自由気ままはお互い様


今、なんて言いましたこの人。

「…すいません、もう一度お願いしていいですか?」

「聞こえなかったの?
好きな理由はないって言ったの」

サラリと答える雲雀に骸はぽかんとした表情をしてしまう。

…待て待て、そんなことは無いでしょう?
ならばなぜ僕に"好き"だの"愛してる"だの、好意を伝えてきているのか。

全くもって、理解ができない。

「納得、してない顔だね」

「え」 

雲雀からの指摘で顔に出てしまっていた事が分かり、ハッとしていると雲雀の手が伸びてきて自分の頬へと触れてきた。
湯に浸かっているせいか、いつもよりも温かい。
その温かさが心地よく、骸はゆっくりと瞳を閉じる。

「君に伝えた好意は本当さ
それは、絶対に嘘じゃない」

ちゃぷん、と湯が動く音が聞こえふと瞳を開くと雲雀が距離を詰めており、顔が目の前にあって驚き瞳を丸くする。

「…ならば、僕を好きになった理由は言えるはずでは?」

「ないものは、ない」

「なんて理不尽な…」

「…なら聞くけど」










「好きになるのに、理由は必要?」










「それは…理由の1つや2つ、聞きたいと思うのは自然では?
僕のどこに惹かれた、とか…一体どこが好きなのか、とか」

「案外そういうロマンチストな所あるんだね」

「…馬鹿にしてます?」

「してないよ
…でも本当に、なんで君を好きになった、とかそういう理由はないんだ」

「ッ…ちょっと」

自分に覆い被さるように浴槽の縁に手をつき、骸の足の間に片足を入れる。
雲雀は逃げ場を無くした骸をジッと見下ろした。
口元に笑みを浮かべる雲雀の表情は、湯のせいか少し赤らんでおり妖艶な雰囲気を感じてしまう。










「いつの間にか君が好きになっていて
僕の手で、"汚したい"って思ってしまったのだから」










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