寒さに負けて


「…ん…」

寒い…。

蓮はうっすらと瞳を開けながらだるそうに上体を起こした。
かと思えば寒さで身体を震わせ、また布団の中へと戻っていく。

昨夜、寒いと思えば朝のこの寒さ…。
本格的に、冬が始まろうとしているな…。

時計を見てみると午前6時半。
いつもよりも眠ってしまっている…。

「冬は、身体を動かすのが億劫になるな…ッ…?」

ふと隣に手をやると、いつもはまだ眠っているであろうホロホロがいないことに気付いた。

「…珍しいな…腹でもすかして起きたのか?」

疑問に思いながらベッドから降りる。

寒い。

あまりの寒さに蓮は毛布にくるまりながら一歩、また一歩と歩いて部屋から出た。

「…?」

リビングに入ると、寝室とは違い暖かい。

「おー、蓮」

キッチンから聞こえてくる水音とホロホロの声に顔を向けると、水を止めてひょこっとホロホロが顔を覗かせていた。

「おはよ」

「…あぁ、おはよう
すまない、寝過ごした」

「いや、逆にいつも早く起きすぎなんだよ蓮は
今日寒くて起きるの遅いだろうから、リビング暖房つけて暖めといた」

「あぁ、だから暖かいんだな、助かる」

「んっふふー」

蓮から褒めるような言葉が聞こえ、ホロホロは嬉しそうに胸を張りながら漣へと近付いた。

「なんだ、その顔は」

「いんやぁ?お前よりも早く起きれたことへの優越感に浸ってんの」

「そうか、それはよかったな」

「あれなんかあっさりしてる」

「貴様と違い、俺は今起きたところだからな
年がら年中テンションが高い貴様とは違う」

「馬鹿にしてらっしゃる?」

のそのそと毛布を引きずりながらソファーへと腰掛け、蓮はホロホロへと手招きをする。
その様子からある程度察しがついたホロホロは大人しく蓮の目の前へと来ると、蓮の太ももの上へと座った。
すると、蓮はくるまっていた毛布をホロホロも一緒に巻き込んでそのまま抱きしめた。

「ん…温い」

「あんねぇ?俺別に暖房器具じゃねぇからな?」

「わかっている」

「それに、あんまこうすっと俺が熱すぎて溶ける」

「あぁ、それも承知の上だ」

「うっわ、俺の事溶かそうとしてる?」

ジトリとした目つきでホロホロに見つめられた蓮はジッと見つめ返した後に口に軽く口づけをして微笑んだ。

「そうだな、ドロドロに溶かしてやろうと思っている」

「…うぐ…でも、よくよく考えるといつも溶かされてる気がする…」

「あぁ、確かにそうだな」

スッと蓮から視線を逸らしたホロホロは少し悔しそうな表情を浮かべてる。

「せっかく今日は蓮より先に起きれたのによぉ
これじゃ、いつも通りじゃねぇか」

「…ふむ、確かにそうだが…」

蓮は少し考えた後、ポフッとホロホロの胸板に顔を押し付けた。










「たまには、こういう日があってもよかろう」

「…お前がいいなら、いいけどよ」










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