暖かいこの中で


「寒いので買ってきた」

こたつの中に体を入れて座り、テーブルに置いてあるみかんの皮を剥きながら蓮は平然と答える。

「いや買ってきたって...俺買い物いったの一時間位前だよな?
その時にはなかったはずだけど」

「そうだな」

「そんで買ってきて自分で運んだわけ?ものの一時間で?」

「馬鹿者、そんなわけなかろう
買ってきた、と言ったが俺ではなく姉さんが買ってきてくれたのだ
それで白竜に運ばせた」

「...」

こんな真っ昼間にキョンシー使うなよ。一般人がどんな反応してたのか気になるわ。

「てかなんでこたつよ?
寒いなら暖房つけりゃいいじゃん」

「暖房だけだとどうも足元が寒くていけないのだ」

「まぁ、そりゃわかるけどよ
中国にもこたつってあんの?」

「いや、ないな
以前葉の家に行ったときにこたつがあったのを思い出したのだ
しかし...これはなんとも危ないものだな」

「危ない?どこがよ?」

「暖かくて出るに出れなくなってしまう」

「...ふはッ」

こてんとテーブルに突っ伏しながら剥いたみかんを一つ手に取り口に入れる蓮を見て思わず吹き出してしまう。

「なぜ笑う」

突然吹き出すホロホロをジッと見つめる蓮。ホロホロはキッチンへと移動をして持っていたレジ袋から買ってきた食材を冷蔵庫へと閉まっていく。

「いや、蓮がそういうこと言うの珍しいから」

「そうか?俺だって人間だ
今のようにだらける事もあるし、面倒だと感じることもある」

「別にお前を人間なのかどーなのかって疑ってる訳じゃねーよ?
ただ、そういう一面あるのを知って今の状態の蓮を見てかわ...」

"かわいい"と言いかけてホロホロはハッとし口を手で押さえて蓮へと視線を向ける。

「...」

蓮はジトリとホロホロを見ており、その先の言葉が続かないのを確認すると視線を外して再びみかんを口に運ぶ。

あっぶね、あんまり可愛いとか言うと怒るからなぁ...こいつ。
人には可愛いって言うくせによ。

「ホロホロ」

「ん?」

パタンと冷蔵庫を閉めてリビングへと戻ると蓮に名前を呼ばれて顔を向けると自分の隣のこたつ布団をペラリと捲る。

「こっちに来い」

「別にお前の隣じゃなくても他の場所空いてるんだからそこに」

「来いと言っているんだが?」

「...へーへー」

他の場所に腰かけようとするも蓮から圧をかけられ、困ったように笑いながら指示された場所に座ってこたつに入る。

「おっ、あったけぇ
でもやっぱ隣同士だと狭くね?」

「そうか?俺は別にそうは感じないが」 

「お前は小さいからしかたないでッッ!!」

けらりと笑いながら言葉を続けようとすると不意に蓮のとんがりが顎へと刺さり、痛みから声をあげて顎を抑える。

「すまない、聞こえなかったのでもう一度」

「ぜってぇ聞こえてたろ...お前ぇぇ...」

「しかし、そうだな」

「あ?」

「貴様が狭いと言うのであれば、別の方法を取るとしよう」

「...別の方法だぁ?」










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