忘れた頃に
「骸クンも食べるかと思って頼んだんだけど…頼みすぎちゃったかな?」
「食べません」
小首を傾げ、舌を出してあざとく言う白蘭に骸はきっぱりと言い放つ。
「骸クン、甘い物好きでしょ?
チョコレートパフェも、チョコケーキもあるのに食べないの?」
「確かに好きですが、先ほども言いましたが貴方からの施しはいりませんよ
第一、今はそんなに食欲もありませんし」
「さっきも言ったけど、なにかしらはお腹に入れたほうがいいと思うけどなぁ
ほら、これくらいなら食べれるんじゃない?
そんなに量も多くないし」
テーブルに乗せられたスイーツの数々の中から白蘭はフルーツやホイップクリームが乗せられたプリンアラモードの皿を手に取ると、プリンをスプーンですくい上げて骸へと差し出した。
「はい、あーん」
「いらないと言ったでしょう」
「いいからいいから」
ズイッと差し出されるスプーンの上に乗ったプリンをチラリと見て、骸は小さくため息をつく。
「…ならせめてスプーンを渡しなさい
自分で食べます」
「いいからいいから、あーん」
「…」
まったくもって、聞きやしない。
このままでは、延々とこの会話を繰り返すことになりそうだ。
諦めたように再度ため息を漏らし、骸は微かに口を開けてそっとスプーンへと顔を近付けていく。
その様子を白蘭は微笑みながら眺めているのが視界に入り、思わず動きを止めてしまう。
「あれ、どうしたの?」
「そこまで凝視されていると、流石に食べづらいのですが…」
「ん?あーごめんごめん
気にせずに食べて?」
骸に言われてハッとした表情を浮かべながら答える白蘭だが、空いている片方の手は頬杖をつき、再び笑顔で骸が食べる様を待ち始めた。
…結局、人の話を聞かない。
僕のまわりはなぜこうも人の話をきちんと聞こうとしないのか…。
しかし、いつまでも白蘭に付き合うのはめんどうだ。
それに、プリンは美味しそうですし…仕方がない。
これ以上は時間の無駄だと感じた骸は、プリンを食べようと再度顔を近付けた。
さっさと食べて、早く…。
〜♪
「!」
プリンまでもう少し、というところで自分のスマホから着信音が鳴り骸はビクッと身体を跳ねさせた後に動きを止めた。
いったい誰でしょうか…もしや、千種?
何も言わずに出てしまいましたし…。
「すいません、少しお待ちを」
「だめじゃない骸クン
ちゃんとマナーモードにしとかないとさ
僕は先に食べてるから、気にせず連絡してきていいよ」
骸が食べる予定だったスプーンに乗ったプリンをぱくりと食べながら白蘭は返答をし、それを見た骸は席から立ち上がるとスマホの画面へと視線を移した。
"雲雀恭弥"
「…は…?」
スマホの画面に表示された、登録した覚えのない名前。
それを見て思わず声を漏らした骸に白蘭は首を傾げる。
「どうしたの?」
なぜ恭弥の名前が…。
「い、いえ…席、外します」
「いってらっしゃ~い」
慌てて白蘭のもとから離れて骸は慌ただしく喫茶店から外へと出た。
なぜ恭弥の名前が僕のスマホに?
連絡先を聞いた覚えはないですし、この番号にも見覚えがない。
未だになる着信音を聞きながらジッと画面の名前を見つめる。
…まぁ、いいでしょう。
真相はこの電話を取れば分かるはず…。
骸は意を決してスマホの画面の応答ボタンを押してスマホを耳へと当てた。
『遅いよ、出るの』
そこから発せられたその声は、紛れもなく雲雀恭弥のものだった。
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