「いや、これじゃいつもと変わらなくね？」

座ったはいいもののいつもの光景とあまり変わらないことに気付いてホロホロはﾊｯとした。

「そうか？」

そう言いながら蓮はﾎﾟﾌｯとホロホロの胸板に自分の顔を押し付ける。
ホロホロはその様子を見て蓮の頭にｿｯと手を伸ばして優しく撫でた。

「お前、ただ単に抱きしめたいだけだったんじゃ」

「それもあるな」

「あるんかい」

「ならば逆に貴様から甘えてみてはどうだ？
ほら、俺のこと"お兄ちゃん"って言ってみろ」

「俺から？いや、それが難しいからお前が兄になって」

「ホロホロ、言ってみろ」

「えぇ...わ、笑わねぇ？」

「笑わん」
　
突然の蓮の提案に戸惑いながらもホロホロは顔を背けた後に、意を決して蓮へと向き直る。

「に...兄ちゃん...」

「...」

「...なんで黙るんだよ」

言われた通り言ってみるもなんの反応もせずに黙ってこちらを見るだけの蓮に、恥ずかしさから少し頬を赤らめながらホロホロは顔を覗く。

「いや...新しい扉が開きそうだな、と」

「...これ以上変な性癖つけられても困るんだけど？！」

「それ以前に元から変な性癖など持っておらん
ほら、もう一度呼んでみろ」

「お前絶対楽しんでんだろ！」

「そんなことはない、貴様の悩みを少しでも解決したいという俺の気持ち故の行動だ
この俺の気持ちを貴様は踏みにじるのか？」

ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ騒ぐホロホロの手首を掴み、顔を近付けて真剣な表情の蓮。
ホロホロはその表情を見て少しﾄﾞｷｯとしてしまい、顔をそらした。

「ｯ...う...」

「...」

「...兄ちゃん」

「なんだ、ホロホロ」

優しげな笑みを浮かべながら蓮が名前を呼ぶと、ﾎﾞﾌｯと顔を真っ赤にして首筋に顔を埋める。
その反応に満足げな表情を浮かべながら蓮はホロホロの赤くなった耳へとﾁｭｯとキスを落とす。

「...ｯ...これめっちゃくちゃはずいんだけど！！もう無理！」

「無理ではない、今日１日俺のことを"兄ちゃん"呼びして慣れような」

「無理だって！無理無理無理！」

「無理ではない、やるんだ」

「強制？！」

「...ならば仕方あるまい、この方法はあまりとりたくなかったのだが」

蓮は小さくため息をつくと、ホロホロの額につけられているタオルをとってホロホロの両手首を固く縛り付ける。

「は、え？」

ホロホロは意味がわからずにｷｮﾄﾝとしていると蓮が怪しげな笑みを浮かべながらﾍﾟﾛﾘと舌なめずりをした。









「ならば無理やり言わせるしかないようだ」

「あ、あの、蓮さん...」

「"兄ちゃん"と、いっぱい練習しような...ホロホロ」

「ひぇっ、ちょ、待っアーーーーーッ！！」









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