喧嘩続きの彼等の秘密


「葉ー、今週末暇か?」

民宿『炎』にて皆が集まり宴会をしていると葉から少し離れた席にいたホロホロが立ち上がり、葉に近寄りながら声をかける。

「んー?おぉ、暇だぞ
どうかしたんか?」

「この前、お前のおすすめの曲聞いてたら俺も自分の欲しくなったから今度一緒にCDショップ行かね?」

「おぉ、あの曲いいだろー?
それならまたオイラのおすすめの曲教えてやるよ」

「おっ、まじか!お前の好きな曲っていいやつばっかだからさー」

葉の隣へと腰かけて寄りかかりながらけらりと笑いながらホロホロは話を進める。

「...」

その二人の様子を飲み物を飲みながら蓮は眺めていた。

「蓮くん、二人のこと見すぎだよ
そんなに気になっちゃうのかい?」

ふと声をかけられ目を向けるとリゼルグがにこりと微笑んでおり、蓮は視線を二人へと戻した。

「そんなわけなかろう、ただ喧しいと思っているだけだ」

「それを気になってるって言うんじゃないか、素直じゃないなぁ」

「...なにが言いたい」

「二人のことが気になるなら仲間にいれてきてもらいなよ」

「奴等の相手は疲れるので結構だ」

「あははっ、葉くんはともかくホロホロくんの相手はそうかもね
葉くんはよくホロホロくんのテンションについていけるよねぇ
それが彼のいいところなんだけどさ
でもさ、蓮くん」

「なんだ」

「あの二人の距離感って、少し怪しく感じるときあるよねぇ」

リゼルグは葉にべったりとくっついているホロホロを一瞥しながらぽつりと呟く。
蓮はその言葉を聞き、ふと二人から視線を反らした。

「...奴は誰彼構わずにくっつくだろう」

「そうかなぁ、僕にはそう見えないけど
なら蓮くん、君はホロホロくんにあぁやってくっつかれたりするのかい?」

「...」

リゼルグの発言に蓮は眉間にシワを寄せて心底嫌そうな表情を浮かべる。

「なぜ俺が奴にくっつかれなければいけんのだ」

「うん、君のその反応からして嫌がってるのはわかったよ」

「まったく、貴様のくだらん会話についていけぬわ」

蓮は立ち上がるとすたすたとホロホロのもとへと歩いていき目の前で仁王立ちになる。

「どうしたんよ、蓮」

蓮の存在に先に気付いた葉は首をかしげ、ホロホロはそれにつられて顔を向ける。

「どしたー?」

「ホロホロの声がうるさいから絞めに来た」

「はぁん?だーれの声がうるせぇんだよ」

「貴様しかおらんだろう、来い」

蓮はくるりとホロホロに背中を向けると、ホロホロは少し黙りこんだ後に小さく舌打ちをして立ち上がる。

「葉、あとでさっきの話の続きしよーぜ」

「おーぅ、喧嘩するのはいいけどほどほどにしとけよぉ」

「大丈夫だって、俺が逆にこいつを泣かせてくるからよ!」

「誰が泣くものか、馬鹿め」

「あんだとぉ?!」

二人は口喧嘩をしながら部屋から出ていってしまった。

「...彼らって、本当に仲悪いんだね」

リゼルグは空いた葉の隣へと移動をして来て腰かける。

「オイラは悪いってわけではないと思うぞ?
仲が悪かったら一緒にいねぇしな」

「まぁ、確かにそうかもね
二人の性格は僕から見たら正反対だからそれで衝動することが多いのかな」

「うぇっへっへ、そうかもなぁ
でもなんだかんだ言ってあいつ等仲いいところもあるんよ?」

「へぇ、例えば?」

「そうだなぁ...例えば...例えば...」

葉はリゼルグに説明するために思い付こうとするも中々思い付かずに苦笑いする。

「ないんじゃないか」

「あー、わりぃな
でもたまに二人で出掛けるところとかは見たことあるぞ?」

「ふぅん...どこ行ったりするんだろうね」

「そればっかりはオイラもわからんなぁ」

葉の様子を呆れたように息を吐きながら見たリゼルグは二人の出ていった扉を見つめた。










「ほんっと、彼らは何をしているんだろうね...二人だけの時は」










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