SHORT SAKUYA SAKUMA
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
日差しが眩しい中、わざわざ交通費をかけて学校に向かう。受験用の夏期講習に申し込んだのは確かに私だけど、スケジュールが思いの外キツキツで早くもくじけそうだ。今日は英語だっけ、うわ、仮定法応用って。仮定法って、なんか現実味がなくて苦手なんだよな。……あ、いや、現実味のないときには仮定法を使うのか。ううん、じゃあ時制が複雑でよく分かってないだけだ。
高校三年生の夏は、実質夏じゃ内容にすら思える。毎日学校の夏期講習か塾の夏期講習、どちらもない日は家でセルフ夏期講習。塾は夕方からだからあまり日焼けのしない色白の夏。高校生活最後の夏がそれだなんて、あまりにも世間は青春に対して厳しい。
くじけそうな夏期講習だけど、今日はひとつだけ楽しみなことがある。昨日の夜、唐突に来た咲也からのLIME、「明日の夏期講習のあと、出掛けない?」という言葉に対して、即座にイエスと言った。夏期講習のあとに学校の前まで迎えに来るというので、夏期講習をさぼるわけにもいかない。真っ白なプリントに名前を書き込みながら、私は問題文に目を走らせた。えーと、もしも私がお金持ちだったら?
終わりと告げるチャイムが鳴ったと同時にペンケースにペンをしまって、教室を我先にと飛び出した。校門付近で制服でいた咲也は、お疲れと笑い、行こうかと乗り換え案内を見ていた。どこか少し遠出するらしい。
電車にとって連れ出してくれたかと思えば、降りた駅は潮の香りの風邪が漂う海辺の駅。水着も着替えも何一つ持っていないのに、咲也は私の顔を覗き込んで「海だよ!」とニコニコ笑った。
「海、入るつもりだった?」
「うーん? そこまで考えてなかった」
砂浜に下りて、靴と靴下を脱いだ。リュックの中に体育のためのタオルが入っていることをぼんやり思い出した。咲也は私の投げ捨てたリュックサックを拾い上げると、「もう」と左の肩に背負った。ちょっとの間だけ甘えることにして、最近流行りの短い丈の靴下をローファーに突っ込んだ。
「やっぱり8月だから暑いね」
波打ち際で波が揺れる。私は水を足先で跳ね上げながら舞う水を眺めた。重力に従ってすぐに落ちていってしまうのが惜しくて、何度も何度も。きらきらと舞う水は、まるで私たちの時間みたいだ。長いと思ってた高校生活が、もう一年もしないうちに終わってしまうなんて。……今のはちょっと、ロマンチックすぎたな。
背後からカメラのシャッターを切る音がして、私は首を傾げて振り返った。少し離れてこちらにカメラを向けていた咲也は、私が振り返ると思っていなかったのか慌ててスマホを降ろしてひらひらと手を振った。
「撮ってないよ」
「絶対撮ったでしょー」
「撮ってないよ!」
鞄にスマホをしまって「ほら」と手を広げてみせる。いやそれ今やっても意味なくない?
「咲也!」
「なあに?」
私は波打ち際の砂を蹴って咲也に駆け寄った。水で濡れているところはまだ踏めるけど、濡れていないところはやけどしそうなくらい熱い。私たちの夏も、きっと同じくらい暑い。
「わあ!」
踊るように砂を蹴って咲也に飛びついた。後ろによろめきながらも咲也は私のことをぎゅうと抱き締めた。
「オレも靴脱ごうかな」
「熱いよ、あっちいってからにしなよ」
手を繋いで砂浜を歩く。ねえこれって、紛れもなく高校最後の青春の夏だね?
高校三年生の夏は、実質夏じゃ内容にすら思える。毎日学校の夏期講習か塾の夏期講習、どちらもない日は家でセルフ夏期講習。塾は夕方からだからあまり日焼けのしない色白の夏。高校生活最後の夏がそれだなんて、あまりにも世間は青春に対して厳しい。
くじけそうな夏期講習だけど、今日はひとつだけ楽しみなことがある。昨日の夜、唐突に来た咲也からのLIME、「明日の夏期講習のあと、出掛けない?」という言葉に対して、即座にイエスと言った。夏期講習のあとに学校の前まで迎えに来るというので、夏期講習をさぼるわけにもいかない。真っ白なプリントに名前を書き込みながら、私は問題文に目を走らせた。えーと、もしも私がお金持ちだったら?
終わりと告げるチャイムが鳴ったと同時にペンケースにペンをしまって、教室を我先にと飛び出した。校門付近で制服でいた咲也は、お疲れと笑い、行こうかと乗り換え案内を見ていた。どこか少し遠出するらしい。
電車にとって連れ出してくれたかと思えば、降りた駅は潮の香りの風邪が漂う海辺の駅。水着も着替えも何一つ持っていないのに、咲也は私の顔を覗き込んで「海だよ!」とニコニコ笑った。
「海、入るつもりだった?」
「うーん? そこまで考えてなかった」
砂浜に下りて、靴と靴下を脱いだ。リュックの中に体育のためのタオルが入っていることをぼんやり思い出した。咲也は私の投げ捨てたリュックサックを拾い上げると、「もう」と左の肩に背負った。ちょっとの間だけ甘えることにして、最近流行りの短い丈の靴下をローファーに突っ込んだ。
「やっぱり8月だから暑いね」
波打ち際で波が揺れる。私は水を足先で跳ね上げながら舞う水を眺めた。重力に従ってすぐに落ちていってしまうのが惜しくて、何度も何度も。きらきらと舞う水は、まるで私たちの時間みたいだ。長いと思ってた高校生活が、もう一年もしないうちに終わってしまうなんて。……今のはちょっと、ロマンチックすぎたな。
背後からカメラのシャッターを切る音がして、私は首を傾げて振り返った。少し離れてこちらにカメラを向けていた咲也は、私が振り返ると思っていなかったのか慌ててスマホを降ろしてひらひらと手を振った。
「撮ってないよ」
「絶対撮ったでしょー」
「撮ってないよ!」
鞄にスマホをしまって「ほら」と手を広げてみせる。いやそれ今やっても意味なくない?
「咲也!」
「なあに?」
私は波打ち際の砂を蹴って咲也に駆け寄った。水で濡れているところはまだ踏めるけど、濡れていないところはやけどしそうなくらい熱い。私たちの夏も、きっと同じくらい暑い。
「わあ!」
踊るように砂を蹴って咲也に飛びついた。後ろによろめきながらも咲也は私のことをぎゅうと抱き締めた。
「オレも靴脱ごうかな」
「熱いよ、あっちいってからにしなよ」
手を繋いで砂浜を歩く。ねえこれって、紛れもなく高校最後の青春の夏だね?