勘違いから始まる関係


「普通日を跨いだからって深夜に来ますか?!」

「うるさ…」

骸の突然の大きな声にうるさそうに雲雀は表情を顰めた。

「君が言ったのに負けたからって文句を言うのはおかしいんだけど
あと、うるさいと他の小動物が起きてくるけど、いいの?」

「ッ…それはそうですが、まさかこんな夜中に来るとは思いませんよ」

チラリと建物を横目で見ながら言う雲雀からの指摘に骸は口を一旦閉じると、先程よりも声量を抑えながら反論をする。

「君が言ったのに負けたからって文句を言うのはおかしいんだけど」

「いやだから…って、なんで同じことを繰り返すんですか…」

「君が吠えるから」

なにを言っても堂々巡りになる事が目に見え、骸はため息をついた。

「…そもそも、なぜこんな深夜に
夜は眠るものでしょう?」

「裏社会で生きてきた人間がそういう事言うんだ
戦うのに時間帯なんて関係ないよ」

「…」

反論する事ができない。
確かに彼の言う通りだ。
僕としたことが、牢獄から出て自由になったからといってのんびりとし…。

-牢獄からの解放翌日-

『咬み殺しに来てあげたよ』

『呼んでいませんが?』

-またある日-

『それでは、行ってきま』(ガチャッ)

『やぁ』(扉前待機)

『?!!』(ビクッ!)









…いや、のんびり出来ていませんね。彼のせいで。
牢獄から出てからずっとこの調子だ。
というか、僕これで敗北ということになるんですか?納得いかないのですが。

「…とりあえず、退きなさい
こんなの無効です」

「敗北者にそんなこと決める権利はない」

「僕は認めていません」

「知らないよ、そんなの」

こいつ…ッ。

自分の言葉を淡々と返す雲雀に苛つきながら、骸は自身の身体に霧を纏わせる。

そうだ、最初からこうやって逃れてしまえば…。










ガッ。









「ッ?!」

なにかを感じ取ったのか、雲雀は骸の首元に押し付けていたトンファーを投げ捨て頬を片手で掴んだ。
骸は驚いて雲雀を見上げると、雲雀の顔が自分の顔の前へと近付いていた。

な…ッ…?!

なにかされると思い身構えていると、自分の唇に勢いよくなにかが当たり、"ッぐ"と小さく声を漏らしてしまう。

微かに走る痛みと、自分の唇に押し付けられる柔らかな物。

そして、あまりに近い雲雀の顔。









骸はこの時、雲雀にキスをされていることに気付いた。










「…ッ…?!」

唇がゆっくりと離され、状況を理解した骸は目を見開きサァッと雲雀の下から霧となって消えていく。
少し離れた箇所に姿を現すと、唇を腕で拭いながら雲雀を睨みつけた。

「お前…ッ」

「なんだ、ちゃんと幻術使えるじゃないか」

雲雀は口角をあげ笑みを浮かべながら立ち上がると、一歩、また一歩と骸へと歩み寄る。
それに合わせるかのように骸は一歩ずつ後退った。

「なんで逃げるの?」

「逃げるに決まってるでしょう?
いきなりキスとか…人をからかうのも大概にしていただきたい」

「からかう?」

骸の言葉に反応するかのように歩みを止めて、雲雀は首を傾げた。

「当たり前でしょう
よく毛嫌いしている人間にそんな真似を…嫌がらせするにも限度というものがありますよ」

「…なにか、勘違いしてない?」

「…勘違い?」

雲雀から顔を背け、腕組みをしていると雲雀の口から出た言葉に疑問を抱いて顔を向けた。

「そう、勘違い」

雲雀はゆっくりと近付いていき、骸の目の前まで来るとピタリと立ち止まる。
そして、骸を見上げて口を開いた。









「君の事、好きなんだけど」

「…は…?」









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