その温もりに触れて


「…熱はなさそうだね」

白蘭と出会った喫茶店から離れ、雲雀の家へと辿り着いた雲雀と骸。
部屋へと通され、体温計を手渡されて熱を測るように言われ、計測が終わる音が響き体温計を取られた骸は、画面を見ながら言う雲雀を見上げた。
その表情は、どこかホッとした表情をしており、骸の視線に気付いた雲雀はそっと目の前へと腰を下ろした。

「顔色もさっきと比べてましみたいだし 
風邪がぶり返したってわけじゃないようだ」

雲雀の手が自分へと伸ばされる。











その手が、自分にとっては嬉しいもの。










…なのに。











………あ。








 


 「!」

雲雀から伸ばされる手から目を背けるように、ギュッと瞳を閉じてしまう。
その反応を見てか、その手は自分に触れることなくピタリと動きを止めた。

「…骸?」

「ッ…ぁ…すいません…ちょっと…反射的になぜか…」

名前を呼ばれてハッとし、目を開けると不思議そうに雲雀が自分を見ており、骸は視線を逸らしながら言葉を出す。

…白蘭と先程会ってからと言うもの…どうも調子が悪い。
特段、なにもなかったはずだというのに…。

「骸」

「なんで…す…?」

再び名前を呼ばれ、少しぎこちなく視線を雲雀へと戻す。
すると、雲雀は骸の手首を掴んで自らの頬に手を触れさせ、ジッと骸を見つめだす。


あ…意外に柔らかい。


「ねぇ、今君が触っているのはなんだい?」

「え、あぁ…触って…って、恭弥ですが…」

雲雀の頬の柔らかさに驚いていると、問いかけられ慌てて意識を頬から逸らしながら返答をする。

「うん、そう…僕だね」

「自分で触らせておいて、なにをおかしな質問をしているんです?」

「ちゃんと、僕だって分かってるよね
幻術で作られた、偽物でもない…本物の僕だって」

「…」

頬に触れさせたまま、真剣な眼差しを向けながら言う雲雀の姿に、骸は軽く瞳を見開いた後に言葉の意図を理解した。

「それとも、僕から触れないで、君から触れれば怖くはない?」

頬に触れていた手がゆっくりと雲雀の顎へと移り、首筋へとだんだんと下へ移動していく。
雲雀の様子を見て、骸は微かに眉間に皺を寄せた後、自分の手を掴んで動かしていた雲雀の手を自分の方へと向け、頬へと触れさせた。
自分の手を掴んでいたせいか、いつもよりも体温が高く感じる。









…触れられている、この手だけで、ちゃんとわかる…。












…ちゃんと…この手は…。












恭弥の手だ。












「…クフフ…怖いだなんて、おかしなことを言いますね
貴方に触られて、怖い、だなんて…そんな事思いませんよ」

ふと瞳を閉じ、口元に笑みを浮かべながら告げると、頬に温かさを感じて瞳をゆっくりと開ける。
すると、雲雀の手が自分の頬へと触れており、瞳を細めながらその手にすり寄った。

「その割には、ずいぶんと怖がってる風だったけどね」

骸の声色を聞いたせいか、雲雀の表情が少し緩み、骸の額へとコツンと自分の額をつけてジッと瞳を見つめられる。

「まぁ、君が元に戻ったならいいや」

「元に戻るも何も、僕は僕ですが」

「さっきまで君、やたらとビクついてたからね…小動物を見ているようだったよ」

「小動物とはまた御冗談を…」

雲雀の言葉に冗談だと思いそう答えるも、本人は至って真面目かというような眼差しを向けられてしまう。

「…なんですか、その目は」

「…小動物のように、怯えた眼差しで僕を見る君も、それはそれで興奮するんだけど…」

「ん」

骸の頬に触れていた雲雀の手が、人差し指でなぞりながら首筋へと移動としてき、鎖骨を服の上からなぞりだす。
その指の動きがくすぐったく、骸は小さく声を漏らしながら身体を震わせた。

「…そのような趣味があるとは…なんとも悪趣味ですね」

「別に、誰から構わずそう思うわけじゃない
君だけにしか思わないよ」

「…」

「…なに、その反応」

「…いえ…なにも…」











…不覚にも、胸が高鳴ってしまった。











僕も、大概ですね。











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