SHORT YUKI RURIKAWA
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「お先失礼します~、お疲れ様です!」
「おつかれ~」
荷物をまとめてバイトのフロアを出る。一緒の時間に上がった同期が隣を歩き出して、はじまるのはいつもの愚痴大会だ。
「あの客本当にありえなくない?」
「分かる。こっちだって好きでやってるわけじゃないのに」
昼過ぎにやってきて店中を引っかき回していったお客さんのことを思い出して二人で大爆笑する。レジ袋有料化なの知らなかったって何? ニュース見てたら絶対に分かるのに!
「無理すぎる~、ねぇ、このあと時間ある? ケーキ食べてこうよ」
「あー、ごめん。今日彼氏」
「えー、じゃあまた今度ね」
「分かった、絶対」
控え室でそれぞれ着替えをはじめる。彼が選んでくれたワンピースに袖を押すと、なんだか背筋が伸びて行くみたいだ。ファッションに精通している彼氏がいると、私もいろいろ教えてもらえて楽しい。二人でお揃いのコーデで遊園地に行ったり、浴衣を着たり、今年の夏も結構遊んだ。……もちろん、彼の公演も。
着替えを終えた同期が、私の髪を見て「髪いじってもいい?」と笑った。彼女は私の無造作に結んだポニーテールをするりとほどくと、櫛でとかしながら何やら複雑に結っていく。
「趣味?」
「んー、そう。趣味」
「へえ。美容の専門目指してるとか?」
「いや? ウチ、大学エスカレーターだし」
ああ、そうだった。彼女は進学校に通ってるんだった。見えてきた大学受験に、私は溜息をつく。……そういや彼氏もエスカレーターなんだっけ、大学までついてるんだっけ。
「彼氏、ここまで来てんの?」
「うん。……あ、LIME来てる。今下にいるみたい」
あんまり遅れると眉を寄せて「……遅い」って言うんだろう。それもそれで可愛いけれど。私は同期にフレグランスを振りかけてもらい、一緒に階段を降りていった。
*
「……凄い顔してたね、アンタのバイトの友達」
「まあ、幸みたいなのがいるとは思わなかったんじゃないかな」
ファミレスでパスタをくるくると巻きながら幸は思い出したようにちょっと笑った。バイト先が入っているビルから出たところで待っていたのは絶世の美少女(私談)の幸だったからだ。驚いた顔で「かれし?」と呟いた彼女は、はっと我に返って「またね」と去って行った。さきから不自然にバイブを鳴らし続けているスマホを見るのが、ちょっとだけ怖い。
「で、その髪は?」
「ああ、あの子がやってくれたの。可愛い?」
「ふうん。まあまあ」
「まあまあて」
私知ってるからね、幸のまあまあはかなり高評価だってこと。ふふん。
「ま。オレのほうが上手く出来るけど、それ以外だったら良いんじゃない」
「それはそうだけどさ~」
幸は空になったコップを手に取ってドリンクバーに向かうと言った。いってらっしゃいと手を振ると、幸はまじまじと私の髪を見つめた。……なに?
「やっぱ、アンタを一番可愛く出来るのはオレだなって」
「……そうでしょうとも」
ドリンクバーでオレンジジュースを入れている背中を眺めながら、私も自分の髪に触れた。幸がちょっとだけヤキモチ焼いてるの見たいから、あの子にはまた髪を結って貰おう。ふふん!
*
バイト先の同期が彼氏と会うというので出来心で着いていったら、瑠璃川幸がいた。
私は足早に歩きながらどくどく鳴る心臓を押さえつけた。夏組の瑠璃川幸くんだったよね、あれ?
びっくりした気持ちを抑えつけられなくて、慌ててLIMEを開いて電話をかけた。
「もしもし? 電話してくるなんて珍しいね」
「あ、あのね、椋。今バイト終わったんだけどね」
「……どうかした?」
「おつかれ~」
荷物をまとめてバイトのフロアを出る。一緒の時間に上がった同期が隣を歩き出して、はじまるのはいつもの愚痴大会だ。
「あの客本当にありえなくない?」
「分かる。こっちだって好きでやってるわけじゃないのに」
昼過ぎにやってきて店中を引っかき回していったお客さんのことを思い出して二人で大爆笑する。レジ袋有料化なの知らなかったって何? ニュース見てたら絶対に分かるのに!
「無理すぎる~、ねぇ、このあと時間ある? ケーキ食べてこうよ」
「あー、ごめん。今日彼氏」
「えー、じゃあまた今度ね」
「分かった、絶対」
控え室でそれぞれ着替えをはじめる。彼が選んでくれたワンピースに袖を押すと、なんだか背筋が伸びて行くみたいだ。ファッションに精通している彼氏がいると、私もいろいろ教えてもらえて楽しい。二人でお揃いのコーデで遊園地に行ったり、浴衣を着たり、今年の夏も結構遊んだ。……もちろん、彼の公演も。
着替えを終えた同期が、私の髪を見て「髪いじってもいい?」と笑った。彼女は私の無造作に結んだポニーテールをするりとほどくと、櫛でとかしながら何やら複雑に結っていく。
「趣味?」
「んー、そう。趣味」
「へえ。美容の専門目指してるとか?」
「いや? ウチ、大学エスカレーターだし」
ああ、そうだった。彼女は進学校に通ってるんだった。見えてきた大学受験に、私は溜息をつく。……そういや彼氏もエスカレーターなんだっけ、大学までついてるんだっけ。
「彼氏、ここまで来てんの?」
「うん。……あ、LIME来てる。今下にいるみたい」
あんまり遅れると眉を寄せて「……遅い」って言うんだろう。それもそれで可愛いけれど。私は同期にフレグランスを振りかけてもらい、一緒に階段を降りていった。
*
「……凄い顔してたね、アンタのバイトの友達」
「まあ、幸みたいなのがいるとは思わなかったんじゃないかな」
ファミレスでパスタをくるくると巻きながら幸は思い出したようにちょっと笑った。バイト先が入っているビルから出たところで待っていたのは絶世の美少女(私談)の幸だったからだ。驚いた顔で「かれし?」と呟いた彼女は、はっと我に返って「またね」と去って行った。さきから不自然にバイブを鳴らし続けているスマホを見るのが、ちょっとだけ怖い。
「で、その髪は?」
「ああ、あの子がやってくれたの。可愛い?」
「ふうん。まあまあ」
「まあまあて」
私知ってるからね、幸のまあまあはかなり高評価だってこと。ふふん。
「ま。オレのほうが上手く出来るけど、それ以外だったら良いんじゃない」
「それはそうだけどさ~」
幸は空になったコップを手に取ってドリンクバーに向かうと言った。いってらっしゃいと手を振ると、幸はまじまじと私の髪を見つめた。……なに?
「やっぱ、アンタを一番可愛く出来るのはオレだなって」
「……そうでしょうとも」
ドリンクバーでオレンジジュースを入れている背中を眺めながら、私も自分の髪に触れた。幸がちょっとだけヤキモチ焼いてるの見たいから、あの子にはまた髪を結って貰おう。ふふん!
*
バイト先の同期が彼氏と会うというので出来心で着いていったら、瑠璃川幸がいた。
私は足早に歩きながらどくどく鳴る心臓を押さえつけた。夏組の瑠璃川幸くんだったよね、あれ?
びっくりした気持ちを抑えつけられなくて、慌ててLIMEを開いて電話をかけた。
「もしもし? 電話してくるなんて珍しいね」
「あ、あのね、椋。今バイト終わったんだけどね」
「……どうかした?」