SHORT AZAMI IZUMIDA
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劇団の練習なんじゃないの。そういうことも出来ないくらい喉が渇いていた。だから、この仕事は私がやっておくよって言ったのに。その返事がデカい溜め息とか、意味分かんないよ。
今日は一段と日差しが強かった。たぶん、毎日そうやって思うんだろう。高校1年の夏の始まりを、こうして委員会仕事で潰しているなんて中学生のときの私が知ったら苦い顔をするかもしれない。でも、現実なんてこんなものだ。甘酸っぱい夏は訪れる気がしなくて、代わりに積み上がっているのは書類仕事だ。
今日の昼休みにこれを頼みに来た先輩は、中学のときからのよしみの先輩だ。3年生だし、いろいろ忙しいんだろう。同じ委員会の泉田も協力するとか何とか言って、こうして一緒に机を並べているわけだけど。
……本当は、泉田と一緒にいるのは私にとって少し都合が悪い。あの日、泉田が私の指先を弱々しく掴んで「……好きなんだけど」と呟いた日から。
「あの、泉田」
「……なに」
書類をさばきながら泉田は短く返事をした。いつだって無愛想な泉田が顔を真っ赤にして私の指先を掴んでいたことを思うと、どうも同一人物じゃないような気さえする。
「ここまで手伝ってもらってあれだけど。ホントに、大丈夫だから。劇団忙しいんでしょ?」
「大丈夫だって。……まあ、俺と一緒にいると気まずいってのは分かるけど」
バレてる。私は書き損じた文字を修正テープで消しながら曖昧な返事をした。カチカチという音が私たち二人の間に線を引いた。
困った。泉田がまさかそんなタイプだと思っていなかった。だって、女子と肩がぶつかっただけで恥ずかしそうに顔を赤らめているような泉田だ。……困った。何を話せば良いというのか。
「あー。そんな困った顔すんな」
泉田が更に困った顔をして私のことを見ていた。耳が赤い。意味もなく机に突っ伏す様子は、まるで、まるで。
(泉田が私のこと、好きみたいだ)
そうだと言われたはずなのに、その事実が胸の中にすとんと入ってくる。
「俺がオマエのこと好きだと知っていて、そんな顔をするわけ」
「……困ってるから。泉田が、そんなことおもってるなんて知らなかったから」
修正テープの上から文字を書き込めば、私と泉田の間に引かれた線がなくなっていく。ぽつり、ぽつりと会話を交わした。劇団の先輩(全然先輩っぽくないらしい)が私と話すように言ったこととか。劇団のことを話す泉田は、なんだかちょっと優しい瞳をする。ちょっとだけ、可愛い。
自分の脳内にはっとする。いま、何だって?
(……まずい、泉田のこと。意識してる、かも)
まさかこれも、バンリサンとか、タイチサンとかいう先輩らしからぬ先輩の入れ知恵なの、かな?
今日は一段と日差しが強かった。たぶん、毎日そうやって思うんだろう。高校1年の夏の始まりを、こうして委員会仕事で潰しているなんて中学生のときの私が知ったら苦い顔をするかもしれない。でも、現実なんてこんなものだ。甘酸っぱい夏は訪れる気がしなくて、代わりに積み上がっているのは書類仕事だ。
今日の昼休みにこれを頼みに来た先輩は、中学のときからのよしみの先輩だ。3年生だし、いろいろ忙しいんだろう。同じ委員会の泉田も協力するとか何とか言って、こうして一緒に机を並べているわけだけど。
……本当は、泉田と一緒にいるのは私にとって少し都合が悪い。あの日、泉田が私の指先を弱々しく掴んで「……好きなんだけど」と呟いた日から。
「あの、泉田」
「……なに」
書類をさばきながら泉田は短く返事をした。いつだって無愛想な泉田が顔を真っ赤にして私の指先を掴んでいたことを思うと、どうも同一人物じゃないような気さえする。
「ここまで手伝ってもらってあれだけど。ホントに、大丈夫だから。劇団忙しいんでしょ?」
「大丈夫だって。……まあ、俺と一緒にいると気まずいってのは分かるけど」
バレてる。私は書き損じた文字を修正テープで消しながら曖昧な返事をした。カチカチという音が私たち二人の間に線を引いた。
困った。泉田がまさかそんなタイプだと思っていなかった。だって、女子と肩がぶつかっただけで恥ずかしそうに顔を赤らめているような泉田だ。……困った。何を話せば良いというのか。
「あー。そんな困った顔すんな」
泉田が更に困った顔をして私のことを見ていた。耳が赤い。意味もなく机に突っ伏す様子は、まるで、まるで。
(泉田が私のこと、好きみたいだ)
そうだと言われたはずなのに、その事実が胸の中にすとんと入ってくる。
「俺がオマエのこと好きだと知っていて、そんな顔をするわけ」
「……困ってるから。泉田が、そんなことおもってるなんて知らなかったから」
修正テープの上から文字を書き込めば、私と泉田の間に引かれた線がなくなっていく。ぽつり、ぽつりと会話を交わした。劇団の先輩(全然先輩っぽくないらしい)が私と話すように言ったこととか。劇団のことを話す泉田は、なんだかちょっと優しい瞳をする。ちょっとだけ、可愛い。
自分の脳内にはっとする。いま、何だって?
(……まずい、泉田のこと。意識してる、かも)
まさかこれも、バンリサンとか、タイチサンとかいう先輩らしからぬ先輩の入れ知恵なの、かな?