自由気ままはお互い様


「ッ!」

ハッと無意識に目が勢いよく開かれる。

確か、風呂で逆上せて…。

「…ッ…い」

頭に痛みが走り、まだ体調が万全ではないのか、身体がだるい。

「あ、起きた」

ゆっくりと上体を起こしていると襖がパタンッと開かれ、雲雀の声が聞こえる。
頭を押さえながら顔を向けると、お盆に飲み物を乗せているのが見えた。

「君、お風呂で気を失っちゃったんだよ」

「…そのようですね…お手数おかけして、すいません」

「別に、大したことはしてないよ
体拭いたり着替えさせたりしただけだし」

「え」

雲雀の言葉に自分の身体を見てみると浴衣が着せられている事に気付く。

「…」

「別になにも手出ししてないよ
流石に、体調悪くしてる奴を襲うほど馬鹿じゃない」

スッと自分の横へと正座をし、お盆に乗せていた水の入ったグラスを雲雀は骸へと差し出した。

「少しでいいから飲みなよ
経口補水液とかないからこれしかないけど」

「…ありがとうございます」

おずおずと受け取り、口に含むと喉が潤う感覚がし、スーッと身体に水分が行き渡る。そんな感じがした。

「もっと飲むなら持ってくるけど」

「いえ…大丈夫そうです…」

やけに優しい…。
逆上せてしまった僕に対して、負い目でも感じているのだろうか。

「なに?」

「え?」

「僕のこと、すごい見てるけど」

どうやら無意識に雲雀を見ていたらしく、雲雀から問われて骸は少し気まずそうに顔を逸らす。

「…特に意味はないのですが、やけに優しいなと感じまして」

「基本的に君には優しくしてるつもりだけど?」

「…」

そう言われてみると…確かにそうかもしれない。

彼から思いを告げられ、会う頻度は少ないながらも会った時には大抵僕に優しい。
お菓子をくれたり、行為中も乱暴かと思えばそうではなく、僕の身体を労ったりしてくれる。
行為後も…色々と…まぁ…。

「…なに想像しているの、変態」

「…貴方のせいですよ」

「…まぁ、いいや
落ち着いたなら君に聞きたいことあるんだけど」

お盆とグラスをテーブルの上へと置いた雲雀は、ギロリと鋭い目つきをし、骸の頬をガッと掴んだ。

「?!」

先ほどまでの優しさとは打って変わった状況に、骸は戸惑いながらも雲雀を見つめた。










「君、なんで意図的に僕の前から姿を消したの?」










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