お前の隣で
「...お...おぉ...お前ら来てたんか...」
ふと聞き覚えのある声が聞こえてきて3人が畳へと顔を向けると葉が疲れきった表情を浮かべながら状態を起こしていた。
「おい、なんだこの様は」
「一体全体なにがあった...お?」
蓮とホロホロが葉に詰め寄るとホロホロがなにかに気付いたのかテーブルへと近付いていった。
「いやぁ...話すと長くなるんだが」
「めんどうだ、手短に話せ」
「実はな、オイラの家になんか知らねぇ瓶が置いてあってそれを聞きたくて連絡したんだけどよぉ
お前らが集まる前にリゼルグが来たもんだからなにか飲み物出そうと思って準備してたら竜が"俺がやりますぜ旦那!"って言ったから頼んだんだよ
そんで、竜が飲み物持ってきてくれたのはいいんだけど台所に置いてあったその瓶の中身をよそっちまったみたいでなぁ...
いやはや、まさか酒だとは...」
「酒だと?竜は気付かなかったのか?」
「あいつ少し風邪気味でな、鼻が詰まっててそれでわからなかったんじゃねぇか?」
「それにしても貴様の家になぜそのようなものが」
「あー...」
顎に手を当てながら蓮が考え込んでいるとホロホロの声が聞こえて顔を向ける。
「どうしたホロホロ」
「わりぃ、この酒俺んだったわ」
「...なに?」
ホロホロは"ホの字"とラベルが貼ってある酒瓶を手にしながら顔を向けて申し訳なさそうに言い、蓮はその言葉を聞いて詰め寄った。
「どういうことだ」
「いやよぉ、俺の親父も本選見に来ててそれでこの前...」
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『ホロホロ』
『あ、なんだよ親父』
『麻倉家の方に渡してくれ』
『渡せって...酒?』
『いつもお前が世話になっているようだからな』
『いやでも、俺葉の両親にそんな会わねぇんだけど?
それなら親父が渡したほうがよくね?どーせ暇だろ』
『...恥ずかしいじゃないか』
『いい年した大人が恥ずかしがってんなよ』
『とりあえず、任せた』
『あっ、ちょ...行っちまった...
どーすっかなぁ、これ...』
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「...っつーわけよ
んで、その後に葉の家に直行したらいなくて引き返そうとしたときに蓮から"修行するからさっさと来い"って連絡あって急いでたらここに忘れちまったわけよ」
「貴様が元凶なのではないか!」
「いだいッ!!」
瞬時に怒りで蓮のとんがりが伸びてホロホロの頬にぐさりと刺さり、痛みから声が上がった。
「...とりあえず、こいつらの介抱手伝ってもらっていいか?」
葉は畳の上ですやすやと眠るリゼルグといびきをかいている竜、屍の様に反応を見せないファウストを見ながらいまだに怒りをぶつけている蓮に視線を向ける。
蓮は葉の言葉を聞いて息を吐き、ホロホロの胸ぐらを掴んでいた手をパッと離した。
「...そうだな、うちの馬鹿の失態でこのようになってしまったわけだし」
「すいまっせーん」
「...」
「誠に申し訳ありませんでしたお願いですからその馬孫刀しまってくれませんかいってぇ!!」
反省の色もなく謝罪の言葉を口にするホロホロを真顔で見ながら蓮は馬孫刀をホロホロへと突きつけると勢いよく土下座をし始めた。
しかし、ホロホロの願いも空しく馬孫刀を額に浅く刺され声をあげる。
「そういや、チョコラブがさっきから静かじゃねーか?」
「...確かにそうだな、おいチョコラ」
ふと、いつもだったらホロホロと騒いでいるチョコラブが静かなことが引っ掛かった葉と蓮がチョコラブを見ると、床に突っ伏して動かなくなっているチョコラブの姿。
「うぉぉい、チョコラブ?!」
「す、すまねぇ葉...は、鼻が効きすぎてアルコールの匂いで...うぷ」
「匂いで酔うとかそんなことあるのかよ!」
「...これでは使い物にならないな
葉、先にこいつを新鮮な空気が入る場所に移動させてくれないか?」
「あぁ、わかった
他のリゼルグ達は頼んでいいか?」
「大丈夫だ、俺とこの馬鹿でなんとかしよう
葉、貴様も体調が全快ではないだろうからそのまま休んでいろ」
「そうか?ならお言葉に甘えさせてもらうかな
チョコラブ、オイラの肩貸してやるから」
「うッ...めんぼくねぇ...」
葉はチョコラブに肩を貸しながら少しふらついた足取りで部屋から出ていった。
その姿を見送った蓮は小さく息を吐くとなにかを思い出したかのように"あ"と声を漏らした。
「一応言っておくが、お酒は二十歳を過ぎてからだ」
「お前、それ誰に対していってんの?」
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