私の大好きな黒と赤

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ヒロインちゃん

「嘘・・・?」

彼に、おんぶされ行き着いた先は海賊船だった。

「お、降ろして下さい!海賊なんて聞いてません!!」

やっぱり危ない人だった。

危うく騙されて海賊船に乗せられるところだった。

乗ってしまえば、もう逃げ道はない。

ベックマンは素直に降ろした。

「騙してたんですね!お金のかからない医者って船医って事でしょ!?」

「確かに海賊とは言ってないが、別に聞かれてもいないから気にならないのかと思っていた」

「海賊のお世話にはなりません。失礼します」

「歩けるのか?」

クルと180度回転しようとしたが、その言葉に私の行動はストップした。

すっかり忘れていた痛みが今になってやってた。

痛い・・・!

「もうここまで来たんだから船医に診てもらえ」

「そのあとはどうするつもり・・・?」

「安心しろ。身の安全は保障する」

信用して良いの?

海賊なのに本当に信用出来る人?

色んな事が頭に浮かんだ。

最悪な事も。

どうしようかと迷っているうちに後ろからひょいとお姫様抱っこされた。

「きゃあ・・・!」

ベックマンの意外な行動に素直に声が出た。

お姫様抱っこなんて初めてだった。

顔が近い。

違う意味でハートがドキドキしている。

こんなに近ければ聞こえてしまうんじゃないかってぐらい。

こんな時にハートがドキドキしている場合ではないのに。

何だろう・・・?

陸から船へ続く階段を上って行き1つの部屋のドアを開けた。

「怪我人だ」

部屋の中に人がいた。

この人が船医さん?

高身長でメガネをかけ白衣を着ていた。

周りには医療器具と思われるものなどがあった。

「その女性誰だ?」

「ああ、金がないらしく街の病院に行けねェから成り行きで連れて来た。診てやってくれ」

「診るのは構わないが良いのか?勝手に乗せて」

「ああ、後で話しておく」

「ここに座れ」

船医が目で合図したのは診察椅子。

ベックマンはまだ抱っこしたままだったので降ろし、女性も戸惑いながらも座った。

船医は女性と向き合い足を診た。

「・・・確かに腫れてるな。ちょっと触るぞ」

手袋をし、手を伸ばし腫れてる部分、傷口など触った。

「・・・痛っ・・・!」

少し顔をしかめた。

「うーん、骨には異常はないと思うが捻挫と打撲で少しすりむいているな」

そう言うと包帯や消毒液のような物を持って来た。

手際よく、でも丁寧に処置してくれた。

「左足で今は歩くのは禁止。歩けば骨にヒビが入る可能性がある。歩いたら責任は持てねェ」

「・・・はい」

「で、どうする?」

「え・・・?」

「松葉杖にするか?車椅子にするか?」

「あ・・・!」

「人間片足で歩くのは無理だろ」

それは考えていなかった。

と言うよりもそんなに重症だと思ってなかった。

でもなんかわざと大事(おおごと)にしてない?

これからどうしたら良いのだろう?

ここまでお世話になって良いのだろうか?

「ま・・・松葉杖・・・貸してください」

「わかった」

車椅子を選ぶと逃げ道を自分で手放す事になる。

それは考えられなかった。

今まで黙って見ていたベックマンが口を開く。

「完治までどのくらいだ?」

「んー」

女性の顔と今治療したところを交互に見た。

「若いから治りは早いと思うが、完治となれば一ヶ月ぐらいだな」

「・・・航海は止める事は出来ねェ。だがこれも何かの縁だ。怪我が治るまでここにいろ」

「え!?」

驚いた。

てっきりこのまま家に帰してくれるものだと思った。

お金はなく再診は無理だが安静にしていれば治るはずだ。

そう考えていたのに・・・。

「・・・それはお頭の許可が必要だろ?」

「ああ、だから今話して来る」

そう言い出て行った。

「あ・・・」

船医と2人きりにされた。

出て行ってほしくなかった。

親しくはないが、ここにいる誰より話しやすかった。

「・・・何なんだろうな?」

「・・・?」

何が?と思った。

「なんであんたにそこまで優しくするんだろうな?」

私もそう思った。

「・・・・・いつもの事か?」

いつもの事?

「まぁ良い。決めるのはお頭だ。話している間これからの治療や薬などの説明するから聞け」

「・・・はい」

わけがわからないままそう答える事しか出来なかった。


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ベックマンは船長室に向かった。

あの人は買い物などないから、ここか酒場のどちらかだと思った。

「入るぞ」
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