海に行こうか


「ふぃーッ、準備これでいいかー蓮?」

借りてきたパラソルを差し、レジャーシートを敷き終えたホロホロは更衣室で着替えてきて戻ってきた蓮へと声をかけた。

「あぁ、そのくらいでいいだろう
任せて済まないな」

「こんぐらいなら出来るっての
それに、更衣室めっちゃ混んでたし仕方ねぇって」

「ふむ、そうだな…さて、ホロホロ」

レジャーシートに置いてある荷物に蓮は近寄ると、その中から日焼け止めを取り出す。

「来い、塗ってやる」

「うっわ、なんかすげぇ圧感じるんだけど」

「気のせいだ、ほら横になれ」

「へーへー」

ホロホロは蓮に支持されるがままうつ伏せになり、蓮に背中を向ける。
その光景を蓮はジッと見つめた後に日焼け止めの蓋を開けると自分の手の平に出してゆっくりと伸ばした。
手の平に伸びした日焼け止めをホロホロの背中につけると丁寧に塗っていく。

「ふっは、くすぐってぇ」

「こら、動くな
動くと塗りづらいだろう」

「わーってるけどさ、蓮の触り方いやらしくて笑っちまう」

「いやら…そんな風に触ってる覚えはない」

ホロホロの言葉にピタッと動きを一瞬止めるも、蓮は再び手を動かして塗り続ける。

「ほんとに?」

「当たり前だろう、まったく…
家の中ならまだしも、公共の場だぞ?
流石に外では…」

そう言いながら蓮はホロホロの背中に目を落とす。
日に焼けていない白い肌。
暑さで少し熱を帯びているかのように火照った首。
背中を伝う汗。

…。

「…たまには外でもいいかもしれん」

「おいこら、聞こえてんぞ」

「世の中には青◯というのがあってだな」

「青…え、なに?」

「ほら、あとは自分で塗るんだな」

塗り終えた蓮はバシッとホロホロの背中を叩くと、"いっでぇ!"と声を上げながらホロホロは体を起こす。

「ちょ、素肌にそれはねぇだろ!」

「おぉ、背中に手形が」

「ほんっとによぉ…あとでお前にもやってやる」

「やれるものならやってみろ」

鼻で笑い挑発すると、ホロホロはぶつぶつと文句を言いながら自分の腹部や腕に塗りだした。

「れぇん、終わったから俺も塗ってやるよ」

「む、なら頼む」

自分の体が済み、蓮へと声をかけながら近寄ると蓮はすっと背中を向けて座る。
手の平に日焼け止めを出してそのまま蓮の素肌に塗ると、少し冷たかったのかピクッと蓮の体が反応をした。

「はいはい、お客さーん
かゆいとこありますかぁ?」

「ない」

「うわ、即答
もうちょい言葉のキャッチボールしようぜー?」

「今更そこまですることもなかろう、夫婦なんだし」

「でぁ?!」

「ッ!」

"夫婦"という単語にホロホロは大きな声を出してしまい、蓮は耳がキーンッとし思わず片耳を塞いだ。

「…おい、耳元で騒ぐな」

「ッわり…お前が夫婦とか言うから」

「なにを今更」

「いやうん、お前が言わんとしてることはわかるぜ?
だけどさ、最近そういう発言してなかったから久々過ぎて驚いたと言うかなんつーか…」

日焼け止めを塗る手が止まっていたが、再度塗りながら少し恥ずかしげにぶつぶつとホロホロは呟く。

「貴様のことだから慣れたかと思っていたが」

「不意打ちはやめろよなって話よ」

「ふむ…不意打ちはだめだと言うならば」

蓮はホロホロへと体を向けるとすっと体を近付ける。
それに驚いたホロホロは同時に少し後ろへと下がった。

「まだ終わってねぇんだけど」

「不意打ちはだめだと言ったな?」

「あん?まぁ、言ったけどよ」









「ならば、毎日毎日言い聞かせるとしようか
貴様は俺の妻だとな」

「…せ、洗脳はやめろよぉ…」

「洗脳ではない、事実を言ったまでだ」









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