特権乱用
「…」
骸の言葉に雲雀の動きはピタリと止まり、突起から口を離して骸をジッと見つめてくる。
刺激が止み、骸は大きく息を吐いて脱力したようにベッドに身体を沈めた。
「はぁ…ッ…貴方という方は…」
「…名前」
「…?」
じんじんと痛む胸。
それについて文句の一つでも言ってやろうと少し上体を起こそうとするも、雲雀がぽつりと呟いた言葉が気になり動きを止めて様子を伺う。
「名前、呼んだね」
「…」
ジィィと穴が空くのではないかと言うほどに見てくる雲雀の言葉に先ほど、自分が雲雀の名前を口にしたことに気付いて骸はススッと少し恥ずかしそうに顔を背けた。
「…呼びましたが、なにか?」
「もう一回」
ズイッと顔を近付けながら再度名前を呼ぶように強請られる。
「…嫌ですよ、もう呼んだからいいでしょう?」
「一回呼んだなら二回も三回も変わらない」
「確かにそうですが…」
「なに?僕の名前を呼んで不都合でもあるの?」
「そういう意味ではありません」
「ならなに?」
「…」
…こうなった彼は意地でも引かない。
それを、僕は重々わかっている。
「…笑わないですか?」
「…?僕が笑うと思ってるの?」
「…そうですね、貴方が笑うとなると天変地異でも起きそうですしね」
「馬鹿にしてる?」
「冗談です」
「…それで?」
その先を雲雀に催促をされ、骸は少し口ごもった後ゆっくりと口を開いた。
「…は」
「…は?」
「…恥ずかしいんですよ、貴方の名前を呼ぶのが」
骸の言葉に雲雀はきょとんとした表情を浮かべており、骸は小さく息を吐いた。
「だって考えても見てください
今まで名前なんて呼んだこともないのに呼ぶんですよ?
今までの関係が関係だっただけに、なおさら名前で呼ぶだなんて」
「…」
「もうほら、僕の上からさっさと降りなさい
名前を呼んだのですから約束通りやめ」
だんだんと恥ずかしさが込み上げてきて早々にこの話を切り上げようとするも、雲雀は自分の上から退くことはなく、ジッと骸を見下ろしている。
「あの」
「骸」
「…なんです?」
「骸」
「だからなんですか、そんなに名前を呼ばなくてもこの距離なんですから聞こえていますよ」
何度も自分の名前を呼び、内容を伝えない雲雀に少し苛つきながらも返事をする。
「君も呼んでよ、恭弥って
僕も、たくさん呼ぶから」
「…先ほども言いましたけど、恥ずかしいから嫌です」
「恥ずかしいならたくさん呼んで、慣れたらいい」
「…それはまぁ、一理ありますが…呼ぶまでが」
「なら、呼ばざる得ない状態にすればいいか…」
「なにを企んでいるんです」
「別に、ただ君に名前呼んでほしいだけ」
そう言いながら雲雀は再度骸の腹部に手を伸ばし始める。
「ッ、まさか貴方…」
くすぐったさから身を捩り、雲雀が今後何をしようか察したのか顔が少し赤くなってしまう。
その表情を見た雲雀は口元に笑みを浮かべだす。
「さて…今度はどのくらいで僕の名前呼ぶのかな?」
「ひ…ッ…」
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