理由で控えてもらっている。
いや、薄いふりをしているだけかもしれない。
目を背けているだけなのかもしれない。
彼が、いつか私の前からいなくなるかもしれないという事実から
彼は王子だ。此処にも一時的に滞在しているに過ぎない。時が来たらきっと国に帰るんだろう。
その時私は……?
悪戯に彼の首に手を絡める。
彼らにも私たちと同じように死が存在するのだろうか。
存在するとして死んだら私たちと同じようになるのだろうか、それとも…
嗚呼、馬鹿みたいだ。
くだらない自分の行動を嘲笑いながら再び体を横たえる。
と、視界に影が落とされた。
さっきとは逆になって、空色のカーテンに月明かりを遮られる。私を見下ろす彼の顔は見えなかった。
「つまらんな」
「起きていたの、フラヌイ」
返事の代わりに彼は私の唇を塞ぐ。
深く、深く絡みつく吐息は混ざりあい、酸素を求めて口を開けばそれさえ許されずまた噛み付くような口付けが降りてくる。
苦しい。
でも、この苦しさで死ぬなら悪くは無い。
体の線を骨ばった手がなぞり体が跳ねる。
見上げれば同じように肩で息をしながらも、この先を示唆する様に口角が上がっているのが見えた。
きっとまた「意味の無い行為」を重ねるのだろう。
『それでもいい』
返事の代わりに彼に手を伸ばしながら思う。
いつか来る別れのその日がきても
忘れられないように、この体に刻んで欲しい。
「ねえフラヌイ」
「なんだ」
交わる視線の熱は私の理性を溶かしていく。
「愛しているわ」
規則正しく上下する寛いだ胸元に顔を寄せ、深く息を吸う。
この行為は真似事で、意味などないのだと
同じ生き物でないと語った彼は言っていた。
触れ合った肌も
絡められる指も
深くまで交わる体も
何もかも、形だけだと
こうして寝ていると違う生き物だなんて分からない。でも私は知っている。彼がこの世界の「人間」ではないこと、本当の姿。
あちらの姿も別に可愛らしくて好きだけど、それを言うと彼は不機嫌になるので言わないことにしている。
それに、こちらの姿でなければ立ち位置は逆転してしまうから。
同じ心臓の音がする
深く息を吸うと仄かに彼の香りがした。香水、とは違うけれど例えるならお香のような。私はこれを表す言葉を知らなかったけれどこれが彼の匂いだと分かればそれで十分だ。
少し視線を上げると整った顔が見える。閉じられた瞳は先程の熱など何も感じさせない程に美しく、彫像のようにすら見えた。滲み出るそれは品格なのだろうか。眠っているだけなのに普通の人ではないのだと分かってしまう彼の空気。いやまあ、人では実際ない訳だけれども。
腕の中から抜け出し彼の顔を見下ろす。
言葉では分かっていても、同じ存在でないという意識は薄かった。私といる時の彼は基本的にこちらの姿だったし、魔法も目立つからという理由で控えてもらっている。
いや、薄いふりをしているだけかもしれない。
目を背けているだけなのかもしれない。
彼が、いつか私の前からいなくなるかもしれないという事実から
彼は王子だ。此処にも一時的に滞在しているに過ぎない。時が来たらきっと国に帰るんだろう。
その時私は……?
悪戯に彼の首に手を絡める。
彼らにも私たちと同じように死が存在するのだろうか。
存在するとして死んだら私たちと同じようになるのだろうか、それとも…
嗚呼、馬鹿みたいだ。
くだらない自分の行動を嘲笑いながら再び体を横たえる。
と、視界に影が落とされた。
さっきとは逆になって、空色のカーテンに月明かりを遮られる。私を見下ろす彼の顔は見えなかった。
「つまらんな」
「起きていたの、フラヌイ」
返事の代わりに彼は私の唇を塞ぐ。
深く、深く絡みつく吐息は混ざりあい、酸素を求めて口を開けばそれさえ許されずまた噛み付くような口付けが降りてくる。
苦しい。
でも、この苦しさで死ぬなら悪くは無い。
体の線を骨ばった手がなぞり体が跳ねる。
見上げれば同じように肩で息をしながらも、この先を示唆する様に口角が上がっているのが見えた。
きっとまた「意味の無い行為」を重ねるのだろう。
『それでもいい』
返事の代わりに彼に手を伸ばしながら思う。
いつか来る別れのその日がきても
忘れられないように、この体に刻んで欲しい。
「ねえフラヌイ」
「なんだ」
交わる視線の熱は私の理性を溶かしていく。
「愛しているわ」
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