寝起きな彼


「...んぁ...あー...ぅ」

瞳をゆっくりと開けて、寝起きのせいで働かない頭を起こすかのようにホロホロは枕に顔を埋めてごしごしと顔を押し付けなながら唸り声をあげる。

「あさ...朝...朝かぁ...」

カーテンの隙間から差し込む光を見て呟くように言うと、隣から小さく寝息が聞こえてきてチラリと顔を向ける。
すると、ホロホロの方を向きながら瞳を閉じている蓮の顔が目に入った。

「あれ...蓮...めずらし」

いつもなら俺より早く起きてんのに...。

そんなことを思いながらホロホロは蓮の顔にそっと手を伸ばして指で頬に触れてみる。

「...ッん...なんだ...」

眉間にシワを寄せながら蓮は瞳を開け、ホロホロを視界に捉える。

「あ、おきちった?」

「起きるわ、馬鹿者...寝れんのか?」

「いや、もう朝だから起きたんだよ
珍しいな、お前が俺より遅いとか」

「...ん...寒いのでな」

そう言いながら蓮はもぞもぞと布団の中で動き、ホロホロに近づくと手を伸ばしてホロホロを抱き締める。

「...貴様は温いな」

「俺、体温たけぇからなー
人間湯タンポだぜ?蓮のことあっためてやろかー?」

「そうか...なら、頼む」

「お、おぉ?」

けらりと冗談めかしに問いかけると首筋に顔を埋めながら蓮が返事をし、少し戸惑いながらもホロホロは蓮の背中に腕を回して抱き締め返した。

なんだなんだ、まじで珍しいじゃん。
普段俺が抱き締められる側なのに...。

ホロホロは視線を蓮へと向けると頭しか見えず、表情を見ることができない。

おとなしく抱かれてるし...普段ツンツンしてるからこんな風にデレ...あれ?これデレてんの?甘えてんの?
まぁ...。

「かわいいからいっかぁ...」

ホロホロはそう呟くと蓮の頭へと手を伸ばして髪を鋤くように撫で始めた。

いつもは俺が甘やかされてる側だし、たまにはこういうのも。

「おい」

「ん?」

下から声が聞こえてきて顔を向けるとこちらを睨みあげている蓮が見えた。
蓮はもぞもぞと上へと移動をして、ホロホロと顔の位置を合わせると頬に手を伸ばしてむにむにと揉み始めた。

「うぇ、な、なんらよ」

「貴様、誰がかわいいだと?」

「そりゃ、れんらろ」

「...」

ホロホロの回答に納得のいかない表情を浮かべると頬を揉んでいた指に力が込められる。

「いっひゃ!いひゃいわばか!」

「貴様が変なことを言うからだ
まったく...俺が眠気のせいでおとなしくでもしていると思っているのか?」

「おもっへないへ...ッ!」

頬から手を離されてジリジリと痛む頬を抑えていると自分の下腹部にゴリッとなにか固いものを押し付けられ、ホロホロはビクリと体を跳ねさせた。

「...あのー、蓮さん?」

「なんだ?」

「なに押し付けてきてるんすかねぇ」

「生理現象だ」

「あー、朝だしなー」

「そうだ、朝だしな」

「...分かったから押し付けんのやめて!
そんな執拗にせんでもわかったから!!」

「分かったのなら今から俺がすることは分かるだろう?」

「はぁ?んなもんそのうち収まるんだからほっときゃいいだろが」

「それがそうもいかん、貴様が無防備に俺の事を抱きしめて密着してくるのでな...そう簡単には収まらんのさ」

「それはお前が暖めろって言うからであって...っておいこら!」

文句を言うホロホロを他所に蓮は抱き締められていた腕から逃れ、ホロホロを仰向けに組敷くと逃れられないように馬乗りになる。

「貴様も立っているではないか」

「男の子ですから朝は立つんですぅ!!」

「ならちょうどいいではないか」

「いや俺はお前とは違うから!むらついてじゃないから!本物の生理現象!!」

「朝から煩わしい奴だな、おとなしくしろ」

「誰のせいだ誰...ッぅ...」

自分の言葉を聞こうとしない蓮に吠え続けているとわざとらしくお互いの自身を服越しに擦り合わされてしまい声をつまらせてしまう。
蓮は勝ち誇ったような笑みを浮かべながらホロホロへと顔を近づけた。










「どうだ?少しは俺と同じ気持ちになってきたか?」

「ッ...~~!!おっまえ、かわいくねぇ!!」

「当たり前だろう、馬鹿め」










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