勘違いから始まる関係


キンッ!

高架下、金属同士がぶつかる音が鳴り響く。

骸は自分が振り下ろした槍の攻撃をトンファーで防ぐ雲雀を見据えながらトンッと1本後ろへと下がった。

「まったく、貴方もしつこいですね」

ブンッと槍を一振すると霧となって消えていき、小さく息を吐きながら骸は少しめんどくさそうに言う。

「毎日毎日飽きもせず、僕の所に来ては武器を振るう…
僕は貴方のように暇ではないんですが?」

「ならお得意の幻術とやらで尻尾を巻いて逃げればいい」

雲雀はトンファーを構えながら言うとタンッと勢いよく骸との距離を詰めて顔面に目掛けて横に滑らせる。
しかし、それを見た骸は身を屈めて避けると霧となって姿を眩ませ少し離れた柱の横へと姿を現せた。

「避けないでくれる?」

「避けるに決まっているでしょう
容赦なく人の顔に叩き込もうとするとは」

「その顔を歪ませてやりたくて仕方ないのさ」

「…」

舌なめずりをしながら不敵な笑みを浮かべる様にゾクリと背筋が震える。

「…クフフ」

思わず口から笑みが漏れ出てしまう。










この彼は本当に…。










再び槍を出そうと霧を醸し出すと、ピピピッと自分のスマホから音が鳴り響く。
骸はピタリと動きを止めてスマホを確認すると、サァァと霧は散っていった。

「…タイムリミット、ですね」

「は?」

そう告げて背中を向けるとなんとも抜けたような声が背後から聞こえてくる。

「言ったでしょう?僕は貴方のように暇ではないと」

「逃げるつもり?」

ガシッと腕を掴まれ振り返ってみると不服そうな表情で雲雀は見上げている。

「貴方、先程と言っていること矛盾してますよ
"逃げればいい"と言ったのは貴方でしょう?
不本意ですが、今日はもう終いですよ
わかったならさっさと離しなさい」

「…」

離すように促すも雲雀は離す気配はなく、むしろ逃さんとばかりに力が込められ思わずため息をついてしまう。

まるで幼子のようだ。
どうして僕にそこまで固執をするのか…。










…いや。
これは僕のせいでもあるのか。









以前、僕が黒曜で起こした事件。
それで彼と戦い、僕が勝利。
その後は沢田綱吉に敗れてしまい僕は牢獄へと捕まってしまいましたが…。
つい先日あったシモンファミリーとの件で、僕はこうやって外に出ることを許された。

"少し間をおいてからまた沢田綱吉を狙おう"

そう思った矢先、彼…雲雀恭弥は僕の目の前へと姿を現した。

なにをしに来たのか尋ねてみれば一言。

"君を咬み殺しに来た"

どうやら彼は、僕に黒曜での一件で負けたことが許せないらしくこうやって何度も何度も戦いに来ている。
まぁ、僕としても暇つぶしにはなるのでいいだろう。
最悪、彼を再びひれ伏せさせて並盛から征服するのもいいと。










そう考えていたのが甘かった。
なぜかって?










毎日挑みに来るからです、毎日。

なんですか毎日って。しかもひどければ朝夜と現れるし。
彼も学生の身のくせに現れているせいで僕も幻術の方を学校に行かせ本体は戦いをし…。
学生の本分をご存じない?
そして、少し疲れを感じ始めた時にフランの情報が入り日本を後に。
流石に海外までは追ってくることはなくつかの間の休息を取ることが出来ました。
しかし、帰ってからはいなかった時の時間を埋めるかのように隙あらば現れ戦い…。
もう面倒になって身体乗っ取ろうとしたが彼もずいぶんと強くなったようで一筋縄にいかない。

そんなこんなでここ1週間の僕の1日の行動は
起床

戦闘

学校

戦闘

フランの修行

就寝

とんだ戦闘狂に目をつけられてしまいました…。
よくもまぁ、僕に一度負けたぐらいでこれほどまでに執着をするものだ。

しかし、どうしたものか。
僕もフランの修行で暇ではないし、なにより戦闘に修行にでここ最近休めていない。
これ以上は僕の身体の方が先に音を上げそう。









…仕方ない…。









骸は息を吐くて雲雀へと身体を向ける。

「なに?やる気になった?」

「1つ、ゲームをしませんか?」

「…ゲーム?」

骸の口から発せられた言葉に雲雀は首を傾げながら骸を掴んでいた手を離した。

「クフフ、簡単なゲームです
明日1日、僕と鬼ごっこをしましょうか
それで僕のことを捕まえることが出来れば、貴方の好きなようにしていいですよ
戦うなりなんなりと、貴方の思いのままにね」

「…好きなように、ね」

「えぇ、貴方が望むのであれば永遠と戦うことも可能ですよ?
悪い案ではないと思いますが如何でしょう?」

「…」

雲雀は少し黙り込み考えた後、"わかった"と小さく呟いた。
その声が聞こえた骸の口元は小さく笑みが浮かんだ。

「クフフ、交渉成立ですね
あぁ、そうだ…1つ伝え忘れていました」

「…なに?」









「僕が貴方から逃げ切った場合は、二度と僕の目の前に現れないでくださいね」









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