忘れた頃に


「僕、ここのお店気になってたんだよねぇ」

「…」

…いったい、どういう状況なのだろうか。

自分とは対面の席に座り、楽しそうに喫茶店のメニューを見ている白蘭を骸はジッと見ながら思う。











なぜ、さっき会って…今、こうして喫茶店に…。












1時間程前---

『久しぶりだね、2週間ぶりかな?』

『…』

自分の背後から声をかけてきた白蘭はにこにこと笑顔を浮かべながら骸へと距離を近付けていき、その様子を眉間に皺を寄せて骸は黙って見つめる。

なぜ、彼がこの場に…。

『"なんで僕がここに"って、言いたそうな顔してるね』

骸の考えを見透かしたのか、少し瞳を細め骸の目の前へと立ち止まり顔を覗き込む。
なにを考えているのか分からないその眼差しを避けるかのように、骸はふと視線を逸らした。

『…帰ったのではなかったのですか?』

『あはは、言ったじゃないか
"また来るね"って
君に会いに来たんだよ、骸クン?』

先ほどから崩れることのない、人当たりのいい笑顔。
それが、僕にしてみれば…。











恐怖でしか、なかった。











『…なぁんて、本当はただの偶然』

なにも言葉を発する事が出来ずに黙り込んでいると、白蘭はそう言いながらスッと顔を骸から離す。

『…僕に、なんの用で?』

この一言を出すだけなのに、ずいぶんと時間がかかった気がする。

『"ただの偶然"さ、"偶然"
まだ帰る予定もなかったから、今日はジャッポーネ散策していたんだよ』

やっと骸の口から発せられた言葉。
その問いかけに白蘭は更に距離を近付け、視線を合わせるように顔を再び覗き込んだ。

先ほどよりも、白蘭との距離。
鼓動が、ドクン…ドクン…と早まる感覚。

『…ッ…』

『あれれ、大丈夫?』

身体の力が抜けるかのように身体がふらつくと、白蘭が支えるかのように片腕を掴み、心配そうに声を掛ける。

『…大丈夫ですので、お気になさらず…
僕は、用があるのでこれで…』

白蘭に顔が向けられず、そう言いながら掴まれた手を振り払おうとするもうまく力が入らない。
むしろ、逃さないというように白蘭は掴んでいた手に力を入れた。

『ッ…』

『骸クン、顔色悪いしさ
流石に1人で、このまま行かせるわけにはいかないよ
そうだなぁ…』

"うーん"と少し考える素振りをしながら、ポケットからスマホを取り出してなにやら操作をし始め、少しすると"あった"と声を漏らす。

『骸クン』

『…なんですか、僕のことは放っておいて…』











『ちょっと、休憩しよっか』

『…はい…?』











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