小さな弟子の嫉妬心
「…」
「…」
「…千種」
「はい、なんですか?」
とある日。
骸は自分の太腿に顔を埋めて蹲っているフランを不思議そうに見下ろしながら千種へと声を掛ける。
「これは、一体なんなんでしょうか
朝、僕が起きてからずっとこの様子なんですが…」
「…まぁ…うん…めんどい…」
「説明を放棄しないでください」
「…端的に言うと、悪いのは骸様です」
「…僕が、ですか?」
"フラン、離れて"と言いながら千種がフランの脇腹を掴んで離れさせようとするも、一体何処にそんな力があるのか分からないがびくともしない。
千種の言葉の意図がわからず、骸はフランの被り物に手を置いて優しく撫でながら頭に?を浮かべる。
最近、特になにかをしたわけではない。
した、といっていいのかはわかりませんが…。
「修行、多くし過ぎてしまいましたかね…」
「…」
顎に手を添え、思い出すように呟くとその呟きが聞こえていたのか千種は呆れたような表情で骸を見た。
「ですが、僕がいなかった間手を抜いていたようですしその補填をする分には」
「それです」
「え?」
言い聞かせるような口調で言うと千種がビシッと骸の発言に一言申し、骸は言葉を止めた。
「それ、とは?」
「骸様、数日前に結構な時間ここを空けてましたよね
なにも理由も言わずに、2週間も」
千種の瞳がスゥと細まり、骸の姿を捉える。
その瞳には少し怒りが含まれており、骸はその意味が分からずに首を傾げた。
「えぇ、まぁ…ですが、いつものことでしょう?」
「俺達からしたらいつもの事だけど、フランは違う」
フランを離すことを諦めた千種は疲れたように息を漏らしフランから手を離した。
「フラン、寂しかったんですよ
それで拗ねてるんです」
「…」
千種の言葉に骸は驚き瞳を丸くし、フランへと視線を落とす。
「…クフフ、それはないでしょう
僕がいなくなった所で寂しがるなんて」
「…はぁ」
少し間を開けてから困ったような笑みを浮かべて千種を見ると、千種は先程よりも大きなため息をついた。
「それ、あとは自分でどうにかしてください」
「え、どうにかって…」
すたすたと部屋の扉へと歩いていく千種とフランを交互に見ながら骸は戸惑ったような表情をする。
千種はそれに返事をすることなく、扉のドアノブを握り少し顔を向けて口を開いた。
「それは、自分で考えてください…巻き込まれるのめんどいし」
「千種、貴方それが本音でしょう」
→
