騙すなんて人聞きの悪い
「...ほぉ」
ホロホロの言葉を聞いた蓮はぴたりと歩みを止めてゆっくりとホロホロへと体を向け直す。
「そんなに俺の事が嫌いと?」
「あ?当たり前だろが
くっそ生意気でなんでもかんでも勝手に決めやがって
俺にだって俺の考えが」
「ふん、そのような空っぽの脳で考えられることなんてたかが知れてる」
「はぁん?!おっまえ、いい加減に」
蓮の挑発するかのような発言一つ一つにブチッと青筋を立ててしまう。
「そんなに言うのならば」
「うぉッ?!」
ツカツカと蓮はホロホロへ近付いていくと乱暴に胸ぐらを掴んで顔を近づけてジッと瞳を見つめ出す。
「おいおいお前ら、まだ本戦もなにも始まってねぇのに!」
「ちょっとは落ち着けよ二人とも」
今にも喧嘩をしそうな二人の様子に黙ってみていた竜と葉が流石に止めるように声をかけた。
「お、おうおうなんだよ
今からここでやろうってのか?」
「お前が俺の事を好きになれば問題ないな?」
「あん?」
突然発せられる蓮の言葉の意図が読めずホロホロは目を軽く見開きながら蓮を見る。特に冗談で言っているつもりはなく、真剣な表情。
「なんだよ、そんなに俺にチームに入ってほしいわけ?」
「いいから答えろ」
「答えろって...まぁ、俺がお前のこと好きになるわけねぇし
もしも、万が一にも俺がお前のこと好きになったらその時は入ってやるよ」
「言ったな?男に二言はないな?」
自分の言葉を聞いてピクリと反応を示した蓮はホロホロに再確認をする。
「おう、二言はねぇよ
てかさっきから近いわ!さっさと離れ」
「わかった」
「むぐッ」
「「?!」」
ポツリと呟くように蓮が言うと胸ぐらを掴んでいた手に引き寄せられて更に顔が近付く。
そのまま引き寄せられるように唇と唇が重なり、蓮の突然の行動にホロホロは目をぱちくりと瞬きを繰り返し、それを見ていた葉と竜も驚いた表情を浮かべた。
は、え、なに?蓮ちか...なんか唇柔らか...。
あれ、俺これ...蓮に...。
「んんんんんんッ?!」
少しフリーズした後に今自分が置かれた状況を理解したのかくぐもった声を漏らしながら目を見開く。
蓮はそんなホロホロをお構い無しに唇を重ね続けている。
なにこいつしてんの?!なにしてんの?!
つかここパッチ村の道の真ん中!白昼堂々とこいつ...てか。
なんでキス?!
「れ...ッ...ぉ...んごッ?!」
"とりあえずこいつを離れさせねぇと"と思うのと、うまく呼吸が出来ずにだんだんと苦しくなってきた為に口を微かに開くとにゅるりと口内になにかが入ってきてビクリと体を跳ねさせる。
「な、ん、ッふ...ぅあ」
なんとか声を出そうとするもうまく声が出ず、口内に入ってきたものが自分の舌に絡み付いてきてゾクリと体になんとも言えない感覚が走った。
ま...息...くるし...しかも、これ、な...。
「ま...ッ、は...ふ」
今まで感じたことのない感覚に少し恐怖を抱きながら弱々しく蓮の服にしがみつき、うっすらと瞳を開けて蓮の表情を見つめる。
バチッ。
すると蓮もホロホロを見ていたのか視線が混じり合う。
「あッ、ぅ...~~ッ...!」
どれだけの時間か経ったのだろうか。
ホロホロは全身の力が抜けてしまったのか足から崩れ落ちそうになると、それを察した蓮が抱き抱えて倒れてしまうのを防ぐ。
「はぁッ、ぁ」
先ほどまで満足に体内に入ってこれなかった酸素を欲するように荒い呼吸を繰り返しながら蓮を弱々しく見上げる。
「お、まえ...ッ」
「ホロホロ」
「あ...な、んだよ」
「顔、紅いな」
そっとホロホロの赤く火照った頬に蓮は手を伸ばして優しく指でなぞる。
「お前が、変なことすっから」
「なんだ?俺がキスをすると貴様は紅くなるのか?」
「...は...いやいや、んなわけ」
「それに、心臓の音も早い」
ホロホロの胸板に耳をあて、瞳を閉じて心音を確認した後に再び蓮は顔をジッと見つめてくる。
「これは、好きな者に対して興奮、緊張をしている時に出てくる症状だ」
「...お...おぉ?」
「この症状が出ているということは、だ」
スゥと瞳を細め、蓮はホロホロの唇を指で触れながら顔をすっと近づけてきた。
「貴様は俺の事が好き、ということだ」
「...は...え?」
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