少しばかしのヤキモチ屋


「覗き見とは、いい趣味をしているのだよ」

「うおッ?!」

いつの間にか物陰に隠れていた自分の目の前に来ていた緑間に気付かなかった高尾はいきなり声をかけられて驚きの声を上げた。

「あれ、真ちゃんいつの間に?!」

キョロキョロと周りを見渡すも、先程の女子生徒は見当たらない。
自分が考え込んでいる間に話は済んでしまったようだ。

「彼女さんは?」

「は?」

バッと勢いよく緑間を見上げながら問いかけると、緑間は眉間にシワを寄せる。

「真ちゃん、オッケーしたんでしょ?告白!」

「…馬鹿馬鹿しい、なにを言い出したのかと思えば…
断ったに決まっているだろう」

「断ったの?!え、めっちゃ可愛かったじゃん!」

「うるさいのだよ、高尾」

キャンキャンと吠えるかのように勢いよく聞いてくる高尾の顔をガシッと手で掴み、ギリギリと力を加えていく。

「んぎゃぁ!痛い痛い!」

「なら黙れ、煩わしい」

「わーった!わーったから離して!」

パッと離された手。
高尾はジンジンと未だに痛む頭を手で押さえながら緑間を見上げた。

「…まったく」

「好みじゃなかったの?さっきの子」

「まだ続けるのか、この話」

「いやだって気になるじゃん?
可愛いし胸デカかったし、年上の先輩ってだけでも興奮しね?」

「…なにを言うのかと思えば」

「あッ、待って真ちゃん」

めんどくさそうに緑間は息を吐くと、眼鏡をクイッと上げながら歩き出す。
その後を追うように高尾は少し駆け足で追いかけ、隣に追いつくと合わせて歩き出した。

「ねーねー、なんで告白オッケーしなかったの?」

「しつこいぞ、高尾
そもそも、先輩と話をしたのはさっきが初めてだ
話したこともないのにそのような好意を伝えられても迷惑なのだよ」

「お試しとかでもよくね?」

「そんな不誠実な事、俺がすると思うか?」

「うーん…」

ピタリと歩みを止めて想像してみる。
…が、想像してみるも、うまく頭に思い浮かばない。

「…いや、しないわ
真ちゃんはそんな事しない」

「ならもうこれ以上話をするな
早く昼にするぞ」

「へーい…」

先をゆく緑間の背中を見つめてから高尾は空を仰ぎながら後を歩く。










でも、もし真ちゃんに彼女ができたりしたら…。










俺は…。










「高尾、早くするのだよ」

「…」

「…おい、高尾」

「…」

「高尾!」

「!!」

大きな声で名前を呼ばれ、高尾はハッとして顔を上げた。
すると、目の前には先を歩いていたはずの緑間がいた。

「どうした」

「…え?」

「え、じゃない
早く行かないと昼が終わるのだよ」

「あー…あー…うん…真ちゃん」

「なんだ」

高尾は少しの間緑間を見ていたが、へらりと笑った後にスッと顔をそらす。

「ごめん、俺ちょっと用事思い出したから先行くわ」

「あ、おい!」

緑間の横を通り抜けながらそう言い、高尾は颯爽とその場を走り去ってしまい、緑間はぽつんとその場に置き去りにされてしまった。










「…いったいなんなのだよ、あいつは」











2/8ページ
スキ