海に行こうか


「あぁ…づい…」

冷房がかかり涼しかった駅の中から出たホロホロは木陰にこもりながら冷たいペットボトルを額につけた。

「ほら、海はすぐ目の前だ
さっさと行くぞ」

「待って、まじで
暑くて死にそう…蓮…おぶって」

「たわけ、そのほうが暑いわ」

「いや、本当に…舐めてたわ、外…」

「最近、少しは暑さが和らいできたかと思ったが貴様にとってはまだまだだったか」

こてんと隣に座る蓮の肩に寄りかかってくるホロホロを横目で見ながら蓮は小さく息を吐く。

「どうする、そんなに辛いなら帰るか?」

「いんや、それは勿体ねぇからやだ
でもあと5分だけ待って、覚悟決める」

「…5分だけだぞ
それでも動かなければ強制的に家に連れ帰って冷房の効いた部屋でアイスを食べさせる」

「なにそれ至れり尽くせりぃ……」

へらりと少し気の抜けた笑いを見せるホロホロに少し安心感を覚える。

海に入れば少しは涼しくもなるだろう。
その前にパラソルを借りて場所を確保せねば…。

「…よっしゃ、行くか」

「む、もういいのか?」

気だるげに立ち上がり、ホロホロは伸びをする。

「いつまでもここにいたら勿体ねぇじゃん?
それに、早く海の中入って涼みたい」

「そんなことだろうとは思った
だが、それよりも先に水着に着替えて日焼け止めを塗らんとな」

「んっふっふー」

ホロホロは得意げな表情を浮かべながら自分の履いているズボンをつまんだ。

「実はもう水着履いてきた!
最近の海パンってすげぇよな、普通のズボンと変わりねぇし」

「それはいいが、ちゃんと着替えは持ってきたんだろうな」

「おいおい、俺を侮るなよ?
そんぐらい持ってきてるって、蓮が!」

「…人任せにするのもどうかと思うのだが?」

「え、持ってきてねぇの?」

「安心しろ、お前が警察に捕まってもちゃんと迎えに行ってやる」

「ちょ、まじ?うそ、蓮は俺の着替え持ってねぇの?
いつも準備してくれるから俺自分でやってねぇ…!」

「馬鹿め、きちんと持ってきている」

本格的に慌て出したホロホロを咎めるようにぺしりと軽く頭を叩き、蓮はクーラーボックスを手に取り少し先を歩き出した。

「あ…っぶね!その冗談は強すぎだろ!」

ぽかんとしていたホロホロだったが、それが嘘だとわかるとほっとしながらも蓮の後をついていき、追いつくと隣に並んで歩く。

「まじで全裸で捕まるとこだった」

「流石に貴様の全裸を他の奴に見せるわけなかろう
ちゃんとラッシュガードも着るんだぞ、日焼けしやすいのだからな」

「…」

「どうした、黙り込んで」

「いや…」









「最近は彼氏通り越しておかんかよ、とか思ってねぇからな?」

「…それは思っている奴が言うセリフだ、馬鹿者」









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