忘れた頃に


「…はぁ…」

喫茶店から外へと出てきた骸は外の空気を深く吸い込むとそのままゆっくりと吐き出した。

…なんとか…乗り切れた…。
白蘭と2人きりになったときはどうなることかと思いましたが…。
しかし、まだ油断は出来ない。
早くここから、彼から逃げなければ…。

「…?」

この場から離れようと足を一歩踏み出した瞬間、骸はふと自分の思考に疑問を抱く。











以前、白蘭に会った時。
底しれぬ恐怖心が、僕を包み込んだ気がしていた。











未来で敵対していたとはいえ、今はもう…そのような気配はない。
危険視するほどではない…それなのに…。











それなのに…なぜだろうか…。










なぜ、僕は…。












白蘭から逃げなければいけない、と思うほど。












彼に"恐怖心"を抱いているのだろうか。












「骸」

「!」

突然、視界が揺れる感覚が骸を遅い、ふらりとよろけながら喫茶店の壁へと手を付けようとした。
その瞬間、自分の名前が呼ばれよろける自分の腕を強く掴まれ骸はハッとして顔をあげる。
そこには、軽く息を切らしながら骸を見下ろす雲雀の姿があった。

「…恭弥」

「…見つけた…手間がかかるね、本当に」

「…すいません」

"立てる?"と雲雀に声をかけられ、骸はゆっくりと息を吐きながら壁に寄りかかる。
何度か呼吸を繰り返すと少し気分が楽になり、先ほどあったふらつきがなくなってきた感じがした。

「…なにかされた?」

「…されてません…されてませんが…なんなんでしょうね…」

「…」

「…恭弥?」

雲雀の視線が喫茶店の方へと向けられているのを察し、骸が名前を呼ぶと雲雀の顔が自分へと向けられる。

「とりあえず、ここから離れるよ
いつまでもここに立っているわけにはいかないから
僕の家でいいでしょ、ここから近いし」

「いえ、これ以上貴方に迷惑をかけるわけには…
それに、風邪をぶり返したような症状も出てますし」

「ならなおさら
変な遠慮いらないから、むしろ迷惑」

「め、迷惑って…」

「どうせそのうち、僕の所に来るんだから」

さらりと流される自分の言葉と、聞き捨てならない雲雀の言葉。
雲雀の発言に骸はぽかんとした表情を浮かべた後に、意味を理解すると微かに頬を赤く染めて俯いた。

「…貴方という人は…」

「君、本当に恥ずかしがりだよね」

「貴方以外にそう言われたことありませんよ?」 

雲雀の手が骸の手へと伸ばされて優しく包み込むように握られ、歩き出す雲雀のあとを追うように後ろを歩く。

…まったく…。

その背中を見つめながら歩く骸は、こつんと軽く雲雀の肩へと自分の額を当てた。
すると、それに反応するかのように雲雀の足取りが止まる。

「なに?」

「…いえ…少しだけ…」










「少しだけ、このままでいさせてください…」












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