迷うことをやめたお前は
「ほらほらもういっちまえよー、普段暑苦しいやら煩わしいって言ってる俺に抱きついたりしてんだからもう恥ずかしいことはねーだろー?」
蓮の弱味を握った俺は調子にのって蓮の頬を指でつつきながらニィッとはにかむ。そんな俺の言動にすぐに手を出されるかと思っていたが蓮は至って冷静に俺の手首を掴むとジトリと見つめ出す。
「...そうだな」
「おっ?素直に吐く気になったか?」
「貴様の提案にのるのは癪だがたまにはよかろう
それに...俺はもう、自分の心に嘘をつかないと決めたからな」
「ッうお?!」
そう言いながら蓮は俺の手首から手をパッと離し、肩を掴んだかと思えばそのまま俺を押し倒し後頭部を床にガンッと思い切りぶつけてしまう。
「いっ...ぐ...?!」
痛みから表情を歪め文句の一つでも言ってやろうと顔をあげると蓮は俺の顎をクイッと掴んで持ち上げるとそのまま顔を近付けてきてなにやら柔らかなものが唇に触れた。
驚きのあまり目を見開いてピシッと体が硬直してしまう。
は、え...蓮ちか...なんで?
「...ずいぶんと間抜けな面をしているな、ホロホロ」
唇を離して俺の顔を見下ろした蓮は喉を鳴らしながら意地悪げな笑みを向ける。
...あれ、蓮今俺に何した...唇...唇...柔らかかった...あ?
俺、こいつにキスされた?
だんだんと俺が蓮にされたことを理解してきた。だけどなぜそのような事をされたのかが未だにわからず蓮を見上げる。
「えっと...え?」
「おい、いつまで間抜け面を晒している」
「いやいや...晒してるつもりはねぇし、お前がいきなり変なことすっからじゃん?」
「そのわりには冷静だな、貴様らしくもない」
「一言余計だし、状況飲み込めてないだけだっての
てか、なんで...あー...っと...キ、キスしてんだよ...俺に...」
自分の口から"キス"なんて言葉を発するのが恥ずかしくなってしまい俺は蓮から顔をそらしてしまう。
俺の言葉に蓮はわざとらしくため息をついた。
「な、なんだよ」
「いや...貴様がそこまで馬鹿で間抜けで鈍感だとは思わなかったので少々呆れているのだ」
「えっ、ひどい言われよう」
「貴様は俺が、このような行為を誰彼構わずすると思うのか?」
真剣な眼差しで俺を見下ろす蓮に思わずドクンッと鼓動が早くなる。
「ホロホロ、俺はな」
スッと俺の頬に触れ指をツーッと唇まで移動させる。触れられくすぐったさから俺は息を飲んだ。
ちょ、待っ、なんだよこの状況!なんかすげぇドキドキすんだけど?!
蓮の奴、いつもと雰囲気ちげぇし...なんかすげぇ...変な感じが。
「ま...待って」
「...なんだ」
蓮が口を開こうとした瞬間、俺はその先の言葉を聞くのが怖くなり蓮の口を自分の手で覆った。俺の行動に驚きながらも蓮はジッと俺を見つめてくるを
「あーっと...そろそろ腹へったし戻らね?」
「なに?」
俺の言葉に眉間にシワを寄せ始める蓮を横目に俺はなんとか言葉を続けようとする。
「ほ、ほら修行終わって俺汗かいたし?蓮だってそうだろ?」
「...」
「それにこんなとこ誰かに見られたりしたらお前だって困るだろ?だから...」
「別に俺は構わん」
「うひぃ?!」
蓮は口を覆っていた手をとると手首をツーッと舌でなめあげた。ねっとりとした感触に声をあげてしまい、バッと手を払う。
「おっま!なにすんの?!」
「貴様が言ったのだろう?"素直に吐け"と
それなのに貴様が逃げてどうする」
「うぐ...い、いやだってよ」
「だってもなにもあるか
これ以上手を出されたくなければおとなしく俺の話を聞け」
俺の両手首を掴んで地面へと押し付けながら蓮は唇が触れそうな程顔を近付けてきた。
「ッ...」
「...ようやくおとなしくなったな、いい子だ」
至近距離でニィッと口角をあげながら褒めるような口ぶりで蓮は言う。
おとなしくもなにも、こんな状況なんだからそりゃそーなるわ!
「...言いたいことあんなら早く言えよ」
俺はこの状況ではなにをしても無駄だと察し、諦めたように蓮を見上げると蓮は瞳を細める。
「俺は貴様を愛しているのだ、ホロホロ」
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