自由気ままはお互い様
「…え」
「聞こえなかった?
なんで意図的に姿を消したのかって聞いてるんだけど」
「…」
まさか、その事について触れられるとは…。
「…あの」
「なに」
「…ほりはへず…はなひへくだひゃい」
骸は少し考えた後に自分の頬を掴んでいる手首を掴みながら訴える。
すると、雲雀は大人しく手を離すと骸をジッと見つめた。
「まったく…少しは優しくしてください」
「…それで?」
「…意図的に姿を消した、というのは語弊があります
最初はまぁ、貴方があまりにも会いに来ないので姿をくらませてやろうと考えていましたが」
微かに痛む頬をさすりながら雲雀から視線をそらし、外の景色を眺めながら骸は言う。
いつの間にか夕暮れ時になっていたのか、うっすらとオレンジがかっている。
「考えていたんじゃないか、それに」
「話は最後まで聞いて下さい
…前回のように、"風紀委員の仕事"と言われるのは目に見えていました
だから、僕はそれが本当なのかどうか確認しに行ったんです
貴方の、その奇異な鳥に姿を変えて」
「…鳥?」
いつの間にか窓枠に止まっているヒバードを見つけ、その視線に気付いた雲雀は"あぁ…"と何処か納得したような声を漏らした。
「なんです?」
「いや、沢田綱吉の反応の意図が分かったな、って」
「…あぁ、先日の…確かに彼は僕だと気付いていましたね
まぁ、触らぬ神に祟りなし、というような感じで触れずにいてくれていましたが
…それはさておき、そんな訳で1週間前から貴方のそばにほぼ居たわけなのですが…」
「へぇ、そんなにいたんだ」
ここ1週間の事を思い出すも、ほぼ風紀委員の仕事をしており雲雀が骸の事を一度も気にかけていない様子のみ思い浮かんだ。
「…貴方、本当に風紀委員の仕事ばかりでしたね」
「まぁね
それが僕の仕事だし」
「はぁ…」
差も当然のような反応の雲雀に骸は深いため息をついた。
「…貴方のそばで様子を見ていれば、少しは貴方のことを理解できる…そう思っていましたが…貴方を理解するのは難しそうだ」
「…」
「今日はもう帰りますよ
ここ2週間、アジトにも帰っていませんでしたし
そろそろ痺れを切らした犬がここを突き止めるかもしれません」
ある程度身体の調子が良くなったのか、頭痛は消えておりだるさも少しはましになった。
これならばアジトに帰るだけの体力は保ちそうだ。
「僕の服だけ返してもらって…」
「待って」
立ち上がり、部屋の中に自分の着ていた服がないかキョロキョロと見渡すと座ったままの雲雀に浴衣をクンッと掴まれ呼び止められる。
「なんです?僕は帰ると言ったのですが」
「やだ」
「…やだ、とは?」
「そのまんまの意味だよ
帰らせたくないってこと」
「…」
ジッと見上げながら雲雀に言われた言葉。
それに骸は瞳を丸くしてしまう。
「…えっ、と…」
「君、僕の事を理解したいんでしょ?
この前の事で少しは僕の事、分かってくれたと思っていたんだけど」
「…ただ行為をしただけではないですか
そんなもので貴方の事を理解なんてできませんよ」
「身体に教え込む事が1番手っ取り早いと思って」
「そんなので分かるわけないでしょう?
唯一分かったことと言えば…」
"愛してる"
…。
「…骸?」
「…なんです」
「顔、赤いんだけど」
「…まだ…逆上せてるのかもしれません」
分かったことといえば、彼の愛が異常に"重い"。
ただそれだけだ。
「…そう、なら…」
雲雀は少し目を見開いた後に口元に小さく笑みを浮かべ、骸の顔に自分の顔を近付けた。
「…落ち着くまでいればいいよ」
「…お…ち着いたら帰りますので」
「僕としては無理に帰らなくてもいいよ
それか、そのままここに嫁いでくれても」
「?!」
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