勘違いから始まる関係
「…はぁ」
自分の部屋へと入り、静かに扉を閉めた骸はふらりと少しおぼつかない足取りでベッドへと使うとボフッと体を沈めた。
「…ッい」
沈めた衝撃で腰に痛みが走り表情を歪めながら腰を抑える。
まったく…昨日今日は散々な目にあってしまった…。
-雲雀の不意打ちで敗北後-
『…行くよ』
『ッと…』
雲雀は骸の上から退き、腕を掴んで無理やり立たせる。
骸は少しふらつきながら立ち上がると、自分の服についた土埃を手で払い、雲雀の言葉に首を傾げた。
『行くとは、何処へ?』
いつの間にかすたすたと歩き出していた雲雀を声をかけ引き止めると、クルッとこちらを向いて口を開いた。
『僕の家』
『家…家?え、なぜ?』
『今から君の事咬み殺すからだけど?』
けろりとしながら言う雲雀に骸は頭に?を浮かべながら後を追う。
『咬み殺すって…あぁ、結局戦いたいんですね
もう面倒なので貴方の気が済むまで付き合いますよ』
『…ふぅん』
どうせ、これ以上言っても無駄なのは目に見えている。
それならば、早く事を済ましてしまったほうが楽だろう。
それにしても…先程の彼の発言には驚きましたが。
まさか僕にそのような感情を…しかも、性的な目で見られているとは。
流れからして…まぁ…関係を迫られるかと思いましたが、戦いを強要。
むしろこっちのほうがまだましか。
『言ったね?』
骸の言葉を確認するかのように雲雀は問いかける。
『僕の気が済むまで、していいの?』
『え…えぇ…まぁ…』
『…そう、なら早く行くよ』
そう言いながら歩く速さを上げる雲雀。
『え、なんでいきなりそんな早く行くんですか』
歩く速さが上がり驚いた骸は声を上げながら雲雀についていくも、雲雀は声に反応せずにそのまま歩いていく。
本当になんなんだ、こいつは…ッ。
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…結局、理由もわからずについて行ったのが運の尽き。
やたらと大きな日本家屋に連れて行かれたと思えばそこが雲雀恭弥の家で驚いているのも束の間。
部屋に通されたかと思えば即座に彼に押し倒され…そのまま…。
"我慢できない"
「ッ」
雲雀との濃厚な時間を思い出してしまい、骸は顔を赤くすると近くにあったクッションをボンッと壁へと投げてしまう。
クッションはそのまま床へとぽとりと落ちていく。
学生の癖にませた真似を…ッ…。
この僕が、まさか彼にあんな…。
そもそも、こういう行為はお互い好き同士で…。
…いや、そういうこともないか。
僕が見てきた世界では、こういう事は珍しくない。
汚い欲を吐き出し、吐き出され…大人達の汚い性欲に塗れた世界…。
彼もまた、己の欲を吐き出すがために身近にいた僕を利用していただけ。
そう思っていたが…。
"可愛い"
"愛してる"
「…」
普段の戦いに飢えた彼とは違い、僕に対して真っ直ぐに好意を向けてくる。
それでいて、僕を気遣うかの様な言動もあって…。
「…はぁ…」
骸は考えることをやめ、ゆっくりと瞳を閉じた。
彼の事が、わからない。
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