この姿を隠して


「10代目!屋上まだ誰もいないですよ!」

「本当だ、雲雀さんがもしかしたらいるかもって思ったけど」

「雲雀もいたら皆で昼飯食えたのにな」

「あいつが食うわけねぇし、食いたくねぇよ!」

「まぁまぁ、落ち着いて獄寺君」

「「…」」

屋上の扉が開いた瞬間、物陰へと隠れた雲雀と骸。
聞こえてくる聞き覚えのある3人組の声に、骸は"沢田綱吉達ですか…"と小さく呟いた。

これはめんどうな事になりましたね。
幻術で逃げてもいいですが、彼の事だ。すぐになにかを察するでしょう。
まぁ、どうせバレたところで…ですが。

「…僕の前で群れるなんて…」

「落ち着きなさい、恭弥
暴れるのはやめましょう、僕の存在がバレてしまいますから」

イライラとしながらトンファーを構える様子に、骸は小さな声でやめるように促す。
すると、雲雀はチラリと骸を横目で見た後にトンファーをしまってその場に座り込んだ。

「ちょっと」

「彼等から正反対の位置だし、距離もある
ここならバレないし、君だってこの状況で帰るのも嫌だろう?」

「…仕方ありませんね、彼等が戻るまでですよ」

骸は少し考えた後に雲雀の隣に座る。
お互いの肩が触れ合い、変に意識をしてしまう。

ここにいるのは彼等がいなくなる間。
しかし、ここにずっと座ってそのまま…というのも少し暇ですね。

「…ねぇ」

「ッ、はい、なんでしょう?」

突然声をかけられて驚きながらも顔を向けてみると、雲雀が自分をジッと見ていることに気付く。

「どうしました?」

「さっき、名前」

「名前?」

「僕の名前、恭弥って」

「…あぁ、呼びましたが…それがなにか?」

「…別に」

そう言って顔をそらされるも雰囲気がいつもと違う。
なんかこう、言葉では言い表すのが難しいが…ふわふわとしているような、そんな感じだ。

「…恭弥」

「…」

名前を再び呼んでみる。
すると、雰囲気がさらに柔らかなものになったのを感じた。

「…そんなに名前呼ばれるの、嬉しいんですか?」

「…まぁね、君、ついこの間まで僕の名前をろくに呼んだことなかったから」

「おやおや、いつも以上に素直なことを言いますね」

「何言ってるの、僕はいつも素直だよ」

「クフフ、ご冗談…」


"名前呼んで"

"骸、愛してる"


…いや、いつも彼は素直に自分の気持ちを伝えていますね、こう考えてみると。

真顔で答える様に普段の雲雀の様子を思い浮かべてみると、いつも通りなことに気付いた。
骸はスッと雲雀の頭に手を伸ばし、わしゃりと優しく頭を撫で始める。

「…?ちょっと、なに」

よくよく考えると、彼は自分の気持ちに素直に行動をしており、まるで純粋な子どものようだ。
まぁ、中学生(?)なので子どもといえばそうなのだが。

「ん…ねぇ、骸…」

「…あぁ、すいません
どうかしましたか?」

「…君、いつまで僕のこと子ども扱いしてるつもり?」

頭を撫でていた手を掴み、少しムスッとしながら雲雀は骸にジリッと距離を詰める。

「自分の欲に忠実な貴方を見て、フランの事を思い出してしまいまして
あの子もまだ小さいですからね、それと重ねてしまい」

「…また君は、僕がいるのに他の男の事を言うのかい?」

「他の男って…フランはまだ小さいんですからそこまで目の敵にしなくても」

「言い訳は聞かないよ」

一段と不機嫌そうな表情になる雲雀に苦笑を浮かべながら返答をするも、自分の話を聞こうともせず骸の顔の横にトンッと手をつける。










「他の男の事なんて考えないで、僕のことだけしか考えられないようにしてあげる」










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