釣った魚に餌をやらない
「…なぜ」
「どうしました、ししょー」
静かな部屋の中。
ソファーで考え事をしていると、ヒョコッと顔を覗かせながらフランが声をかけてくる。
骸はフランへと顔を向けると、被り物が犬になっており"くはッ"と吹き出してしまった。
「く、ふふ…随分とリアルな被り物ですね…」
「すごいでしょー?チワワですよ、チワワー
ぷりてぃーなミーにお似合いなわんちゃんですー」
「えぇ…すごいですね
質感ともに見事なまでです、成長しましたねぇ…フラン
ですが、被り物にするのならばもう少しデフォルメしたものが良いかと」
被り物に触れながら感触を確かめると、想像以上にリアルに近い。
それを褒めるとフランは"むふー"と満足げな表情を浮かべて骸の隣にぽふっと座った。
「なーんか考え込んでましたけど、なにかありましたー?」
「お前に心配されるような事ではありませんよ」
「あー、ミーの事おこちゃまって馬鹿にしてますねー?
見た目はおこちゃまー、頭脳もおこちゃまなだけですよー?」
「それはもう正真正銘、ただのおこちゃまでは?」
「むむむー、なら今ししょーが悩んでいることを当ててみせましょー」
「…骸様」
ぎゅっと瞳を閉じてなにかを考え込むような動作をフランはし始める。
その時、ガチャリと扉が開く音が聞こえ千種が中へと入ってきた。
「…フランはなにを?」
「占い師の真似事をしているようで」
「あぁ…なるほど」
「そういう千種はなにか?」
「…」
千種に顔を向けると、なにやら不機嫌そうな雰囲気が漂ってくる。
骸は不思議に思いながら立ち上がり、千種へと近寄った。
「千種?」
「…骸様に客人です」
「客…僕にですか…」
今日訪問客が来るなんて事は聞いていない。
もしや、沢田綱吉の所のアルコバレーノか…?
「…一体誰が?」
「…」
頭の中で候補を上げながら再度聞き返すと、言いづらそうに口を開いた。
「…雲雀恭弥です」
「…え?」
「待たせるとここのアジトを壊すと言っています」
「…」
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