恋人ゆえの特権なので


「…あの」

「…今度は何?」 

骸が声を掛けると、雲雀は前を向いて歩きながら返事をする。
顔が見えないため、まだ怒っているのかと思ったが骸に合わせて少し歩く速度が落ちたのを見て少し安心をした。

なんだかんだ、こういう所は優しいですね…彼は。

「少し疲れたんで休憩しませんか?」

「君、そんなに体力なかったっけ?」

「牢獄に囚われていましたから、まだ体力が戻りきってないんです」

「それ、もうニヶ月以上前だった気がするけど」

「それはそうですが、少し貴方とゆっくりお話がしたいんです」

「…」

骸の言葉に雲雀は歩みをゆっくりと止め、顔をジッと見つめた。
いきなり見つめられ、骸は少し視線をそらしながら雲雀の服の裾に手を伸ばして掴む。

「出来れば…誰もいないところで…2人きりで」

「…」

「だめ、でしょうか…」

「…ふぅん…誰もいないところで、2人きり…とか
君も大胆だね」

「大胆もなにも、その方が話しやすいかと」

「まぁ、いいよ
どうせこの後行く所は決まってなかったし
場所は僕が決めても良い?」

「えぇ、それはお任せします
僕よりも貴方のほうが土地勘はありますし…っと」

きょろきょろと周りを見渡しながら雲雀は骸に問いかけ、了承を得ると雲雀は骸の手を掴んで握りしめるとグンッと引っ張り歩き出す。

「あの、どちらへ」

「安心してよ」

雲雀は少し後ろを向いて骸の顔を見た後、すぐに前を向いた。











「君が望む場所、連れてってあげる」










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