小さいなりにも
びちゃッ。
「ッ…?」
なにやら冷たい。
骸は頬にかかった冷たさにビクッと身体を跳ねさせてゆっくりと瞳を開ける。
なんだ、今のは…。
というか、僕はなぜ横に…。
頬に触れてみると、なにやら冷たく、そして少しべたついた液体。
…これは…。
「あり、ししょーのほっぺに垂れちった」
「ッんむ」
フランの声が頭上から聞こえ、顔を向けようとすると、ごしごしと自分の頬を袖が何かで拭われ、少し痛みが走り声を漏らす。
「…なにしてるんですか、フラン」
「あら、ししょー起きちゃいましたかー
おはようございますー」
「おはようではありませんよ、何をしているのか聞いているんです」
頭を押さえながらゆっくりと上体を起こすと、フランがひょこっと顔を覗き込んできて顔の近さに驚いて後ずさる。
「…なんです?」
「いやー、さっきアイス、ししょーのほっぺに落としちゃいましてー
まだついてるのでジッとしててくださーい」
「ッ!」
そう言いながら伸ばされる小さな手に、骸はビクッと身体を震わせて反射的に瞳をギュッと閉じた。
「…ししょー?」
フランの不思議そうな声色に骸はハッとして瞳を開けると、フランが自分をジッと見つめていることに気付く。
「…」
「…すいません、自分で…拭けます」
パシッ。
「?」
視線に耐えきれず、顔をそらして自分の袖で拭おうとすると、フランがその腕を掴み骸は驚きながら顔を再び向けた。
フランはいつもの無表情に等しい顔で骸を見つめ続けていた。
「…フラン?」
「…」
名前を呼ぶも、返事はない。
自分の腕を掴んでいた手が離され、両手が優しく頬へと触れる。
「あ、あの…フラ…」
むに。
「んむ」
伸びされた手は骸の頬をつかみ、そのままむにむにともみ続けた。
「ん、うむ、ちょ、ふら」
「…」
むにむに。
「あの」
「…」
むにむに。
「ッ…なにがひたひんれす…?」
「あー、すいませーん
なんか、気持ちよさそうだなーって」
「ちょ」
突発的な行動に理解が及ばず、揉まれながらも聞いてみると、フランははたと思い出したように言った後に手を離し、離しながら骸の頬についたアイスをごしごしと袖で拭い落とした。
「ししょー」
「…今度はなんです」
拭き終えたフランは手を離しながら骸を呼び、今度は何事かと骸は訝しげな表情をフランへと向ける。
「ちゃんと目、覚めましたかー?」
「…目…え…あぁ…覚めましたよ?」
そうか、さっき横になっていたのは眠っていたからか…。
最近、眠っても眠りが浅く、何度も起きてしまっていたから寝不足で…。
「ししょー眠ってて起こそうとしても起きなかったから、アイス溶けそうなんでししょーのも食べちゃいましたー」
空になった自分用に買っていたアイスの容器を見せながらフランは言った。
「別に大丈夫ですよ…僕はどのくらい眠ってましたか?」
「みー、時計持ってないんでわかりませんけどー…体感的に30分位ですかねー」
「…その程度でしたか
では、アイスも食べ終えたのなら帰りますよ」
「あー、ちょっと待ってししょー」
立ち上がろうとすると、フランがグイッと服を掴んで離そうせず、顔を向けてみるとフランは自分の太ももを指差している。
「なんです?」
「ししょー、まだまだ眠そうなんでー少し寝ててもいいですよーさっきみたいに」
「…別に、眠るならアジトで寝ても変わらないでしょう?
ほら、帰りますよ」
「ししょー」
「…」
言っても動く気配がない。
骸はしばらくフランを見つめた後に、小さくため息をついて再び座り直した。
「…なら、少しだけ
そこまで言うのなら30分ほど経ってから起こしてください」
「はいー、任せてくださーい
みーのししょーよりも若い太もも、堪能していいですよー」
「言い方…お言葉に甘えて」
"ほらほらー"と自分の太ももをぽんぽんと軽く叩きながら言う様子に骸は"たまにはいいか"と思い大人しく言われるがままフランの太ももに自分の頭を乗せるように横になった。
「はい、ねーんねーんこーねーんねーんこー」
「変なリズムで歌うのやめなさい」
「子守唄歌ってるだけですよー?」
「逆に眠れなくなるので歌うのは控えていただきたい」
「まぁーまぁー、はい、ねーんねーんこー」
まったく…人の話を聞かない…。
骸は呆れながらも瞳を閉じ、フランの手が自分の頭に乗せられ優しく撫で始めた。
「おやすみなさーい、ししょー」
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