恋人ゆえの特権なので
「…堪能してしまいましたね…猫」
猫カフェを後にした2人は道を歩き、骸は満足そうに呟いた。
「そうだね
思った以上によかったかな、初めて行ったけど」
「初めてだったんですか?
けっこう手慣れていたように見えましたが」
「ある程度下調べはしていたから
そもそも、僕が他人が馴れ合っている所に好き好んで行くと思ってる?」
「…確かに」
そう言われてみると、猫が目的とは言え他の客も結構入っていた。
そういう場所に彼が行くとは到底思えない。
彼のことだ、人払いをして自分1人と猫多数の状況を作るだろう。
それなのに、そうしなかった理由…。
「結構、無理していません?」
「…」
骸は隣を歩く雲雀の顔をヒョコッと覗き込む。
突然目の前に現れた骸の顔に雲雀は驚いたのかきょとんとした表情を浮かべた。
「無理ってなにが?」
「人がたくさんいる所に行くことです
ただでさえ、他人と必要以上に馴れ合うと蕁麻疹が出る貴方がこうやって僕と一緒に街を歩く
それだけでも、無理してそうな感じがしまして」
「ねぇ、蕁麻疹の事誰から聞いたの」
「貴方に代理戦を頼んだ風という赤ん坊…いや、今は元の姿に戻っていますし赤ん坊ではありませんね」
「…余計な事を
…別に、無理はしていない
そもそも、街を歩くのも無理だったら引きこもりになるしかないしね」
「そうだとしても」
「猫カフェは僕が行きたくて行ったわけだし
そもそも、デートをする時点で人混みは避けられないのは承知さ」
「そんなに僕とデート、したかったんですか?」
「…君、さっきからうるさいから少し黙って」
「むぐ」
ジトリとした目つきで睨まれ、"あ、言い過ぎたか?"と思っていると雲雀の手が頬へと伸ばされてそのままガッと掴まれてしまう。
骸は仕方なく黙り込むと、雲雀は静かに手を離して先を歩き始めた。
…怒らせてしまいましたかね。
雲雀の背中を眺めた後に骸は数歩後をついていく。
なぜ突発的に僕とデートをしたくなったのか。
その理由は定かではありませんが…普段僕に会いに来ないことに申し訳なさを感じて、というわけではなさそうだ。
しかしまぁ、彼がこのように僕に、恋人のように接してくれるのは悪くな…。
そこまで思いかけ、骸はふるふると顔を横に振った。
…いやいや、そもそも僕は別に彼の事が好きではありませんし。
もとはと言えば、不本意ながらも彼に負けてしまったことで付き合う事になってしまったわけで。
流れ流れてこのような間柄になっただけだ。
別に僕は、彼に好意など持ち合わせていない。
…持ち合わせていない、のだが…。
「…僕はいったい…」
彼の事を、どう思っているのだろうか。
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