この痕に秘められた


「なんっで毎回毎回何度も言ってんのに俺の話聞かねぇの?」

深いため息をつきながらホロホロは目の前で正座をしている蓮へと顔を向ける。

「むしろ俺が貴様の話を聞く必要があるのか?」

「なんでお前そんな偉そうなの?!
俺は言ってるよな?"泊まる前日は絶対つけるな"ってさ
こうやって風呂あいつらと入れねぇし、下手すりゃ疑われるんだからよ」

「なにを疑われるんだ?」

「そりゃ...俺達の関係だろうよ」

「前々から思っていたのだがなぜ俺達の関係を隠す必要がある」

「なぜって...お前さぁ...」

ホロホロはチラリと蓮を見た後にソーッと視線を外した。

「...は、恥ずかしいだろ」

「...恥ずかしい?」

「だぁってよ、俺達皆の前では喧嘩ばっかしてんのに裏では付き合ってむふふな事してんだぜ?
ばれたらぜってぇ馬鹿にされんじゃん」

「...」

「それに見た目的に俺の方が突っ込む側なのに俺がお前に突っ込まれて喘いでるしよぉ、恥ずかしくて仕方がな」

「ホロホロ」

「なんだ...っえ、なんでお前そんな怒ってんの?」

ぶつぶつと理由を述べていると蓮に名前を呼ばれて顔を向けるホロホロだったが、顔はいつも通りなのにトンガリが伸びている事に気付き"なんかやべぇこと言ったか?"と思い始める。

「俺は貴様の彼氏としては相応しくないか?」

「は...いや、そんなことはねぇけど」

「貴様の発言を聞く限り、そう言ってるようにしか思えないのだが」

「だから違うっての、そういうお前は俺の事どー思ってるよ?」

「馬鹿で暑苦しくて煩わしい奴だと思ってる」

「話の流れからそういう話してないの分かるよなおい」

「だが」

「あん?」

「俺は貴様との関係がばれたとしても別にいいとは思っている
むしろ、まわりに周知されていた方が堂々と触れあうことができる
それほどまでに俺は貴様の事を愛しているのだからな」

「...ほんっと、お前恥ずかしいこと堂々と言えるよな
聞いてるこっちが恥ずかしくて仕方ないしなにより重い」

蓮の言葉に恥ずかしさからほんのり頬を赤く染め、パタパタと顔の火照りを冷ますように手で扇ぐホロホロを蓮は見つめながら距離を詰める。

「重くて結構、それが俺の気持ちなのだからなにも言うまい」

「そーですかー」

「それで、俺は貴様に相応しい男なのかどうなのか聞いているんだ」

「相応しいもなにも...って、迫ってくんな迫ってくんな!怖いわ!」

ジリジリと距離を詰めてくる蓮から離れようと後ろへと下がっていくも蓮は近付くことをやめず、最終的に壁際まで追いやられて壁に背中が当たってしまう。
ホロホロは"しまった"というような表情をしながら蓮へと顔をやると、ホロホロが逃げられないように顔両隣に手をつきながらジッと真剣な眼差しで見てきていた。

「おっ、まえ...人来たらどうすんだよ
ばれちまうって」

「先程も言っただろう、ばれてもいいと
それに、貴様が俺の質問に答えたら素直に離れてやる」

「その言い方ずりぃ!」

「ほら、早くしないと皆が来る上にこの痕が見られてしまうぞ?」

「ッわ、わかった!言うからやめろ馬鹿!!」

首筋につけられている痕を指でなぞりながら意地悪げな笑みを浮かべて告げる蓮にホロホロは慌てて蓮の肩を押しながら声を上げる。

「なら早く言え」

「そんな急かすなよ...ったく
...別に俺はお前が俺に相応しいとかどうこう思ったことねぇよ
そんなこと言ったら俺馬鹿だしなにも考えずに行動しちまうし俺の方がお前に相応しくないと思うわ
お前が好きだから俺はお前と一緒にいてぇ...じゃ...だめ、かよ」

段々と言っていて恥ずかしくなってきたホロホロは最後の方には自分の腕で口を隠しながら言い終えると蓮から顔をそらしてしまう。

「...ホロホロ」

「うっせ、今話しかけんな」

「...」

「...黙られるのも嫌だからやっぱ話して」

「どっちなんだ」

「だぁから!話せって言って...ッい?!」

ガバッと勢いよく蓮へと顔を向けると蓮の顔が目の前にあり驚いて目を丸くしていると、蓮は首筋に顔を移動させてガブッと噛みつくとチュッと皮膚に吸い付く。
ホロホロは痛みに小さく声を漏らしていると、赤くついた痕をペロリと舐めながら蓮は顔を離した。

「俺さっきやめろって」

「俺がこの痕をつけるのは、俺のもの、という印をつけて他の奴等に牽制するためだ」

「あ?」

先ほどつけた痕を指でなぞりながら説明する蓮にホロホロは首を傾げる。

「別につけなくても俺はお前のだろ」

「それはそうだが、印というものは大事だろう?」

「印、ねぇ...」


   






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